2020年09月

米空軍報告書:F-22再生産の評価




本記事ではインターネット軍事報道:THE DRIVEが米政府に情報開示請求を行って入手した、「米空軍によるF-22の再生産評価報告書」を全文和訳し掲載しています。

当報告書は議会委員会からの要求に基づき、米空軍によってF-22が再生産に値するかを調査するために作成されました。
昔のランド研究所の調査に、簡易的な修正を加えF-22の再生産費用等を推定しています。メーカーとの見積りは行っていないため、出てくる数字・費用は大まかな参考程度として見てください。

翻訳した理由は、2017年に出された当報告書を読み解くことで、同じくF-22のフレームを用いる将来戦闘機LM案(2018年提案)の能力費用実現性等の各種評価を深めようという狙いがありました。

さて本文に行く前に大まかな報告要旨を砕けた口調で書くと

「F-22の再生産費用が法外に高価すぎ、輸出での価格低減も無理、再生産機が就役する頃には能力優位も怪しい、再生産する位なら新規プログラムに投資した方が遥かにマシ」

といった内容を米空軍自身が述べています。

本文中でのドル表記は元の資料に則り、2016年度での値を使用しています。日本円は2020年のレート(1ドル106.77円)を用いており、ドル(2016)をインフレ率を加味し、ドル(2020)に変換した後に先述のレートで換算しています。インフレ率計算はこちらのサイトで行っています。
長くなりましたが以下の本文をどうぞ

非機密指定

アメリカ合衆国空軍
議会委員会への報告

F-22Aの再生産に関する評価
2017年2月

このレポートまたは国防総省の調査の推定コストは約37,000ドルである。 これには0ドルの費用と37,000ドルの国防総省の作業が含まれる。



前書き

   このレポートは下院レポート114-537の38ページに基づき、2017年の議会の国防委員会に提供される。

F-22再生産の調査
委員会はF-22の生産が2009年に終了し、187機が生産されたことを記す。生産数について初期計画目標の749機および空軍要求の381機には遠く及ばなかったことを注記する。委員会は空軍、国防総省、および議会内でF-22の再生産に関心があったことも把握している。仮想敵国との技術格差の縮小から米国の航空優勢が脅かされ、また同盟国とパートナーが厳しさを増す安全保障上の脅威に対応するために、高性能マルチロール機の需要が高まっている。委員会はこれらの背景からF-22の再生産はさらなる調査に値すると考える。したがって委員会は空軍長官に対し、F-22の再生産に関連する費用の包括的な評価と調査を実施し、2017年1月1日までに調査報告書を国防委員会に提出するよう指示する。委員会は報告書が非機密指定であることを望む。(提出されるが、機密指定の附属書を含む場合もある。)
また、報告書は以下の(1)~(5)項目について検討しまとめるよう指示する。

(1)短中期的な空中および地上の脅威見積もりに基づく、将来の航空優勢能力および性能要件の予測。A2/AD環境におけるF-22の任務及び役割の変化、F-15Cの退役計画および耐用年数延長計画、次世代戦闘機の推定IOC獲得時期、既存のF-22Aの推定退役スケジュール。

(2)生産ラインの再構築費用、および低率量産再開までに必要な時間を含むF-22の再生産コストの推定。
F-22を194機追加調達し計381機にする場合の費用。他の要求または在庫レベルを満たすため更にF-22を追加調達した場合のコスト。194機以上の調達については、国家安全保障戦略をサポートする空軍長官が新たな脅威に対処する必要があると見なす可能性があるため。

(3)既存のF-22A生産ツールの可用性と適合性など、F-22の再生産コストに影響を与える要因の調査。調達数量を変化させた際の単価および総コストへの影響、F-22の輸出を禁ずる1998年国防予算法(公法105-56)のセクション8118が廃止された場合の外国の輸出と相手国の関与の機会について。

(4)過去の航空機生産再開からの歴史的教訓

(5)その他、秘密が適切とみなす事項。

報告の概要
   
   空軍はF-22の再生産の検討を行うという下院報告114-537の指示により、この報告を用意した。当報告は2011年のランド研究所の調査「F-22Aの生産器具の保管、オプションおよびコスト」に基づいて記述される。また生産機材の保管についても、生産再開を含む予想される将来の要求に対応する。先の調査は過去の議会報告の要約も提供する[3]
   
