2019年08月


«アビオニクス関連(2-2)»

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  1. 航空機先進搭載機器システム技術の研究
  2. パイロットワークロード低減アビオニクス技術の研究
  3. 戦闘機用統合火器管制技術の研究 
  4. 将来ミサイル警戒技術に関する研究
  5. 先進RF自己防御シミュレーションの研究
  6. 戦闘機等のミッションシステム・ インテグレーションに関する研究



[航空機先進搭載機器システム技術の研究]

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2010〜2012年

«概要»
航空機のステルス性及び高運動性向上並びにパイロットワークロードの低減を図るための、主要な搭載装備であるアビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究



[パイロットワークロード低減アビオニクス技術の研究]

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58
2010〜2012年

«概要»
航空機のパイロットワークロードの低減を図るための、主要な搭載装備であるアビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究

«補足»
将来の戦闘機はデータリンク等を介して僚機等と連携するとともに、非RFセンサ等を操作制御し、搭載兵装の発射管制を実施することが想定されている。このような状況下で任務達成能力の向上を図るためには、パイロットのワークロードを低減し、状況認識を向上させる必要がある。このために適用可能な表示機器等の要素技術について検討を実施した。

本研究の一環として、防衛航空機用途への適用例のない三次元音響について、基礎的な試験を実施して技術課題を明確化した。

将来の戦闘機の PVI(Pilot Vehicle Interface:パイロット・ビークル・インタフェース)システムとして

①HMD(Helmet Mounted Display:ヘルメッ
 ト・マウント・ディスプレイ)
②音声認識
③三次元音響及び大型HDD(Head Down 
 Display:ヘッド・ダウン・ディスプレイ)

を適用することで、従来の PVI システムに比べて直感的な状況認識を助けることが期待できる。 

そのため、本研究ではこれらを構成する技術の動向について調査を行い、技術課題等を検討した。

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試作された3次元音響装置の概要

いずれの技術についても民生分野での発展が著しく、戦闘機に特有の周囲環境等の課題を除いて実用レベルにあることが分かった。

また、三次元音響装置を製作して静的な音像定位試験を行うことで認識率データの取得を実施した。
53
認識率についてのデータ

これにより三次元音響システムの構築に向けて頭部伝達関数の個人適応等の技術課題があることが確認できた。



[戦闘機用統合火器管制技術の研究]

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54
2012〜2022年(所内試験の期間が延長)

«概要»
地上レーダー等の各種アセットと連接したネットワーク中心の戦闘環境空間において、戦闘機間のセンサ及びウェポンを高速データリンクを介して統合的に管制し、射撃機会の増大及び射撃効率の向上を図る統合火器管制技術についての研究

«背景・目的»
周辺国では第4世代戦闘機の配備が進み、既に数的には劣勢となっている。また、ステルス性を有する第5世代戦闘機の開発・配備も行われている。従来の戦い方ではステルス機や数的劣勢といった状況への対処は困難である。
 
これらへの対処ため、ネットワークを中心とする防空体制構築が必要であり、対ステルス機レーダも含め各種研究が行われている。その中でも戦闘機は将来の防空体制を構築する要素の1つとして位置づけられている。

14
ステルス機を含めた多種多様な
経空脅威に対処する防空体制

「将来の戦闘機の研究開発ビジョン」ではステルス機・数的劣勢を克服する手段として、クラウドシューティングによる戦闘機の情報化・知能化が提唱された。

次世代の戦闘機が第5世代機を上回りかつ対処可能な技術の1つとして、地上レーダー等の各種アセットと連接したネットワーク中心の戦闘環境空間において、戦闘機間のセンサ及びウェポンを高速データリンクを介して統合的に管制し、射撃機会の増大及び射撃効率の向上を図る統合火器管制技術を研究する。

«詳細»
本研究の実施により達成を目指す、戦闘機用統合火器管制技術の特長について以下に述べる。


①ネットワークを用いた外部アセット(地上
 レーダ、AEW等)との連接と情報共有


②僚機間の高速秘匿データリンク

・指向性を持たせたミリ波通信による秘匿性の確保と
 大容量通信の実現

・高精度高出力なビーム制御及び全球覆域による遠方
 までの確達性の確保

11
目標情報の共有を保証する僚機間秘匿データリンク


③統合航跡生成

・僚機間秘匿データリンクを用いて、自機と味方機の
 情報を統合し

・編隊全体で探知した情報として共有

・自機の探知外の目標も探知・射撃が可能

41
統合航跡の生成
編隊内の探知情報を統合し共通の目標情報を共有


④パッシブ測位

・自ら電波を発しないIRSTなどの僚機間の学センサ
 の情報を統合

・パッシブな手段による測距を含めた測位を実施(従
 来はIRSTは方探情報のみの取得であり、測距は不可
 能)

