次期戦闘機【検討作業】
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本稿では主に次期戦闘機の開発が決定するまでの検討作業を述べる。主に2010年から2020年の10年間の事柄を記述する。
2020年度以降の開発計画は【開発作業】を参照


【目次】

・組織図
・前提
・全体の流れ
・目的・運用・性能
・コスト
・装備構想
・開発計画
・技術戦略
・代替案の分析

・海外との意見交換


【組織図】

 次期戦闘機の検討作業には航空自衛隊だけでなく様々な組織が関与している。[1]
 防衛省全体、内部部局、航空幕僚監部、防衛装備庁の組織図と役割を示し、検討作業の理解を深める。



・防衛省全体
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①防衛省内部部局
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内部部局の組織図
 
 防衛省内部部局(内局)のうち、防衛政策局は日本の防衛/安全保障に係る基本方針や政策の企画や立案、調整などの役割を担っている。以下に各課の所掌事務(次期戦闘機の検討と関連が持たれるもの)を挙げる。[2]

❶防衛政策課 
・国際機関及び外国の行政機関その他の機関との渉外

❷戦略企画課
防衛及び警備に関する中長期的な見地からの政策の
 企画及び立案並びに推進

❸日米防衛協力課
防衛の分野におけるアメリカ合衆国との協力の基本
 及び調整

❹国際政策課
防衛の分野における国際的な交流の基本及び調整

❺調査課
・各課の事務に必要な、情報の収集整理
・防衛及び警備に関する秘密の保全



②航空自衛隊/航空幕僚監部
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航空自衛隊内での空幕の位置づけ

 航空幕僚監部(空幕)は航空自衛隊の防衛及び警備に関する計画の立案に関する事務等を掌る。空幕は運用者側として次期戦闘機の検討を行う。画像には無いが空幕内部にも複数の課が置かれるため、次期戦闘機との関連を持つ所掌事務を以下に記す。[3]

❶総務課
・渉外及び広報

❷防衛課
・防衛及び警備の計画

❸装備体系課
・防衛及び警備の計画に基づく装備体系の計画
・防衛装備庁に対する航空装備品の技術研究及び研究
 開発の要求

❹情報課
・防衛及び警備の秘密の保全



③防衛装備庁
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 防衛装備庁(装備庁)は装備品の研究開発/調達/維持等を担当する。前身組織は技術研究本部であり、2015年に装備庁へと改編された。[4]
 2020年度からは次期戦闘機の開発管理を専任的に行う「装備開発官(次期戦闘機担当)」が設置された。[5]




【前提】

 次期戦闘機は航空自衛隊の装備品の一種であり、訓令によって開発に必要な手続きが定義されている。[6]
 この項目では手続きの概略を紹介し、後述する各作業の立ち位置を明確にする。

 空自における研究開発区分のうち、次期戦闘機は「兵器体系研究」に分類される。兵器体系研究の段階は構想段階、確定段階、装備化段階、運用段階がある。既存機の派生型の開発もこれに該当すると思われる。[6]

 本稿では主に構想-確定段階を中心に述べるため、装備化段階及び運用段階は省略する。また、黒太字の用語は別途補足を追加している。



①構想段階[6][7]

 まず空幕は「基本的性能等に関する調査」を実施する。必要に応じ開発集団はそれを支援する他、「基礎的運用研究」を実施する場合もある。

 総隊等(運用者側)は「将来の装備品等に関する検討」によって運用面から基礎的な検討を行い、将来装備への要望を作成し空幕へ上申する。

 空幕は前項の要望や上記の調査・研究を基に、「装備品等研究開発見積依頼」を作成し防衛装備庁に提出する。見積依頼は努めて早期の時期から開発品の概算要求年度の前々年度までに作成する。

 装備庁は空自と共に「装備品等研究開発見積り」を実施し、要求事項の精微化等を行う。なお、見積依頼での記載内容は多少粗くとも問題無いが、見積りによって最終的に実施計画並の精微化を図る。


