次期戦闘機【開発作業】

本稿では2020年度以降の次期戦闘機の開発作業を中心に記述する。2020年度以前の検討は【検討作業】を参照
【目次】
・前提
・開発目的
・開発の要点
・開発の要点
・スケジュール
・開発体制
・国際協力
・作業進捗
・仕様
・全体年表
・参考文献
【前提】
最初に、訓令で規定される開発作業での用語を確認し、各作業の立ち位置を明確にする。
用語の定義及び一般的な開発の流れは以下の画像の通りである。[1]
※1:システム設計は、システムの構想や任務、特性等が、複数の主要構成品の連携による実現が必要な場合に実施するものであり、主要構成品が、単体の装備品の中の各構成要素を対象とする場合もシステム設計としくて整理しうる。
※2:基本設計は、システム設計と一体として取り扱われる場合があり、この場合はシステム設計を含めた意味となる。
【開発目的】
日本の周辺国では第5世代戦闘機の研究開発や近代化された戦闘機の配備も進んでおり、安全保障環境は厳しさを増しつつある。
F-2は2035年頃から退役が始まり、延命も費用対効果などから難しい状況である。
後継たる次期戦闘機は15~30年後以降の将来において、周辺国の装備品等の近代化と戦略の変化への対応が必要である。
将来の航空優勢に必要な能力が確保された次期戦闘機を開発し、運用期間にわたって第一線級の能力を発揮可能な拡張性や改修の自由度を確保する。
次期戦闘機の運用期間にわたって、日本に対する侵攻への実効的な抑止力及び対処力の確保に資する。
戦闘機の開発にはおおむね15年を要するため2020年度から次期戦闘機の開発に着手する。既存機の購入は将来の発展性や改修の自由度といった点を満たせず、新規開発の代替手段になり得ない。[2]
【開発の要点】
次期戦闘機の開発では以下の5つの点を重視する。[2][12]
①将来の航空優勢に必要な能力

陸海空のアセットと連接し任務を遂行する
次期戦闘機は15〜30年後以降の将来の脅威に対し、戦闘機体系全体として航空優勢を確保・維持する。
統合運用のもと、空自の戦闘機や早期警戒管制機のみならず他の陸自・海自のアセットとネットワーク上で連接し、連携した戦闘においてネットワークの中核となり得る能力を保持する。
②「次世代技術」も適用できる拡張性
次期戦闘機には、高速ネットワーク技術や戦闘機を支援する遠隔操作型の機体との連携といった次世代の技術を搭載できる拡張性を確保する。
ATLAは拡張性に必要な要素として、大電力消費への対応(エンジン能力及び発電機)、新たな機器を追加できるスペースの確保(戦闘機全体のバランスも考慮)の2点を挙げている。
③改修の自由度
国産のミサイルやレーダーを搭載できるかにとどまらず、日本が独自のニーズに基づき、自らの判断で能力向上や装備品搭載を容易に実施できる体制を確保する。
④国内企業の関与
次期戦闘機が第一線級の能力を保持するため、産業政策としての開発事業は行わない。しかし、国内企業の関与は改修の自由度を確保する上で必要不可欠である。
・日本が蓄積してきた技術の活用
・自国での維持・整備・改修の実施
などが行えるかといった視点を含め、将来にわたって空自が能力発揮するために必要な基盤を構築する。
⑤開発・取得のコスト
開発費及び量産単価は持続可能性のある水準を維持しなければならず、機体単機の能力については、性能とコスト等のトレードオフを重視する必要がある。トレードオフによって運用構想を実現しつつ費用対効果の高い要求性能を導出する。
【スケジュール】
2020年に開発着手する理由は以下の通りである[2]
・F-2は2035年頃に退役開始
・戦闘機の開発には概ね15年要する
・初期作業の構想検討は国際協力体制によらず実施可能
上記スケジュールは検討中の案であり、国際協力体制を決定した上で2020年度末までに確定させる。
【開発体制】
①防衛装備庁
2020年度から防衛装備庁には装備開発官(次期戦闘機担当)のポストが新設され、門間政仁空将補が就任した。[3][18]
装備開発官をトップとする、技官や航空自衛官ら約30人で構成するチームが設計や契約等の実務を担う。[4]
②民間企業
開発体制と契約方式の比較
防衛省は開発でインテグレーションを重視し、最適な契約体制について検討した。[5]
2020年の7月の発表で、開発体制について上記画像中の「シングル・プライム」の採用が決定した。当体制は改修の自由度/開発費の低減とそれに伴う国際協力等を勘案した結果の決定である。[6]
プライムは三菱重工であり、インテグレーション支援企業たるロッキードとの交渉や連携を含め開発を取りまとめる。
7月にプライムの公募を開始し三菱重工のみが応募、8月に公募を締切り応募条件を精査、10月に契約締結という流れである。[6][7][8]
なお、エンジン開発作業は機体開発とは別に防衛省と契約を結ぶ。アビオニクス等の構成品担当企業は2021~23年度に順次選定される。[8][15]
2020年12月にはMHI小牧南工場でF-X開発チーム(FXET)が結成された。FXETはプライム・サブプライム企業の、大手重工/電機メーカーの計8社(MHI、KHI、IHI、SUBARU、MELCO、東芝、富士通、NEC)で構成される。当初規模は200人以上であり、最大で500人規模を見込む。