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パッシブ測距の概要
IRセンサを用いた僚機間の三角測量によ
り電波を出さず目標の距離情報を得られる


⑤センサ/シュータ・リソース管理

・統合的な誘導弾の管制発射の支援
・回避判断の支援

42
リソース管理の概要


⑥上記の①〜⑤技術を適用したクラウドシュ
 ーティング

Preferred  Shooter Determinatiom
 ー適切なシュータの決定

 我彼の位置関係等に応じて編隊内の最適なセンサー
 機、シュータを決定

45
Preferred Shooter Determinatonの概要



Precision Cue 
 ―精密照準

 僚機間の測定情報を統合し目標の位置情報の精度を
 向上
 目標の位置情報を取得し走査範囲を局限てその分
 の電力をビームとして照射―より遠距離での高精度
 な測定を可能にする

11
Precision Cue の概要


Launch on Remote
    ―遠隔発射

 シュータと僚機の双方で目標を捕捉・位置情報を照
 合しミサイルの発射と誘導を実施
 高精度な射撃管制が可能

35
Launch on Remote の概要


Engage on Remote
    ―遠隔交戦

 目標の捕捉を僚機に委託しそれを基に発射機がミサ
 イルの射撃及び誘導を実施
 僚機が目標を捕捉していればシュータは目を直接
 探知せずともミサイルの射撃及び誘導が可能

56
Engage on Remote の概要


Forward Pass
 ―誘導権移管(フォワードパス)

 シュータのミサイルの誘導権を僚機に移し僚機が
 ミサイルの中間誘導を継続発射後、シュータは脅威
 から即座に離脱が可能

39
Forward Pass の概要

27
従来のAAMの誘導
ミサイルシーカが作動するまで
発射機が目標を捉え続ける必要がある

ヤマネの森 Livedoor様より転載
29
統合火器管制によるAAMの誘導の変化
僚機がAAMの誘導を担う事で
発射機は速やかに離脱が可能


Remote Fire
    ―遠隔射撃

 シュータはミサイルの発射のみを行い目標の捕捉及
 びミサイルの誘導を完全に僚機に委託する
 発射と射撃管制の分離による任務時の自由度向上や
 シュータはミサイル誘導以外の役割に専念可能

00
Remote Fireの概要


上記①〜⑤の特長を備えた統合火器管制により、空間的に分散している編隊内のセンサやウェポンを僚機間で共有する。編隊内での目標情報を統合的に処理してターゲッティングやミサイル誘導も可能とする。

これにより、生存率を向上しつつの射撃機会の増加、射撃効率及び効果の上昇を図る。

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統合火器管制によって実現する戦闘コンセプト

47
統合火器管制によるクラウドシューティング

これらの実現に向けて、本研究では統合火器管制ソフトウェアを試作し、地上及び飛行試験によりその有効性を確認する。また、近距離高速秘匿データリンクは実際に高い指向性を持つ通信装置を試作し、統合火器管制装置と共に実機に搭載して試験を行う。

55
研究全体の流れ


2010年から所内試験2Aとして開始され、研究試作は2012年から開始された。174億円の総予算のもと、MHIを主契約者として各種研究試作及び試験を行っている。

研究試作(その1)では将来の戦闘機(パッシブ測位機能なし)を対象にしたシステム設計(その1)を行い、それに基づいて統合火器管制ソフトウェア(その1)を設計・製造した。併せて、統合火器管制ソフトウェア(その1)を評価するために必要なシミュレータを既保有のシミュレータを利活用し、整備した。

なお、利活用する既存のシュミレータは先行研究試作である「将来アビオニクスシステムの研究」において試作されたコックピット部などを用いる。

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将来アビオニクスシステムの研究で
試作された簡易コックピットの概要(再掲)

研究試作(その2)では研究試作(その1)を基に、赤外線センサを装備し、パッシブ測位機能を有する戦闘機を想定し、システム設計(その3)を行う。それに基づいて統合火器管制ソフトウェア(その3)を設計・製造を実施した。

統合火器管制の評価を行うシュミレータは以下の要素で構成されている。

1.コックピット表示部
・模擬コックピット部: コックピットを模擬
・映像発生装置: シュミレータ映像を発生
・監視部: 6台の模擬コックピット部の戦闘状
 況を外部から監視