兵器体系研究:航空防衛力整備構想に対応する兵器体系(中核となる装備品、関連人員、器材、施設、技量等の総体)及び既存の兵器体系に関する研究開発
基本性能等に関する調査:基本的性能、要求性能、技術要求事項等(装備品に係る仕様の細部技術的事項)に関する技術的な調査、分析及び検討
将来の装備品等に関する検討:将来保有すべき装備品の運用面からの基礎的な検討 必要性、運用構想、装備構想、機能性能等の概要を記した将来装備品への要望を作成する
基礎的運用研究:将来保有すべき装備品等の基礎的な運用に関する技術的な調査、分析、検討及び試験
装備品等研究開発見積依頼:各幕が作成する装備庁による研究開発の所要を明らかにした文書研究開発名称、運用構想、要求性能等を記載
装備品等研究開発見積り:見積依頼を基に装備庁が技術的リスクやその他分析を行う、研究開発の中長期的な見積り 研究開発要求の作成に資する 



②確定段階[8]

 空幕は見積りを基に、装備品等研究開発要求を策定し装備庁に提出する。開発要求は最終的な要求事項を定めており、開発品の概算要求年度の前年度に作成される。
なお、必要に応じ内容は修正できる。

 装備庁は見積り及び開発要求から、開発についての基本計画(開発の概要、概算要求の基礎)と実施計画(実施線表、詳細なスケジュール)を策定する。

装備品等研究開発要求:装備品の研究開発を求める所要の事項を記した文書 代替手段との比較も記載 
基本計画:概算要求の基礎となる研究開発目的、研究開発完了年度、研究開発総経費の見積り及び見積量産単価その他重要事項を記載した文書
実施計画:技術重要度、実施計画等を記した文書
 


直接取得[9]

 次期戦闘機は開発によらない既存機の購入も選択肢にあったが、訓令では「直接取得」にあたる。以下に直接取得の概略を示す。

 空幕は内局の整備計画局及び防衛装備庁との協議の上で運用要求書及び要求性能書を作成する。その後、同組織群は提案要求書及び評価基準書の各案を作成する。説明会などで企業からの意見を必要に応じ反映させ、提案要求書及び評価基準書を策定する。

 空幕は企業から提案書を収集・評価(評価基準書による)し、機種選定案を作成する。最終的に航空機選定諮問会議を経て機種の選定が決定される。

運用要求書:航空機の運用目的、運用構想、期待する主要性能その他の運用上の要求事項を記載した文書
要求性能書:前項を満たす性能についての要求事項を記載した文書
提案要求書:候補機種の性能、所要経費、後方支援体制その他事項を記した文書 外国企業/政府に提示
評価基準書:企業等からの提案書の分析及び評価に用いる基準を定めた文書



その他[10]

 開発見積りなどや提案要求書の作成など、検討段階では民間企業からの情報収集が必要な場合もある。その際は装備庁の担当室がRFT(情報提供企業の募集)及びRFI(情報提供依頼)の原案を作成し、調整会議による審議を経て正式に策定する。
 RFTはホームページで掲載され、提供意思のある企業別に説明会を行いRFIを手交する。手交したRFIに基づき情報提供が行こなわれる。



【全体の流れ】

この項目では検討作業と決定事項の主な流れを時系列で俯瞰する。国際協力も含めた2020年度以降の開発計画は【開発作業】を参照


2010年


・将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン
(2009年12月-2010年8月)


 2009年12月、これまでのF-2の製造終了と防衛産業への影響の調査結果をまとめた「戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会 中間取りまとめ」が作成された。この調査は防衛省と日本航空宇宙工業会(SJAC)の官民合同で行われた。[11]


 前項を受けた防衛省は、「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン検討作業チーム」を編成し、将来戦闘機コンセプトや必要な研究事項を整理した。
 このチームは内局(経理装備局、防衛政策局)、空幕、技術研究本部、統幕(オブザーバー)の課長級から構成される。
 この検討によって2010年8月には「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」が公表された。将来戦闘機のコンセプトやF-2後継機に開発を選択肢として考慮できるよう必要な研究/検討を推進する方針等が示された。[12]


・中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)
(閣議決定2010年12月)

2010年12月に策定された23中期防では
「戦闘機(F-2)の後継機の取得を検討する所要の時期に、戦闘機の開発を選択肢として考慮できるよう、将来戦闘機のための戦略的検討を推進する」

とされ、中期防においても将来戦闘機の検討を推進する方針が示された。[66]


2010-2014年

・将来戦闘機官民合同研究会
(2010年10月-2014年3月?)