   F-22の生産は国防長官によって、要求された381機のうち195機(試験機8機、生産187機)で停止され、2012年5月に最終量産機が納入された。近年の財政環境において5つの主要なコスト要因は生産ラインの再開を困難にする。生産ラインの復元、製造およびサプライヤー網の再確立と再認定、重要な長納期原材料の調達、熟練労働者の復元と再教育、主要なサブシステムの予想される再設計作業および政府の費用。これらの再生産初期固定費用は、70〜120億ドルに及ぶ可能性がある。

   空軍は、194機調達での機体単価が2億600万〜2億1600万ドル(237億〜248億円)の範囲になると見積る(会計年度2025〜2034)。先の調査では調達単価が推定で2億6,600万ドル(306億円)だったが、想定した追加調達数は75機であった。 194機の調達を想定すると総調達コストは400〜420億ドル(4兆6046億~4兆8348億円)と推定される。総調達費用と初期固定費用(98億6900万ドル/1兆1360億円)と組み合わせると、合計の再生産コストは503億600万ドル(5兆7909億円)と見積もられる。表1に推定総コストをまとめた。予算編成用のより正確な公式の費用見積もりを作成するには、さらに9〜12か月の民間との契約を要する。

表1:F-22の194機の再生産時の見積り

元の表を基に筆者が作成

   2010年の空軍の調査では、F-22の対外有償軍事援助(FMS)はまだ技術的に実現可能であり、輸出型の開発費を19億4000万ドル(2233億円)、初期固定費用を6億8400万ドル(787億円)、合計26億2000万ドル(3020億円)と見積もった[4]。現在(2016年)を基準として追加費用等を見積もり直すと、FMS/輸出型の調達単価は3億3000万ドル(379億円)となる。この試算では調達数を40機、初号機開発契約から納入までを5-6年とした。もし今日にこの契約がなされた場合、急速な技術進展と空軍兵器システムに対するサイバー脅威の増大により、2010年の見積もりを超える追加の開発費用が必要になるだろう。

   F-22の再生産費用は、輸出相手国の参画があっても莫大なものになるだろう。F-22の生産が他の空軍プログラムと資金およびメーカーのリソースを奪い合うように、F-22の輸出も既存のF-35導入国を含めFMS顧客のリソースと競合する。ほとんどの国はF-22輸出型の調達に利用できる資源を持っていない可能性が高く、FMSによる再生産関連費用の低減効果を著しく制限している。

   F-22の再生産を最速で追求する場合、2020年代半ばから後半にかけて新しいF-22の納入が開始される。F-22は現在の脅威に対する最高の制空戦闘機であり続けるが、再生産機は2030年以降の増大する脅威によってその優位が揺らぎ始める時期から就役を開始する。F-22の再生産は、空軍参謀総長が署名したAir Superiority 2030  Enterprise Capability Collaboration Team ( AS 2030 / ECCT) Flight Plan(2030年代の航空優勢確保にかかる冒険的な機能融合に関する実施計画)に必要なリソースとも直接競合する。当計画では急速に進展するA2/AD環境下で持続生存し、致命的な効果をもたらすのに必須かつ重要な機能に対応する。仮にF-22の生産の早期終了ついての能力とその課題を支援するために、空軍外部のTotal Obligation Authority (TOA) から資金が提供される場合、空軍はこれらのリソースをAS 2030 ECCT に概説されている能力開発計画に充てることを推奨する。