2.統合火器管制部
・戦闘機の模擬
・統合火器管制の実行

3.シュミレーション実行制御部
・戦闘状況の表示
・シュミレーションの実行制御

4.戦域模擬計算部
・早期警戒管制機の模擬
・評価解析

21
シミュレータの概要
最大18機の戦闘機をリアルタイムで模擬可能

 
シミュレーション試験は飛行試験に比して優位性を有している、特異な条件下における数々のシナリオに基づく試験を繰り返し実施することができる。種々の飛行環境での検証を実施するとともに本技術による将来の戦闘機の運用方法を見い出す事が可能である。

シュミレーション試験では主に編隊内で一元的に利用する目標の航跡情報を生成する「統合航跡生成技術」、複雑な僚機間連携を管理し、任務分担などをパイロットに伝達して支援を行う「センサ/シュータ・リソース管理技術」などの技術課題を確認する。

その後、目視外模擬戦闘において統合火器管制技術の有効性を確認するとともに、最も効率的で効果的な戦い方を評価することを目的として実施するものである。

51
シュミレーション時のMFDの画像
データリンクにより編隊内の探知情報を
共有し共通の統合航跡を生成可能である

また、ステルス機の探知に有効な、赤外線センサなどの自ら電磁波等を放射しないパッシブ方式のセンサを搭載した戦闘機が各々取得した目標の方位情報を編隊内で共有し、目標の位置を三角測量により推定する「パッシブ測位技術」についても確立する。

2015年の所内試験では研究試作(その1)の試作品を、統合火器管制ソフトウェア(パッシブ測位機能なし)の有効性について試験し、成果を得た。

2016年の所内試験では研究試作(その2)の試作品を用いてシミュレーション試験をパッシブ測位機能が付与された統合火器管制ソフトウェアの機能の有効性を評価し、将来の新しい戦い方を確立した。

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模擬戦闘試験中のコックピット内の様子

Borozino氏提供
31
模擬戦闘中のMFDの画面



防衛装備庁技術シンポジウム2017・2018では統合火器管制のシミュレーション試験時の動画が公開された。

以下にシミュレーションの様子を記す。

 ❶状況開始
50

IMG_20200223_003409

距離100海里(185km)で数的劣勢条件での空対空戦闘
我側4機青#01〜04)と敵側8機赤#101〜108
我側は統合火器管制と僚機間データリンクを有する
敵側は統合火器管制を有さない

前列#01#02はシュータ機、後列#03#04はセンサ機
として我側は散開する



❷射撃開始
IMG_20200223_161742

27

我・敵共に互いを探知し、射撃を開始

我側
#01#103#104#107に1発ずつ計3発を発射
#02#101#105#106に1発ずつ計3発を発射

敵側
#102#103#104#108#01に1発ずつ計4発を発射
#101#106#02に1発ずつ計2発を発射

#102#108のミサイルは早期に誘導を喪失する


❸前列の離脱
47

我側
#01#02は誘導弾を発射後、速やかに離脱。ミサイルの
誘導は後列がデータリンクを用いて継続する。


❹前列と後列の入れ替り
13

我側
#01#02は離脱し後列に移る。ミサイルの誘導を引き継いだ#03#04前列になり前列と後列が入れ替る。

❷での#02のミサイルが#101に命中する。

敵側
#103が❷で発射したミサイルは命中せず。
#102#105#107がそれぞれ#03#02#01対しミサイルを
発射



❺敵編隊の撃破
IMG_20200223_003732

我側は❷でのミサイルで#101#103#104#105#107
撃破した。#106には命中せず。
敵側は❹までのミサイルを全て外す。

我側
#03#102#108に1発ずつ計2発を発射
#04#106に1発を発射 #106に命中

敵側
#102#04に1発を発射
#108#03に2発を発射 そのうち1発は誘導を喪失



統合火器管制の実現には、僚機間の高速秘匿データリンクが必要である。研究試作(その3)以降ではミリ波を用いた通信用の空中線の試作と試験を行う。

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ミリ波を用いた僚機間秘匿データリンクの概要

ミリ波通信技術は情報通信技術研究機構(NICT)とMELCOが共同で開発した大容量通信技術を活用する。当技術は双方向通信かつ、ミリ波帯(40GHz)での大容量通信(100Mbps)やアンテナのAPAA化でのビームの電子制御により、機体姿勢に追従しての指向性を持たせた通信が特長である。

アンテナの高性能化、移動体(航空機)に搭載するための装置の小型化・軽量化、航空機の姿勢に追従して電波の放射方向を高速に制御するアンテナ制御技術などを実証している。
19
NICTとMELCOが共同開発したミリ波帯大容量通信技術

防衛用途に応用するにあたり、以下の防衛特有の事項について技術的な検討を行う必要がある。

(1)民間において実証研究に用いた機体と比較して、より機体規模の小さい戦闘機へ搭載するための小型・軽量化及び限られたスペースへの搭載に際して他の電子機器との干渉防止