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将来戦闘機官民合同研究会のメンバー

 先のビジョンに従い、2010年10月には、官民の認識共有/戦略的な研究の推進/民の事業計画策定への資等を目的とした「将来戦闘機官民合同研究会」が設立された。研究会は防衛省とSJACで構成される。防衛省側の出席は上記画像の通りである。
 当研究会では主に将来戦闘機コンセプト、LCC、ロードマップ、開発体制、技術戦略、技術動向等をテーマとした。[13]

 研究会の進捗に伴い、2011月4月、技術研究本部は「総合検討部会」を設立した。これは本部内での総合的検討(省内の技術的検討支援も含む)、研究開発事業の情報共有の促進を目的とした。[14]

・中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)
(閣議決定2013年12月)

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 政権交代による自民党政権の誕生で民主党政権下の23中期防が廃止され、26中期防が策定された。[15]
 当中期防では将来戦闘機関連事業を継続する他、国際共同開発の可能性も含め検討し必要な措置を講ずると記された。
 26中期防の決定に伴い、2014年7月に内局/空幕/装備庁で構成される「F-2後継機に関する検討チーム」が設置された。[1]


2015年

・プロジェクト管理重点対象装備品
(選定2015年11月、計画策定2016年8月)

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 2015年11月には効率/効果的な取得を目的とし、重点的にプロジェクト管理を行う装備品(プロジェクト管理重点対象装備品)として将来戦闘機が選定された。2016年8月には取得戦略計画の概要が示された。[16][17]


2016年

・装備品等研究開発見積依頼
(2016年1月)

 2016年1月には次期戦闘機の「装備品等研究開発見積依頼」が策定された。見積依頼の概要は前章を参照[18]

・F-2の後継機となる戦闘機の実現可能な取得方法の検討
(2016年6月)


 2016年6月には将来戦闘機に関して第一回目のRFT(F-2の後継機となる戦闘機の実現可能な取得方法の検討)が公示された。新規開発、既存機の派生型の開発、既存機の購入について情報提供を求めた。[19]


2017年

・将来戦闘機における英国との協力の可能性に係る日英共同スタディに関する取決め

(2017年3月)


 2017年7月には防衛省と英国防省で「将来戦闘機における英国との協力の可能性に係る日英共同スタディに関する取決め」を締結した。[20]


2018年

・装備品等研究開発要求の策定見送り
(本来時期2018年3月)


 前提として防衛省は26中期防に則り、2018年度までに国際共同開発/国産開発に係る最終判断を行うとしていた。[21] 

 2016年時点では2018年度に開発に係る判断を行う予定であり、本来であれば2018年3月に装備品等研究開発要求を策定する予定であった。[22] [23] これは2019年度概算要求に開発費を計上するのと同義である(開発要求は概算要求年度の前年度に作成するため)。
 しかし、実際は開発費が計上されていない。

 開発要求が策定されたのは1年以上後の2019年9月である。[24] 結果として将来戦闘機の予算化は1年遅れることとなった。


・第3回目RFTの公示
(2018年6月)

 防衛省は2018年6月に3回目(2回目は2017年)のRFTを公示した。これにより一時期話題となったF-22とF-35のハイブリッド機等が提案された。(後述)[25][26]



2019年

・中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)
(閣議決定2018年12月)


2018年12月に策定された31中期防では
「将来戦闘機について、戦闘機(F-2)の退役時期までに、将来のネットワーク化した戦闘の中核となる役割を果たすことが可能な戦闘機を取得する。そのために必要な研究を推進するとともに、国際協力を視野に我が国主導の開発に早期に着手する」

との方針が示された。これによって既存機の購入は選択肢から除外された。[27]

・令和2年度概算要求
(2019年8月)

 将来戦闘機の開発費が事項要求として計上[28]

・装備品等研究開発要求の策定
(2019年9月)

 2019年9月には次期戦闘機の開発要求が策定[24]

・日米共同スタディ
(2019年9月-2020年5月)

 日米防衛関係者で将来戦闘機について協議[24]

・令和2年度予算の閣議決定
(2019年12月)