レポート
第1節 航空優勢の確保及び必要な能力
1.1 背景

   F-22は現在、米国空軍にとって最高の制空戦力(航空優勢の確保/維持)であり、その主な役割として高烈度環境での制空作戦を遂行する。よって2020年代を通じて航空優勢を獲得/維持するため、F-22の近代化は空軍の優先事項である。ただし、2030年に近づくにつれ、脅威能力は現在-将来に渡って進化し続け、非常に競争の激しい環境を作り出すことを認識することが重要である。脅威は将来の航空優勢確保に必要な機能の獲得に向けて推進し、脅威の進化速度は、必要な機能獲得に向けた取組みを推進する。したがってF-22の再生産を論ずるなら、将来の高烈度環境で航空優勢を確保するために必要な能力と拡張性についての分析を行う必要がある。脅威と共に開発すべき必要な能力を理解することで、F-22の再生産が将来の拡張性と機能要件をどのように満たさないかを理解するのに役立つ。それはF-22の再生産とリソース面で競合する、他の事業を理解する一助にもなる。

   将来の制空能力要件の分析は、空軍参謀総長(CSAF)のAS 2030 ECCTによって実施された。分析に続きCSAFは2016年5月にAS 2030実施計画に署名した。当該資料は「F-22生産再開評価-付録」の添付ファイルに含まれている。AS 2030 ECCTは、2030年以降の高烈度環境において、統合力による制空を可能にする機能要件を開発すべく認可された。CSAFに認可されたECCTは、すべての空軍領域と中核機能のユーザーとオペレーターに、要件、取得、および科学技術(S&T)コミュニティをともにもたらす。これらの専門家は、空軍企業にまたがる現在および新たな能力のギャップを含む運用上のニーズを共同で調査、理解、および定量化を行う。ECCTは空軍の能力開発プロセスの一環として、能力のギャップを完全にまたは部分的に緩和するか、より大きな効果と効率化の機会を提供する可能性のある物理および非物理ソリューションの革新的な多次元オプションを策定および調査する。投資を最適化するには、空軍が統合作戦の要件を確実に満たすために空軍の能力と任務を完全かつ統合的に理解する必要がある。非機密指定のAS2030ECCT実施計画は、この評価の添付ファイルとして含まれており、抜粋は次のセクションに要約されている。

1.2 航空優勢

   制空作戦は空域の制御権を獲得し、敵による制御から遠ざけるような役割を担う。航空優勢とは空域の制御度合いを表し、敵による主導権掌握から我による主導権掌握までの範囲がある。航空優勢は敵軍からの干渉を排除し友好的な作戦を進められるときに達成される。

   現代の軍事作戦では、航空優勢を確保することが成功への重要な前提条件である。航空優勢は襲撃からの自由、攻撃への自由、行動の自由、アクセスの自由、および意識の自由を提供する。重要なことに、我による航空優勢の確保は敵が同様の利点を利用することを排除する。このように、航空優勢は合同軍事作戦全般における友軍の非対称的な優位を提供する。航空優勢の欠如は、資源と人命の損失の両方の観点から統合部隊へのリスクと勝利に至るまでのコストを大幅に増加さる。

   一般的な言説として、航空優勢は戦域全体での全時間的な条件として想定されがちである。しかし高烈度環境ではそのような条件は非現実的で不必要かもしれない。航空優勢は、共同作戦を遂行するのに必要な時間と地理的領域で必要とされる。要求される航空優勢の時空間的な規模は、シナリオ、作戦目的、紛争の段階によって大幅に変化する。したがって、航空優勢についての能力開発は、指揮官にさまざまな期間と地域にわたって部隊を分析するためのオプションを提供する必要がある。

1.3 2030年以降の作戦環境


   2030年以降の作戦環境では、敵による新たに統合されネットワーク化された空対空、地対空、宇宙、およびサイバースペースの脅威、ならびに米国の兵器システム戦力の老朽化および縮小が、必要な時間と場所で航空優勢を提供する米国空軍力を脅かしている。

   脅威能力は、今後15年間で2つの主要な方向性に沿って進歩する可能性がある。1つ目の方向性は伝統的な従来戦力であり、今後も進化しその規模を増大させていく。従来戦力として先進的な戦闘機、センサー、および武器があげられる。今日、ニアピアは先進的な従来戦力の殆どを有しているが、高度な航空/地上脅威は世界中のその他の国にも拡散している。2030年には合衆国の制空戦力は、さまざまな場所やシナリオで規模を増大させたそれら戦力と対峙するだろう。