(2)民間において実証された通信距離と比較して、より遠方での戦闘機の統合火器管制に必要な大容量のデータ通信を確立するためのアンテナや素子の更なる高性能化

(3)民間において実証された定常飛行もしくは緩やかな機動をする移動局(航空機)と固定局(地上)と異なり、高速飛行かつ高機動する戦闘機と戦闘機間において、安定した通信を確保するための、データリンクのビーム制御技術の確立


研究試作(その3)では飛行実証用データリンク装置のシステム設計が行われ、試験用の空中線が試作された。以下に試作された通信用の空中線の概要を述べる。

1.ハードウェア

・小型高出力/広覆域のミリ波空中線
・APAA方式空中線
・SiGeを用いた16x16素子の空中線

42
小型高出力広覆域、APAAによるビーム制御が特徴

みりフレ氏提供
35
試作空中線の概要

2.ソフトウェア

・機体の機動に応じて適切に、APAA空中線の
 通信用電波のビームを指向する高精度ビー
 ム指向制御

・確実なオーバーラップ制御

00
高精度なビーム制御技術

地上試験では最初に、試作された空中線の送信出力の大きさを測定した。結果、設計目標を上回る従来品の2倍近くの送信出力を確認した。

送信出力の確認後は空中線とビーム制御技術の統合が目指された。

34
試作空中線の送信出力の試験結果
従来品の2倍近い出力を確認

みりフレ氏提供
04
試作空中線とビーム制御技術の統合
回転台に載せられた空中線同士の
ビーム制御について試験された事が読み取れる


実際の飛行環境下では水蒸気による減衰などの影響を受けてデータリンクの到達距離が短くなる。激しく動く戦闘機においてはデータリンクのビーム制御の追従性が悪くなったりする。

そのため、地上試験後はF-2及びT-4に飛行実証用の機体改修を実施する。統合火器管制技術及び僚機間秘匿データリンク技術を実際の飛行環境化での有効性を確認する。実際にネットワーク射撃を実施する計画である。


 飛行実証にあたっては

・飛行実証用統合火器管制処理装置
・飛行実証用データリンク装置
・光学センサ
・テレメトリ機能付き実証用誘導弾
・試験用搭載機器(インターフェースボック
 ス及びGPS/IMU)
・搭載母機改修(F-2及びT-4)

の設計と製造が予定されている。

59
飛行実証試験での機体改修の概要

52
T-4とF-2を用いた僚機間秘匿データリンクの試験

2019年11月時点では

・試験搭載用機器の製造
・飛行実証用データリンク装置(電源部・空
 中線用電源部)の製造
・飛行実証用データリンク装置の設計
・空中線(搭載用)の設計
・搭載母機改修の細部設計(F-2)

までの進捗が確認されている。

2021年6月までに飛行実証用搭載装置の製造と、飛行実証用機としてF-2/T-4の改修を行う。


«まとめ»
ネットワーク戦闘を特長とする戦闘構想の実現のために、ミリ波帯の大容量通信技術や統合火器管制技術の研究をおこなっている。




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«機体構造関連(2-2)»
47
  1. シート型・塗料型電波吸収体の研究
  2. ステルス化のための複合材、FSSの基礎的検討
  3. アクティブ電波反射制御技術
  4. ステルス戦闘機用レドームに関する研究
  5. プラズマステルスアンテナ技術の研究
[シート型・塗料型電波吸収体の研究]

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53
2011〜2012年


«概要»
 戦闘機のステルス性の向上に必要な厳しい耐環境性と吸収性能を持つ電波吸収体(RAM: Radar Absorbing Material)に関する研究


«背景・目的»
 現在、飛躍的に進化したレーダから隠れるため戦闘機にはステルス性の向上が求められており、形状ステルスと電波吸収体の両面から研究が必要となる。


«詳細»
 本研究では、カーボン系材料を用いたシート型・塗料型電波吸収体の特別研究を実施し、RAMの電波吸収効果のシミュレーション及び解析、適用箇所の最適化、各種耐環境性試験等を行った。


 2011年は施工性がよいシート形状の2層構成の電波吸収体を製作して高帯域化を図った。また、耐候性試験や剥離性試験、電波吸収特性の温度依存性試験等を実施して、戦闘機プラットフォームへの適用について検討した。


 2012年には形状ステルスが施された戦闘機のギャップミスマッチ(機体構造の隙間)等への適用が期待される塗料タイプの電波吸収体について研究が進められた。以下にRAMの航空機適用に向けた各種耐環境試験の画像を挙げる。