 次期戦闘機の開発費(構想検討)に111億円が計上、正式名称が次期戦闘機となり、派生機の選択肢も正式に除外[29][30]


【目的・性能・運用】

この項目では次期戦闘機の目的・性能・運用の検討及び変遷を時系列順に述べる。

①i3FIGHTER [12]

 研究開発ビジョンでは、将来戦闘機は航空優勢の確保に資するものであり、数的劣性下でも第5世代機に対処しうる次世代機として示された。それらを実現する戦闘・機体コンセプトを以下に述べる。

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 将来の戦闘コンセプトとして「i3FIGHTER」が提唱された。以下にその概要を示す。

・統合火器管制によるクラウドシューティング
・大型機や無人機とのネットワーク
・高出力レーダ/マイクロ波での瞬間撃破
・電子戦に強いフライバイライト(FBL)

による

情報化(informed)
知能化(intelligente)
瞬時に(instantaneousInstantaneous)

を特徴としている。高出力レーダ/マイクロ波や無人機の群制御は、配備時期である2030年代より後の2040〜2050年代の実現を目指している。

 また、ステルス機に対抗しうる、機体の質的な向上としてカウンター・ステルス・ファイターも提唱された。
以下にその概要を示す

・敵を凌駕するステルスと優位性の確保
・次世代ハイパワーレーダによる早期発見
・次世代ハイパワー・スリム・エンジン


②ビジョン後の初期的な検討-DMU

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 コンセプト検討にあたって、戦闘シナリオ/脅威機体/将来戦闘機等をモデル化し、戦闘シミュレーションによる検証を行った。
 検討初期ではX-2をスケールアップさせた機体を設定し、機体規模の目安を検討した。[31]
 2011年から2014年にかけては、「将来戦闘機機体構想の研究」を実施し、DMU(デジタル・モックアップ)を作成した。DMUは戦闘シミュレーションを通じて改訂され、23-26DMUが作成された。[22]

将来戦闘機機体構想の研究の詳細はこちらを参照
初期検討作業は当資料を参照



③要素研究

 要素研究は先のDMU(デジタルモックアップ)に基づき研究目標を策定している。また、研究に関する資料には機体構想に言及されているものもあり、それついてまとめる。

・数的劣勢化での対ステルス機の要撃や撃破[32]
・高いステルス性[33]
空対空戦闘に必要な機動性の確保[34]
ミサイルやステルス機への残存性[35]
・超音速巡航能力[36]
・高高度/高速戦闘能力[36]
・地上レーダなど各種アセットとの連接[32]
・ネットワークを中心とする防空体制の構成要素[32]
・ステルス機の探知[37]


④バーチャルビークル [38]


 2015年からはより運用構想や要求性能を明確化するため、「将来戦闘機の技術的成立性の研究」を実施した。
当研究ではデータ化された仮想上の機体であるバーチャル・ビークル(VV)を作成した。
 VVは任務分析や技術的なトレードオフ、RCS試験等に基づきコンセプト案毎に設定される。VVは戦闘シミュレーションによって検証され、LCCも含めた機体仕様の精微化を行った。

 なお、VVの任務内容として以下が想定されていた。

・第5世代戦闘機対処
・爆撃機等対処
・対艦攻撃
・対地攻撃
・電子戦対処
・非軍事任務



⑤現在



 空幕は将来の脅威や戦略環境を見積り、2019年9月には装備品等開発要求を策定した。[24]
 また、次期戦闘機の開発着手に伴いそのコンセプトが発表された。概ねi3Fighterのコンセプトを引き継いでる。
 ASM-3の搭載やマルチロール性を備えつつ、主として空対空戦闘を担うことが示された。[39][40] F-35より多いミサイル搭載量や幅広の機体など大型戦闘機であることが伺える。行動半径も重視する。[41][24]

 同盟国たる米国との連携も念頭にあり、2019年9月からの日米政府協議では相互運用性や脅威認識の共有がなされた。[24][42]
 相互運用性の観点から、次期戦闘機はインターオペラビリティ用含め3種類のデータリンクを搭載する。[24]