   2つ目の方向性は、戦争への影響が未知数である一連の包括的な戦力である。これらには、我の宇宙領域での優位を打ち消す脅威能力の向上、高度化し増大するサイバー空間での脅威、極超音速兵器、低観測性を有する巡航ミサイル、洗練された従来の弾道ミサイルシステムなどの経空脅威が含まれる。これらの戦力がいつ、どこで、どのように出現するかは明確ではないが、2030年までに合衆国の制空戦力がこれら脅威の多くに直面することは確かである。

   2030年までに構築された合衆国空軍戦力は、この一連の敵の潜在的な能力によって挑戦されるだろう。2030年の高烈度環境での航空優勢を開発及び確保するためには、マルチドメイン(多次元戦闘)への能力と拡張性に焦点を当てる必要がある。これらの重要な点としては急速に変化する運用環境によって、空軍が従来のアプローチによる線形の取得と開発のタイムラインで兵器システムを開発する余裕がなくなったことを意味する。航空優勢の開発では、S&T、取得、機能要件、および業界の専門家の間のコラボレーションを強化する適応性があり取得性の高いアジャイル手法が必要である。アジャイル手法を採用しない選択肢は無い。従来のアプローチは、敵の進化サイクルが米国の開発速度を優越することを保証してしまう。その結果あらゆる局面で、重要な戦闘能力と技術両面で米軍を優越する敵軍を生み出してしまうだろう。

1.4 2030年以降の環境に要求される能力

   敵対者は高烈度環境でのA2 / AD戦略の一環として、統合されたネットワーク戦力の配備を加速させている。航空優勢によってA2/ADに対抗し、統合部隊の作戦遂行をサポートするために、空軍は空域、宇宙、およびサイバー空間の各領域および全領域で動作する機能体系を開発する必要がある。「銀の弾丸」を提供する単一の機能は存在しない。この機能体系には、作戦を遂行するため統合およびネットワーク化された、スタンドオフ/スタンドインの両方の能力が含まれなければならない。

   装備開発と戦力化速度は航空領域での米国の優位性を維持する上で重要である。技術進歩ペースが加速し続けるにつれて、空軍は実験開発と研究試作を活用して高度な技術をより迅速に軍に反映しなければいけない。さらに、空軍は「次世代」プラットフォームに焦点を当てた思考を捨てなければならない。このような思考は、特定のプログラムの範囲内のみで技術的課題を克服したいという誘惑を生み出すことがよくある。技術の実用化には、研究開発ポートフォリオ内で達成し、効果的な試作作業を通じて証明し、十分に実用段階に成熟させるといった手順が必要である。正式な装備開発でこれらの新規技術の実用化も並行させると、リスクレベルが高まり、コストの増加とスケジュールのずれが発生する。これにより、そのような装備開発はほぼ確定的なパフォーマンスの低下により中止されるリスクがある。その結果、装備について数年または数十年で「必要な時に存在しない」という状況がもたらされる。

   機密指定文章を含むAS2030実施計画は、制空能力体系全体での今後の複数の代替分析(AoA)を統合する。後続の開発計画では、これらの機能開発の取り組みを引き続き改善し、適切に範囲を絞っていく。さらに空軍中核機能についての先導的取組みでは、空軍の戦略的計画およびプログラミングプロセスを通じて、各種の制空能力開発事業への資金割当努力に資する、前倒しされたオプションを開発し、最終的に大統領予算で計上するための長期計画に発展させる。AS 2030での能力開発は、他の空軍作戦領域および運用環境との調整が必要である。

   AS2030実施計画には5つの指定された主要な機能開発領域がある。これらには理論とロジスティクスが含まれる。 捜索、修正、追跡、および評価。 目標と交戦; 指揮と統制; および非物理的要素(戦闘教義、組織、訓練、物資、兵站学、人事、施設、および政策)。以下にF-22の再生産の議論に密接に関係するこれらの8つの開発分野の説明を示す。