55
柔軟性試験

37
燃焼性試験

47
振動試験



耐環境試験の結果、試作したRAMがMIL規格(MILitary Standard:米軍が使用する物資、装備品などの規格)の15項目に適合していることを確認した。
 
 上記のRAMの設計試作と並行して、RAM適用効果のシミュレーションと解析が行われた。RAMの適用箇所の最適化、その効果について、シミュレーション及び解析を実施した。

28
RAMの適用検討箇所


 特にインテークダクト及びエンジンについては、インテークダクト及びエンジンにおけるレーダ反射断面積の低減」という名目で、適切な部位への電波吸収体の適用による RCSの低減に関する研究もなされた。


 該当研究では、少ない反射回数でエンジンへ電波が到達し、電波吸収体が効率的に機能しない浅い入射角の電波における反射強度の低減が目指された。また、エンジンからの反射低減も含めた以上2点がRCS低減の課題となった。

05
ストレートダクトをモデル
した電波入射角による反射回数の差
反射回数が少ないとRAMによる反射
電波の吸収が不十分になる

※本研究でストレートダクトをモデルとした背景として、専用のレーダブロッカ不要かつ、曲がりダクトに比して空力的にも優れたシンプルな構造で確かなステルス性の確保を研究の狙いにした事が挙げられる。
 
 課題解決のため先に挙げた、カーボン系材料を用いた広帯域にわたるRCS低減と浅い電波入射角に対応し、耐環境性を有するRAMの設計・検討を行った。


 インテーク部に関しては、インテーク前部にRAMを適用しRCSの低減を図った。エンジンからの反射波に対しては、エンジン性能への影響が少ない IGV(入口案内翼)、最前静翼及びファンケースにRAMの適用を検討した。


 電磁界解析において、正面方向近傍における全金属との差では、各種レーダに用いられる周波数帯域で電波吸収体による RCS 低減効果が得られた。このRCS低減量は、脅威レーダの探知距離を半分程度に減らす効果があることを確認した。

43
RAM適用前と適用後のRCSの差



«まとめ»
 戦闘機のステルス化に必要な各種性能を備えたRAMを詩作し、RAM適用箇所のシミュレーション及び解析を行い、戦闘機のステルス化に関する知見を得た。






[ステルス化のための複合材、FSSの基礎的検討]

45
2013年(発表年)



«概要»
 CFRPやGFRPといった複合材や特定の周波数だけを透過させる周波数選択性をもつ、FSS・MEFSSを用いた基礎的構造(平板、半円筒)における電波特性を確認する研究。


«背景・目的»
 昨今の装備品にはステルス化が要求されている。近年はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)・GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)といった複合材や、FSS・MEFSSのような周波数選択性をもつ構造材が出現してきた。


 装備品のステルス化のためにこれら構造材の電波特性を把握し、実用化のための設計、製作上における技術資料を得ることを目指す。

29
FSSを適用した航空機用レドームの例
自機レーダの電波は透過させつつ相手レーダ
電波はアンテナへの到来を防ぎ、受信方向と
は異なる向きに反射させ探知を防ぐ



«詳細»
 CFRP・GFRP・FSS・MEFSSの電波特性を解明するために基礎的構造及びレドームとアンテナを模擬した平板、半円筒を製作し、電波透過特性、電波反射特性の計測を行った。

45
試作された平板、半円筒、FSSパターン



 実験ではCFRP は金属同様の特性を示し、GFRP では電波が透過することを確認した。また、GFRP に FSS を付けると、周波数選択性によりハイパスフィルタ性能を示す。


 レドーム(半円筒)とアンテナを模擬した系においては、周期的な周波数特性を持つことがわかった。MEFSS においては、FSS と比較し高い Q 値を示し、優れたバンドパスフィルタの性能をもつことを確認した。


38
FSS 付平板の電波反射特性

 2018年の防衛技術シンポジウムの電子装備研究所のパンフレットではFSSを用いた、レドームを模した円錐形の仮作品が掲載された。

43
仮作品の概要



«まとめ»
 本研究成果より、複合材、FSS を使用したステルス化構造・材料への適用が可能となる見通しが得られた。




[アクティブ電波反射制御技術]

02
2015年(発表年)

※ここではメタマテリアルを用いたステルス技術も合わせて解説する。


«概要»
 形状ステルスや電波吸収剤といったステルス技術を補完する、航空機のアンテナ部のステルス化に向けて、メタマテリアル技術を適用したアクティブ電波反射制御に関する研究