 防衛省内では無人機技術を重視しており、「脅威度を増す環境を念頭に、完全に無人機で対応すべきではないか」との意見も存在した。空幕内では「航空路が集中する沖縄で、無人機を用いたモニター越しのスクランブルは可能か」等も議論された。
 議論の結果、「2035年頃に実現する機体は無人化する必要はなく、有人機の方がメリットがある」との結論に至った。
 他方で、次期戦闘機の無人機との連携/組み込みは設計の要点として重視する。
 将来環境の不確実性に対応するため機器搭載スペースや発電力に余裕をもたせる。[43]

 なお、報道では機体構想や性能を報じたものがあり、それらを紹介する。

機体構想
・高い空戦能力を実現する案が有力[44]
・空戦能力と併せて長距離巡航ミサイルを搭載し
 高水準の対艦攻撃能力も備えさせる案も存在[44]

細部性能
1.最大速度はマッハ2[45]
2.F-35以上のステルス性、レーダ探知距離、航続距離[45]
3.8発のAAMを内装[45]
4.ステルス機を探知する非武装無人機の搭載[45]
5.運用に応じ空対艦ミサイルを外装しての対艦攻撃能力[45]
6.20tを超える空虚重量[46]
7.HPM装置の搭載を検討[47]


【コスト】

 2010年頃の極初期の見積り(開発費は概ね5000-8000億円)を除き、次期戦闘機の開発費、調達費、LCCについて正式な発表はされていない。
 基本計画としてのLCCは2020年度末までに策定する。[48]
報道の数字も、開発費は1~2兆円、LCCは4~6兆円と時期やメディアによってバラバラである。[49]


 将来戦闘機官民合同研究会では、F-2/F-15のLCCの算出・構成分析、海外機のLCC調査、抑制案/抑制可能経費を検討した。
 DMUでも主要性能から開発費、調達費、LCC等を見積もった。[14]
 バーチャル・ビークルでは統計的手法(現有戦闘機の調達・運用条件からの算出)、積上げによる手法(機体/装備品について過去の研究開発・類似装備品からの算出)でLCCを見積もった。バーチャル・ビークルを使用したLCC低減策も検討された。[38][50]

 装備庁では「国内の技術のみで機体を開発した場合」を1つの基準として、海外企業との協業でどれだけ開発リスク・コストの低減ができるかを模索しているという。[51]
 装備庁による開発費見積もりの説明では、「必ずしもF-35の開発費(6〜7兆円)がベンチマークにはならない」と述べている。その理由については以下の内容を挙げている。[43]

・F-35はA〜C型のかなり設計の異なる3機種を同時に
 開発したこと
・開発期間が20年近い、やや古い形での開発
・プログラミング等がコンピュータが発達した最新の
 手法と合致しない
・オープンアーキテクチャの採用など、相応のコスト
 削減の余地が存在すること



【装備構想】


画像は2018年開発着手とした場合のもの

 次期戦闘機は94機調達(3機損耗)されたF-2の後継として開発・調達され、2035年の配備開始を見込む。[40]
 2018年に開発着手する場合では2026-2030年の配備を見込んでいたが、2011年頃の予測であるため途中で計画が変化した可能性がある。[31]
 2016年時点では2030年代以降の配備と言及された。[52]

 次期戦闘機の調達数については明らかになっていない。報道ではF-2と同程度とされている。[53]

 将来の戦闘機体制としてはF-35、F-15近代化改修型、次期戦闘機の3機種体制を想定する。[40]
 「将来戦闘機機体構想の研究」ではF-4後継機との組み合わせによる戦闘機体系全体での検討を行った。[14]





【開発計画】

この項目では2020年度予算成立以前の開発計画の検討事項を述べる。
米英との国際協力も含めた2020年度予算以降の事項は【開発作業】を参照


2010年以降

 将来戦闘機官民合同研究会では開発体制について以下の検討を行った。[14]

・海外の航空機開発事例の調査(官民の契約形態、複数企業間での情報共有、海外企業が参画するための条件)
・P-1/C-2開発時の諸課題についてのヒアリング
・前2項の諸課題解決に資する技術、制度改善、それらの実現手段の検討


2014年

 26中期防では国際共同開発の可能性も含め検討すると記載された。[15]


2016年

 6月には国内外企業に第1回目のRFTを公示した。新規開発で参画可能な分野、参画を希望する分野、能力向上に寄与しうる最新技術情報等を収集した。[19]