   1. データからの意思決定に関する実験。この実験作業では、戦術レベルから作戦レベルでの意思決定に資するためにクラウドセンサーネットワークからのデータをどのように融合させるかを検討する。作業では、データを情報と知識に変換するためのmachine to machineのツール開発が含まれるため、人間は必要な決定を下すことができる。さらにAS 2030の機能体系を統合・ネットワーク化し、ビッグデータ分析を活用するために必要な適切なアーキテクチャを構築するための方法と機会について検討する。

   2. Penetrating Counterair (PCA)。PCAへの取り組みは範囲、ペイロード、生存性、致死性、取得性、および維持管理性の間のトレードオフを最大化することに焦点を当てる。PCAの機能は確かにターゲティングと直接交戦を主任務とするが、ネットワーク内のノードとしても重要な役割を果たし、先行センサーからのデータを提供してスタンドオフまたはスタンドイン兵器の使用を可能にする。この取り組みの一環として空軍はPCAのために2017年に正式なAoAを進める必要がある。このAoAは、必要な時期に必要な機能を提供するように設計されたアジャイル手法の考え方と一致しており、脅威に先んじるために迅速な開発と試作作業を活用するオプションが含まれる。

   3. アジャイル通信技術。アジャイル通信技術の開発では、統合ネットワークの復元力と適応性を高めるための手法を検討する。この開発の焦点は複数のプラットフォーム、兵器、開口部、波形で動作し、高烈度環境下で機能する、応答性が高く適応性のあるネットワークアーキテクチャである。

   4. B-21。敵制空能力への長距離打撃は、航空優勢を獲得・維持するための重要なポイントである。B-21の侵攻能力により、生存可能かつ反復可能な打撃が可能となる。

   5. 電子戦。電子戦能力への取り組みは、AS 2030のスタンドオフ・スタンドイン戦力をサポートする電子戦(即ち、電子攻撃と電子保護)機能の適切な組み合わせを提供することに焦点を当てる。

   6. 搭載兵装。当該領域での開発はプラットフォーム、センサー、および搭載兵装の間に調整可能な余地を残し、活用することに注目する必要がある。特定の兵装開発とプラットフォーム開発は相乗効果を生む。長距離兵装と大容量兵装の両者は、AS2030の機能体系の全体的な有効性を高める。

   7. 機動的かつ知的な敵の打倒に関する実験。当実験では複数領域にわたる最も困難なターゲットの打倒に焦点を当てる。このような目標を達成するには、新しい多次元戦闘のテクノロジーと概念が必要になる。

   8. ゲームチェンジャー技術の追求。指向性エネルギー、極超音速兵器、および自律制御技術は、将来の航空優勢獲得に多大な変革をもたらすかもしれない技術である。これら技術についての空軍ロードマップには当該技術を各種システムに導入するための成熟度と、準備状況を評価するための的を絞った決定基準を定める必要がある。

1.5 AS2030 ECCT による結言

   2030年以降の合同作戦を遂行するために航空優勢を獲得して維持するには、新しいアプローチが必要である。このアプローチとして試験、試作作業、およびアジャイル取得戦略による、戦略的な敏捷性が求められる。この取組みが成功すればこの戦略的な敏捷性は、AS 2030の部隊構造に統合されネットワーク化された一連の機能体系を提供し、将来の指揮官に選択肢を与える。これはスタンドオフ部隊とスタンドイン部隊が協力して希望する時間と場所で効果を発揮し、空軍は2030年以降に航空優勢の獲得によって、共同作戦の遂行を支援するという基本的な責任を果たせるようになる。

1.6 F-15Cの運用期間の延長

   F-15CはF-22よりもA2 / AD環境での能力が劣っているがF-22の調達数削減により、F-15CはF-22による制空能力を補うために運用され続けてきた。F-22の再生産と競合する将来の能力について議論するのと同様に、AS2030実施計画で指定されたF-15運用期間延長についても、将来能力との競合という面で同じことが言える。