小牧南工場に飛行制御やエンジン、ソフトウェア等の部門ごとの設計室を備える。
役割分担は開発主体がMHI、機体がKHIとSUBARU、エンジンがIHI、ミッション・システムがMELCO、各アビオニクスが東芝と富士通及びNECである。
なおKHIは技術者100人程度をF-X開発に投入する他、MHIからはMSJ開発の一部メンバーもFXETに参加する。
[21][22][23][28]
※X-2の開発チームは作業工程毎に名称や規模が変化しており、次にそれを示す。高運動飛行研究試作チーム(ASET:基本設計及び関連試験供試体の製造-M/K/F/IHIから50名、前胴供試体の設計製造-M/K/F/IHIから80名、両作業ともMHI大江工場で実施)、先進技術実証機設計チー厶(ATRAS:X-2の細部計画図作成-M/K/F/IHIから大江工場に250名、X-2の製造図作成-M/K/F/IHIから大江工場及びFHI宇都宮工場に270名)[24]
【国際協力】
米英との協議状況(2020年7月)
2020年3月には米英を国際協力相手として検討する旨が発表された。[9]
12月末までにインテグレーション支援国/企業を選定する。支援企業は防衛省とは直接契約しない。[10]
米国とは2020年5月から日米企業協議を開始した。この協議には日米の防衛関係者、三菱重工、米企業3社(ロッキード、ボーイング、ノースロップ)が参加しているという。オンラインで企業別に提供可能な支援策を協議した。
また、防衛省は英国企業4社とも協議を行った。[11]
2020年8月にはインテグレーション支援に関して9月締切のRFTを公示した。この募集には国外7社から情報提供意思が表明され、最終的に情報提供を行ったのは3社(ロッキード、ボーイング、BAE)である。なおロッキードの提案はノースロップと合同で提出された。[7][16][17]
2020年12月にはロッキード・マーチンをインテグレーション支援の候補企業として選定した。第5世代戦闘機の豊富な開発経験に基づく提案が総合的に最も優れてると判断された。
LMからは「ミッション・システム・インテグレーション」「運動性能とステルス性の両立」「コンピューター・シミュレーションを駆使した設計作業」の3分野について支援を受ける見込みである。
MHIはLMとの契約に向け協議を進めると共に、LMは輸出許可を取得するため米国政府との調整も行う。
米国との相互運用性確保のため米国官民の協力のもと、ネットワーク構成検討(2021-22年度:12億円)を実施する。米国装備品とのデータリンク連接に係る研究事業を予定する。
アビオニクスやエンジンといったサブシステムについては、2021年度以降も米英と国際協力可能性を検討する。[25]
【開発手法】
開発リスクやコストの低減から以下のような開発手法を取り入れる。[2][26]
・シングルプライム体制による統合企業と構成品企業
との連携緊密化
・ブロック化開発による段階的な開発プロセスの推進
・オープンアーキテクチャー(OA)の採用によるアビ
オニクス開発作業の効率化
・モデルベースドデザインや先進的な製造技術の取り
込み等による開発の効率化
・国際協力で更なる技術的信頼性向上やコストの低減
・リスク分析手法の活用による、設計初期段階からの
技術的リスクの網羅及び発生可能性や影響度の把握
・EVM管理手法による工程の定量的な可視化
【作業進捗】
2020年10月に次期戦闘機(その1)で三菱重工と契約し開発に着手した。次期戦闘機(その1)では2022年まで構想検討を行う。[8][19]
構想検討では、要求性能を設計基準という細部仕様に落とし込む、大まかな機体形状を複数案から絞り込む等を行う。これらのことから【前提】でのシステム設計に該当すると思われる。[12]
2020年末のFXETの結成に伴い、2021年1月から本格的に構想設計に着手する。[5][23]
【仕様】
次期戦闘機について上記イメージは出ているが、正式な機体形状や性能は未定である。
将来戦闘機機体構想の研究ではDMUが、バーチャル・ビークルでは仮想空間での機体を作成した。[13][14]イメージ図はそれらが基である可能性が考えられる。
【全体年表】
2020年
・3月
○2020年度予算の成立[3]
・5月
○日米企業協議が開始[15]
・7月31日
○開発体制をシングルプライムに決定[6]
○同日から次期戦闘機(その1)-プライムの公募
を開始[6]
・8月25日
○インテグレーション支援企業のRFTを公示[10]
・9月1日
○RFTを締切り、7社からの提案意思を確認[7]
○三菱重工のみが7月の公募に応じたと発表[7]
・9月30日
○2021年度概算要求でエンジン設計費が計上[20]
・10月30日
○次期戦闘機(その1)を三菱重工と契約、開発[8]
着手
○ロッキード、ボーイング、BAEが情報提供書を
提出[16]
・12月
○FXET結成[23]
・12月18日
○LMがインテグレーション支援企業候補に選定[25]