 日本と諸外国の開発費の差異に関する調査・分析、ステルス戦闘機や他の装備品の開発費の高騰要因分析を調査した。開発費の見積もりの精微化やコスト抑制にこの調査結果を反映させる。開発費を増大させることでLCCの抑制が期待できる、国際共同開発の可能性についても海外と協議する。[54]

2017年

 8月のプロジェクト管理報告では、ブロック化による開発方式及び配備の検討が記された。一部は量産・配備との並行を想定する。また、国内外の最新設計、製造技術導入によるコスト低減策も検討する。[54]
 2017年末には「将来戦闘機システム開発の実現性に関する研究」を2018年度予算に計上した。バーチャル・ビークルの成果を反映しつつ、コスト低減の追求や国内の開発体制及び海外との協力の検討等に必要な技術資料の収集を実施する。この研究は2020年度まで実施され、総予算は28.6億円を予定している。[55][56]

 また、第2回目のRFTが公示され新規開発に国外企業が提案可能な情報を収集した。[25]


2018年

 「将来戦闘機の開発体制の構築に係る調査」が実施され、以下の項目の調査した[57]

・国内企業が主契約会社の場合、どのような体制で開発
 を分担するべきか
・国内開発(100%日本出資)の場合、国内企業が
 海外から支援を部分的に受けるにあたってどのよう
 な企業体制で交渉に望むべきか
・国際共同開発(複数国間で出資をシェア)の場合、
 日本はどの部分の開発を担当しどの部分を海外に任
 せるべきか

 11月には防衛大臣が開発に関する以下5つのポイントを発表した[58]

・将来の航空優勢の確保
・国内企業の参画
・改修の自由度
・現実的なコスト
・将来の技術も適用できる拡張性

 12月には[将来戦闘機の開発に係る総合的な実現可能性に関する研究]を2019年度予算に8億円計上した。将来戦闘機について外国と協業する場合のコンセプト検討、開発プラン検討、能力評価を実施する。[59]
 同じく12月に31中期防が公表され、国際協力を視野に、我が国主導の開発を行う方針が示された。[27]


2019年

 3月、国内10社による開発に特化した合弁会社の設立検討の報道について防衛省は以下のような答弁を行った[64]

「大手10社が企業間連携に関する研究会を5回開催しているのは承知しており、民間の取組みに口出しはできないが、最適な開発体制の模索は防衛産業の厳しい現状を考えると歓迎する」

 11月の有識者会議にて装備庁は「戦闘機としての性能・日本主導・能力向上・コスト等を総合的に見た上で、国内技術や海外のブラックボックスを適用する部分を検討する」と述べた。
 着手前に失敗リスクの定量は難しいとした上で、「これまでの技術的な検討で、これまでの資産を活用すれば、かなり高い確率で開発に成功すると結論を得ている。」とも述べた。
 また基本的な戦闘機技術は有しており、大変だがインテグレーションに挑戦すべきとの認識も示している。開発リスク分担や責任の所在を今後明確にする方針も示した。[43]

 12月には、8月に事項要求とした開発費を2020年度予算として閣議決定された。次期戦闘機の新規開発が決定した。[29]



【技術戦略】

 2010年の研究開発ビジョンでは戦闘/機体コンセプトを示すと共に、構成技術の研究を進める方針が示された。
[12]
 ただし、将来戦闘機の要素研究は2009年度の事業評価で初めて登場している。[37]即ちビジョン発表以前からステルス機探知や高性能エンジン、ウェポン内装を前提とする戦闘機に向けての取組みが一部計画・実施されていた。

 将来戦闘機官民合同研究会では以下の作業が行われた
[14]

・将来戦闘機の構成技術の抽出(ミサイル技術は別途
 検討)
・構成技術に対する国内外企業の技術成熟度の調査
・欠落技術の補完策定検討
・バーゲニングパワーも加味した保護すべき技術・保護
 手段の検討
・海外最新技術動向の調査



 2011年時点では上記画像のような研究ロードマップが計画された。2020年現在の実施状況とは内容等が異なる点も見受けられる。[14]