   現在進行中の実機疲労試験(FSFT)は、F-15Cを2025年以降に運用するには耐用年数延長プログラム(SLEP)が必要であると示している。SLEPのフェーズ1では、定期的なデポ整備作業で235機のF-15C/Dについて主翼と前胴構造の複数の強力縦通材の両方を換装するだろう。フェーズIの費用見積もりは現在までに研究、開発、テスト、評価として2,920万ドルを計上しており、18年度から19年度の間まで実施され、20年度からは16億6,200万ドルの量産改修予算で、年間約2億5,000万ドルとしている。具体的なF-15C/D SLEPの予算要求は、18年度大統領予算要求で提示される。

   2014年5月の航空戦闘軍団からの耐用年数報告によるとF-15Cを2045年まで運用する必要がある場合は、フェーズIに加えフェーズIIのアップグレードが必要である。フェーズIIの範囲、コスト、および期間は、継続的なFSFTに基づきまだ評価中だが、少なくとも1つのバルクヘッドの交換が必要になる。

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LM案の追憶

ー幻のハイブリッド機とFB-22ー

57



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目次                                                                        ┃
                                   ┃
1.はじめに            ┃  
                   ┃
2.提案までの経緯         ┃
                   ┃
3.LM案の概要            ┃
                   ┃
4.FB-22について          ┃
                   ┃
5.LM案とFB-22          ┃
                 ┃
6.顛末                           ┃
                 ┃
7.不採用理由            ┃
                 ┃
8.おわりに             ┃
                 ┃
9.参考文献             ┃
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【はじめに】

2020年も後半に差しかかり、次期戦闘機(F-X)の開発体制も固まりつつある。10月にも防衛省とMHIが開発契約を結び、F-Xの開発作業が開始される。

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ロッキード案
当イラスト作成者様である 四葉時間 様の許諾を
得て掲載したものであり、無断転載を固く禁ずる
当イラストは日経新聞の取材により公表されたロッキード案のイメージを基に作成され、航空趣味雑誌であるJwingsに掲載されたものである

さて、読者は『F-22とF-35のハイブリッド機』(LM案)を覚えてるだろうか。 
ロッキードより提案され、報道やネットを大きく騒がした機体だが、いつの間にかその姿を消してしまった。

本稿では公開情報と筆者の考察を交え「
LM案の中身及び顛末」を明らかにする。また、LM案と外見上の類似点が指摘される『FB-22』も整理し関係性を見ていく。




【提案までの経緯】

はじめに、LM案がどのような経緯でF-X(当時は将来戦闘機)に提案されたかを確認する。

JWings2019年1月号より転載
23
将来戦闘機に関わる検討とスケジュール

防衛省は26中期防に基づきF-Xの検討(国内開発、国際共同開発、既存機の輸入等)を行っていた。[1][2]
また、その一環として国内外企業へ情報提供依頼(RFI)を発出した。[3]
※RFIは情報収集に過ぎず、これへの回答を以て契約が結ばれるようなことは無い。RFIで得られた情報は方針の決定や入札の実施等に資する。


本稿の焦点となるRFIは2018年6月に出された。
その内容は

『既存機の改修による開発についての情報収集』

である。[3]

米英政府にも文書を送付し防衛省関係者が両政府に出向き、RFIの内容を説明したり、情報提供への協力を要請した。[4]

RFIにはロッキード、ボーイング、BAEの3社が回答を寄越した。このうちロッキードの提案が本稿での『LM案』である[3]




【LM案の概要】

以下にLM案の概要を示す。

47cd7610
日経新聞に掲載されたロッキード案の概要


①機体はF-22をベースに主翼の拡大などを行い行動半
 径を2200kmまで延長する。[5]

②主翼の設計開発・生産はMHIが行う。[5]

③F-22の機体にF-35のレーダなど電子機器を搭載し探
 知能力やネットワーク性を向上する。[5]

③2018年8月時点での提案段階では米国製の機体、エ
 ンジンや戦闘システムを想定する。[5]

④段階的にエンジンの開発生産をIHIに移す。XF9エン
 ジンの搭載や三菱電機製の戦闘システムといった日
 本製機材の採用の拡大も視野に入れる。日本の分担
 比率の50%以上を日本で生産する事を認める。[5]

⑤多くの日本の兵装を搭載する。[6]

⑥機体表面などのステルス技術はF-35の技術を用いて
 整備費の抑制を図る。[5]