«前史»
 本研究のキーワードであるメタマテリアルについて述べる。メタマテリアルは、自然界には存在しない人工媒質である。


・ 金属、誘電体等の小片からなる単位素子 
・波長に比べ十分小さい間隔で並べて構成 
・元の物質、材料とは異なる電気的・磁気的
 性質な特性


などの特徴を有する。メタマテリアルは反射の法則(入射角=反射角)に従わない性質を有させることも可能である。この特性を利用して反射方向を制御する事も可能である。
※反射角を制御し敵レーダーに反射波のピークを受信させないという点では、形状ステルスと手法は同一である


 メタマテリアルを用いた空中線部のステルス化は、2011年の防衛シンポジウムで成果が発表されているのが確認されている。この時の研究内容はメタマテリアルを用いて、反射波の位相を制御し反射波の方向を変えるというものであった。

53
メタマテリアルの概要1
導体パッチの幅や間隔を
変化させる事で反射方向の制御が可能である

11
メタマテリアルの概要2


 メタマテリアルを用いて反射波の方向を変える研究では、2種類の仮作基板を製作した。
基板毎に構造や反射波制御方向が異なり、以下にその概要を示す。

34
仮作基板#1

12
仮作基板#2


 各基板のRCSの測定では反射波の方向が設計通りに制御できている事を確認し、RCSの低減に資するものということが実証された。

24
反射波方向の制御の結果:仮作基板#1
反射波方向を変えることで受信側に
RCSのピークを受信させない事が可能である

07
反射波方向の制御の結果:仮作基板#2
こちらはより広い帯域でのRCSの低減が図られている


 メタマテリアルによる反射方向の制御について述べたが、この他にも電波吸収型や電波散乱型など異なる性質をもつメタマテリアルが研究・試作されている。


 ステルス性以外にも周波数選択性などの機能を付与する事が可能であるため混信、干渉及びマルチパス等による障害を抑圧して、航空機の安全性向上を図る事も期待されている。


 そのため、民間向けのアンテナ用レドームの適用を目指して、MELCOが経済産業省の委託を受け研究が進められている。先述の周波数選択性を持つFSS構造にもメタマテリアルが適応されている。

23
防衛技術シンポジウム2015で
展示された各種メタマテリアルの画像

33
周波数選択性を持つメタマテリアルを
用いたレドーム(経済産業省の資料より)

※防衛分野にも航空機のレーダ、通信機器のアンテナ、レドーム等の表面材として、本技術を応用した機器の事業化が期待されるとある(同資料内より)




«背景・目的»
 戦闘機の低RCS化技術には大きく形状ステルスと材料ステルスに分類できる。形状ステルスは電波の反射方向の制御と反射部位の局限が主眼であり、材料ステルスはRAMなどが相当し反射量を抑え形状ステルスを補完する。

ひびき氏のツイートより転載
59
低RCS技術の構成要素

02
X-2の形状ステルスとRAMによる材料ステルス



 しかし空中線部は遠距離まで電波を放射する必要があるため、アンテナ特性へ影響を与える形状の工夫や電波を吸収・減衰させるRAMは適応できない。現在、アンテナ開口面のステルス化は、傾斜取付け、埋め込み式と周波数選択レドーム等により対策されているが、アンテナ特性への影響が無視できない。


 そこで、アンテナ特性に影響を与えずにステルス性を得る技術として、メタマテリアルを用いた反射波の周波数を欺瞞可能なアクティブ電波反射制御技術を実施する必要があった。
※戦闘機のレーダーは反射波の周波数変化から目標の相対速度変化と距離を捉える、パルス・ドップラ式を採用している。反射波の周波数の欺瞞は正常な相対速度や距離の取得を妨げる効果がある。


«詳細»

 先述の通りアクティブ電波反射制御は反射波の周波数を制御する事により、周波数を欺瞞し正確な相対速度の取得を妨げかつRCSの低減を図る技術である。


 原理としてはパッチアレイとアクティブ素子を用いて、到来波の反射位相を時間的に 180°変化させて反射周波数を変更する。これにより、脅威側のレーダのドップラ処理に対して周波数軸上で信号をシフトさせ RCS の低減を図るものである。


 構造としてはパッチアレイ配列及びそれらのパッチを接続する PIN ダイオードを配したアクティブ層と、裏面の金属反射板(地板)、構造維持層からなる。

02
アクティブ制御板の構造



 反射制御に関してはアクティブ層の PIN ダイオードの ON、OFF 時の電波反射特性の違いにより反射周波数を制御する。PIN ダイオードを ON にした場合は、パッチ配列は金属線のようになる。


 OFF にした場合、ダイポール形状のパッチアレイのみとなる。OFF 時に透過した電波は、アクティブ層の透過位相及び裏面金属との経路長により、ON 時の表面反射と比較して 180°の位相遅れが生じる。