 資料の都合上、合同研究会以降の技術戦略の検討作業は明らかになっていない。



【代替案の分析】

次期戦闘機では2016年から新規開発以外の選択肢として「既存機の能力向上型の開発」「既存機の購入」が検討された。[19]
本稿ではそれらの検討結果について述べる。

 2016年6月の第1回目のRFTでは上記2つについて機種に関する情報収集を行ったが、提案内容は定かではない。
[60]
 2018年6月の第3回目のRFTでは「既存機の能力向上型の開発」について再度RFTが公示された。[26]
このRFTにはロッキード、ボーイング、BAEが以下のような提案を行った。[26]
ロッキードの提案の詳細はLM案の追憶を参照

ロッキード・マーチン
 F-22の機体を基に改修を行い、F-35の電子機器の適用や日本製機器の搭載も検討

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ロッキード案

当イラスト作成者様である 四葉時間 様の許諾を
得て掲載したものであり、無断転載を固く禁ずる
※当イラストは日経新聞の取材により公表されたロッキード案のイメージを基に作成され、航空趣味雑誌であるJwingsに掲載されたものである。


ボーイング
 F-15を改修し部分的なステルス性を付与

Picture10-md-960x600
F-15EX
米空軍への新規導入も決定している、F-15の最新型


BAEシステムズ
 ユーロファイター・タイフーンの改修
 CAPTOR-Eレーダーを搭載しCFT(Conformal Fuel Tank)を装着して航続距離を伸ばした最新仕様

Typhoon-CFT-Al-Ain
CFTを装着したタイフーン

 31中期防によって既存機の購入は選択肢から除外されたが、既存機の派生型は少なくとも2019年6月までは選択肢として存在した。
 ロッキードの提案に関連した、F-35の全面的な技術開示報道について装備庁は「報道内容は承知しているが、全面開示という事実は無い」と否定している。防衛大臣は「派生型も改修自由度やソースコードのアクセスができなければ、開発する意味が無い」との認識も示した。[26]

 2019年12月の記者向けの2020年度防衛予算説明会で、ロッキード及びボーイングの案は要求を満たさないとして選択肢から除外したのが発表された。BAEは防衛省の評価中に提案を取り下げた。[30]



【海外との意見交換】

 2015年度からは欧米各国と現有機や将来計画について意見交換を行った。[22]

 特に英国とは2017年3月に「将来戦闘機における英国との協力の可能性に係る日英共同スタディに関する取決め」を締結した。日英それぞれが進める将来戦闘機計画での情報交換や、将来の共同事業の可能性について意見交換を行う。2017年8月の日英防衛相会談でも共同スタディの推進が確認された。[20][60]

 その後、英国は2018年8月に将来戦闘機構想たる「テンペスト」を発表した。英国は日本を同計画のパートナーとして秋波を送っている。日本は同計画が日英共同事業にどのような影響を与えるかを見極めつつ、日英で引き続き協議を行う。[56]


 時系列が前後するが、2018年2月に「
ジェットエンジンの認証プロセスに係る共同研究に関する取決め」を日英で締結した。日英共同でジェットエンジンの評価手法を検討し、将来のエンジンの研究開発を効率的に行う。[65]
 同年3月には「次世代RFセンサシステムの実現可能性に係る共同研究に関する取決め」を日英で締結した。瞬時かつ広帯域、広範囲な探知を実現するRFセンサの実現可能性を検討し爾後の共同研究に繋げる。[61]
 RFセンサでの連携は、2021年度概算要求での高機能レーダ技術の研究(日英共同研究)で実現した。[62]

 同盟国たる米国とも協議を重ねている。空幕と米空軍との協議や、特に2019年9月からは日米政府協議を実施し、相互運用性・将来の脅威認識・産業面での連携等を議論した。[24][42]


 著名なシンクタンクたるCSISは、次期戦闘機について海外との交渉を円滑に進めるため、非公式なフォーラムを設立した。[63]

米英の動向やフォーラムの詳細は【提案】〜【思惑】を参照




【参考文献】

[1]F−2後継機に関する検討チーム設置要綱について(通達)
[25]JWings 2019年1月号
[44]読売新聞2019年8月21日
[45]読売新聞2018年4月21日
[47]産経新聞2019年11月17日
[51]JWings 2019年8月号
[66]中期防衛力整備計画(平成23年度〜平成27年度)