⑦機体コストはロッキード社の試算では
   70機生産で1機240億円
 140機生産で1機210億円 [5]


⑧技術開示に関しては読売新聞はF-35のミサイルの制
 御や中枢技術・ソースコードを開示すると報じた。[7]
 しかし、米国防総省はjane's360によるインタビュー
 で開示を否定した。[8]
 その後の他メディアでの報道でも中枢技術の開示は
 否定されている。[9]

防衛省は「米がF-35のソースコードを開示する」という報道について、「報道自体は周知しており、報道内容には濃淡がある。少なくともF-35の全てが開示されるとは承知していない。」と述べている。[3]


⑨実戦配備されていないF-22を試験機として提供する
 日本側が早期にベース機体の特性を理解する事で開
 発期間の短縮を図る。[5]

⑩主翼の変更で超音速巡航ができない可能性がある。[10]

⑪F-22と同様の推力偏向ノズルを搭載する。[10]

⑫機首にEOTSを搭載する。[10]

⑬外見は日経新聞のイラストに酷似する。[10]

medium
ベース機体となるF-22

ロッキードHPより転載
medium
アビオニクスはF-35




【FB-22について】


上に挙げたLM案について、米空軍がかつて検討していた『FB-22』に共通点を見出す声もある。
この章ではFB-22の経過と各案を見ていく。

14

FB-22は、ロッキード社内でのF-22の爆撃能力強化の調査に端を発する。
背景には、爆撃機戦力のギャップや対テロ戦争による長距離爆撃機への注目が挙げられる。
2002年からはFB-22として検討が進められた。[11]

2004年には米空軍が新たな打撃手段(2015年までに間に合う手段)について各企業に情報提供を求め、ロッキードはFB-22を正式に提案した。[11]
※1999年の空軍ロードマップでは、B-2は2037年頃に更新される(2037bomber)としていた。しかし、B-2の生産が少数で終了しこのままでは爆撃機戦力の更新が数十年停滞すると懸念されていた。
そのため、米空軍は早期取得が可能な打撃手段について前述の情報収集を行った。各社からはFB-22、ICBMによる全世界打撃、無人機の活用、B-1Bの改修(B-1R)等が提案・検討された。[12]

当初はF-22の胴体拡張型が検討された。胴体の拡張はコストや重量の観点から問題視され、以後は主翼拡大型が検討の中心となった。[11]

最終的に空軍は2006年の防衛計画見直しで大型爆撃機(NGB)を志向し、そちらの進展によってFB-22はキャンセルされた。
なお、NGBは計画変更でLRS-Bとなり、現在のB-21に繋がる。[13]


FB-22はF/A-22 spiral5も含め合計6つの案が存在する。
資料の都合から各案の情報にばらつきがあるのは了承されたい。[11]


①F/A-22 spiral5
22

原型機(F/A-22)のアビオニクス強化型。側面レーダの追加やネットワーク性能向上が見込まれた。[11]
結局、現実のF-22では実現していない。


②FB-22-1
48

胴体拡張型。航続距離や武器内装能力を強化する。
胴体延長に伴い重量/材料/開発で25~30%のコスト増加が判明し、早期に実現可能性が減少した。[11]
主翼と尾翼はF-22に準ずる。

【武器搭載】
5000ポンドx1、2000ポンドx2(メインベイ内装)


③FB-22-2
01

胴体延長/主翼拡大型。強化内容は22-1と同様。
22-1と同じくコスト面から実現可能性が減少した。
サイドベイにSDB搭載能力を付与。

【武器搭載】
2000ポンドx4(メインベイ内装)
SDB(サイドベイ内装)


④FB-22-3
57
空軍長官の机に置かれた模型(2002年撮影)

主翼拡大型。主翼拡大で航続距離/搭載量を強化する。
胴体はF-22に準ずる。
メインベイ扉の形状変更、サイドベイへのSDB内装、主翼ウェポンベイ増設で搭載量を強化する。