02
アクティブ層と地板の断面図
※改めて解説を行うとPINダイオードに電流が流れる(ON時)とダイオードとパッチアレイからなるアクティブ層は金属板の様な反射特性を有しアクティブ層で反射が起こる。PINダイオードに電流が流れない(OFF時)と入射波はアクティブ層を透過し、地板で反射する。OFF時の透過経路の差から180℃の位相遅れが発生する。



 この 180°の位相差を時間的に切り替えることで、二値の位相変調がなされ、反射波が周波数軸上でシフトする。この周波数軸上の信号シフトにより、脅威レーダの捕捉するドップラ周波数ゲートの帯域外へ信号をシフトさせることで、低被観測性が得られる。

19
空対空レーダーの概略
メインローブを用いて捜索を行う

46
位相差による位相変調を用いたアクティブ電波反射制御
反射波の周波数を変化させる

03
緑色帯域が敵戦闘機レーダーの対応帯域

※信号強度の高い反射波の周波数を位相変調により対応帯域外にシフトさせ、レーダーに目標からの反射波と認識させる事を防ぐ。対応帯域での信号強度を抑え、低RCS性も実現する。

52
目標の速度と距離の算出

※本来は、最も信号強度の大きい目標の反射波からの周波数変化を速度と距離の算出に用いるが、位相変調による周波数のシフトで正しい周波数変化の探知を防ぐ。反射波を捉えても正確な距離と速度の算出を妨害する。


 試験の結果、ON・OFFの切り替えにより位相の切り替え・任意に周波数をシフトできる事や20dB以上のRCSの削減に効果がある事が判明した。アクティブ電波反射技術の適用箇所としてはレーダーアンテナの支持構造としての活用が想定されている。

38
試験結果1


33
試験結果2

ひびき氏のツイートより転載
03
レーダーアンテナの支持構造としての適用例



«まとめ»
 空中線部の低RCS化に有効な、メタマテリアルを用いたアクティブ電波反射技術の実現可能性に関する研究を行っている。


 制御技術による周波数のシフトは有事における低RCS性や正確な距離・速度の取得の妨害だけでなく、平時でのステルス機の正確な情報の取得を妨害するという点でも有意義である。

02
アクティブ電波反射技術の平時と有事の利点





[ステルス戦闘機用レドームに関する研究]

08
05
2015〜2020年


«概要»
 戦闘機のステルス化を追求する上で必須となる、低被探知性を考慮した複雑形状のレドームについて研究するとともに、当該レドームと搭載レーダ等との適合化技術についての研究


«背景・目的»
 将来の戦闘機にはステルス性が要求されている。レーダを防護するレドームにもエッジをもつ複雑な形状による形状ステルスが必要となる。


 また、近年のレーダ技術の発展で高出力化や広覆域化、電子戦能力の付与による広帯域化も進んでいる。レドームはレーダの性能を最大化し、それらに対応する良好な電波特性を持つ事も要求される。


 更に戦闘機の超音速巡航も想定すると機首は空力加熱で従来よりも加熱されるため高い耐熱性が必要で有り、高温でも対風圧などに耐えられる強度及び雨の中を飛行するときの耐降雨性等の環境性能にも優れる必要がある。


 日本はF-2の開発以降は新規に戦闘機用レドームを開発した実績がない。F-2の開発において作成した戦闘機用レドームは、曲面形状の従来型レドームであり、敵機等が放射したレーダ波を到来方向以外に反射するステルス性を有していない。また、近年の高出力、広帯域の我のレーダ波を減衰無く透過させる良好な電気特性を有していない。

14
F-2のレドーム


 将来の空戦における優位性を確保するためにも、ステルス性や電波特性、耐環境性にも優れたステルス機用レドームの研究を行う必要がある。


«詳細»
 60.8億円の総予算のもと、MHIを主契約者として2015〜2020年まで、ステルス戦闘機用レドームの研究試作を行っている。
 ステルス戦闘機用レドームの技術的課題については以下の内容が挙げられる。


①複雑形状技術
・電波の反射方向を変化可能な形状ステルス
 技術
・ステルス形状に伴う、外形において平面形
 状間の接合部などの複雑構造部


②耐環境性技術

・超音速巡航での従来より高い空力加熱を想
 定した高耐熱性
・高温時での対風圧を想定した強度
・雨天中の飛行を想定した耐降雨性、耐雷性


③電波適合性技術
・レーダの高出力、広帯域及び広覆域電波を
 想定したレドーム
・レドーム内反射、レドーム透過に伴うアン
 テナパターン崩れ等によるシステム性能の
 低下を局限可能なレドーム