SDBを30発搭載した状態で、2570kmの戦闘行動半径を持つ。12時間以上の滞空が可能。[14]
※戦闘行動半径について飛行条件は不明


⑤FB-22-4
33

主翼拡大型。更に主翼を拡大しストレーキを廃止。

その他の特徴や武器搭載形態は22-3に準じ、搭載量/航続距離は22-3以上と思われる。



⑥FB-22-5
57
FB-22-5の下面部

主翼拡大型。更に主翼を拡大(F-22の3倍)する。
搭載量/航続距離を強化。
主翼ウェポンベイを最大4基まで外装可能。
機動制限は6Gまで。

その他特徴/武器搭載形態は22-3/4に準ずる。

37

以下に航程別/3通りの最大作戦行動半径を記載する。
2730km(185kmをマッハ1.5で飛行した場合)
2915km(92kmをマッハ1.5で飛行した場合)
3365km(全航程を亜音速巡航した場合)

【搭載量】
ステルス形態で15000ポンド、非ステルス形態で最大30000ポンドを搭載可能

5000ポンド(搭載数/搭載形態は不明)

2000ポンドx6(メインベイに計2発内装、主翼ベイ1基につき縦列で2発)
SDBx35(全てのベイに搭載した場合)
[12]


補足(複数案共通点、全て共通するとは限らない)

・アビオニクスはF/A-22 spiral5をベースにする
・進歩したステルス技術を取り入れ、F-22よりステル
 ス性を改善
・複座機
・エンジンノズルはコスト削減から通常のC/Dノズル
 も検討された
・5000ポンドを搭載できる
・自衛用として少なくとも2発のAMRAAMが装備可能
・電子光学システムを装備し、武装のターゲティング
 を可能にする
・超音速巡航能力を備える
・F119の推力増加型もオプションとして存在し、
その
 場合は超音速巡航能力を失う(超音速飛行は可能)
・最高速度はマッハ1.8
・FB-22の価格はF-22の2倍未満(ロッキードの主張)
・FB-22の開発費は75~100億ドル以
(ロッキードの主
 張)
・F-22との共通性により、20年間のLCCは新規開発
 より100億ドル削減できる(ロッキード社の主張)
・F-22の量産試作機をFB-22の試作機として流用し、
 開発期間の短縮を図る
・空軍が無尾翼機を望む場合は、X-44の成果を反映さ
 せる
[12] [15]



【LM案とFB-22】

LM案とFB-22の概要を述べてきたが、本章では両者の関係性について考察を行う。


25
日経新聞に掲載されたLM案の外観

両者の共通点は「F-22の主翼を拡張し能力向上を図る」という点である。しかし両者の細部は相当に異なる。

LM案の機体構成は、ストレーキ+クリップトデルタ翼(尾翼付け根まで延長)であり、FB-22には見られない。FB-22-3及びFB-22-4の中間とも言える。

胴体についてLM案はFB-22と異なり搭載量の増加等は言及されていない。

アビオニクスも、FB-22はF-22のものを流用するのに対し、LM案はF-35(若しくは国産)を想定している。

LM案の行動半径はFB-22より小さい。
しかし、戦闘機と爆撃機では航程の差から行動半径の比較が難しい。
戦闘機動や戦闘時間を鑑みると、両者の航続距離は概ね同程度と考えられる。



両者の関係について、筆者の結論としては以下の通りである。

・LM案はFB-22の手法(主翼拡張)を踏襲
つつ、
    多用途戦闘機寄りにした機体
-ストレーキ, 推力偏向ノズル, EOTSの装備、
-胴体は原型機のまま
-F-35のアビオ流用等

・既存機ベースの提案であり、提案選択肢が
限られて
    いた
-ロッキードの現用機材はF-16/22/35
-F-16とF-35は性能と規模から改造母機には不適
-よってF-22が改造候補にならざるをえない

・航続距離の増加等、FB-22の検討事項が
流用しやす
    かった
-F-22派生型の中では比較的検討が進んでいた
-性能の類似点
-開発時でのF-22量産試作機の流用
 -他社よりも具体的な提案


LM案とFB-22は相当の差異はあれど、LM案の誕生にFB-22が与えた影響は大きいと言えるだろう


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