④レドーム関連技術
・レドームの低RCS化に関する研究


44ステルス戦闘機用レドームの概要

33
メタマテリアルを使用したレドーム
2010年時点ではメタマテリアルの適用が期待されていた


※これまでにレドーム向け技術として周波数選択性をもつメタマテリアルを用いたMEFSS構造を解説した。しかし、2019年7月時点では当研究にどのような技術が用いられているかを明記する資料がまだ存在しないため、どのような構造技術が使われているかは不明である。


 研究試作では上記特性を有するレドームを試作し、製造に関する知見を得る見込みである。試作内容としては機首レドームと、主翼前縁のESM用アンテナである。


 また、「多機能RFセンサの研究試作」など、防衛省においてこれまで実施してきたレドームに係る研究事業の成果を反映すると共に、既存事業のアンテナ等を官給して活用するなどにより、効率的な研究を実施する予定である。

01
試作レドームの概要


 所内試験では実際に既存戦闘機を改修し、搭載して試験をするのではなく、地上において試験設備を使用して、様々な条件下での試験を繰り返し実施することで、効率的な試験を実施すると共に研究経費の抑制を図る計画としている。


«まとめ»
 将来の空戦での優位性に資する目的としてステルス性、電波特性及び耐環境性に優れる戦闘機用レドームを試作している。2020年までに所内試験を終える予定である。



«コラム:機械走査式のAESAレーダとかその他色々»
 AESAに代表されるフェイズドアレイレーダの特徴として、位相制御による電子走査が挙げられる。素子アンテナの発信のタイミングを電子的に制御することで、ビームの指向方向を変化させられる。利点として下画像のような点が挙げられる。


 スロットアレイを用いた従来のアンテナは電子的にビーム指向方向を変えられない。そのため、アンテナを物理的に機械走査して目標の捜索・追尾を行っていた。


50
APAA(AESA)の特長

※APAAとAESAは厳密な意味は違うがここではほぼ同じものとして扱う。

12
機械走査式のAN/APG-63
板状のアンテナを可動させ走査を行う


 機械走査を必要としないのがAPAAの特長であったが、近年は機械走査とAPAAによる電子走査を組み合わせたレーダが登場している。具体的にはJAS-39E/FのRaven ES-05や、EF-2000のトランシェ3から装備が始まるCAPTOR-Eが該当する。


 メリットとしてはAPAAを機械走査で傾ける事により、走査可能覆域が大幅に増加する事が挙げられる。覆域の拡大は敵機の早期発見や射撃機会の増加に繋がる。





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Raven ES-05
空中線の根本のジンバル機構により
一定角度内で任意の方向に空中線を指向可能である

具体的な動作イメージとしては当動画を参考
(CAPTOR-Eの動作イメージ)

36
(赤色)固定式APAAと(緑色)機械走査併用APAA
との覆域の比較 最大で真横以後も捜索可能


 機械走査式のAPAAを突如として取り上げたのは理由がある。それは将来戦闘機のレーダとして機械走査式APAAが使われる「かも」しれないからである。


 但し根拠は弱い。先の「ステルス戦闘機用レドーム」や「小型熱移送システム」でのポンチ絵が、空中線に機械走査を併用する事を想定しているように解釈が出来なくも無い 程度である。

15
VCSの研究でのポンチ絵
ジンバル機構らしき構造が見えなくもない?


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先程のレドームのポンチ絵

※空中線の構造がジンバル機構に類似?また、ピンク色の矢印が空中線の可動を表している?研究で広覆域への対応が明記されてるのもそのため?
このように非常に資料性に欠ける推測である。


 また、機械式と電子式の併用はメリットだけでなく当然デメリットも存在する。


 以下に考えられるデメリットを挙げる。ほぼ全てが可動部の追加を起因とする。


①信頼性の悪化
可動部を廃し、信頼性を向上させたのがAPAAである。可動部の再追加は信頼性の悪化に繋がる。


②設計難度の上昇
可動部の追加により、可動時でも冷却・電気系統が健全に作動するように配慮する必要がある。レドーム内は地上の真夏の高温や上空の極低温などの過酷な条件でも健全に作動する、優れた対環境性を有する設計が必要。


③コストの上昇
上記を満たす設計は当然コストに反映される。


④機首スペースの圧迫
可動部の追加は電気系統や冷却系統が配されている機首部のスペースを圧迫する。


⑤整備性の悪化

可動部の追加は構造の複雑化や点検箇所の増加を招く。機首スペースが圧迫されるためアクセス性も悪化する。



 覆域を広げる手段として、機首側面にスマートスキンを配するという事例も存在する。日本でもスマートスキンは研究されており、戦闘機への適応例としては露国のSu-57が挙げられる。機首の左右側面に側面象限監視用の固定レーダを配している。


 可動部がないため信頼性は向上するほか、機械式併用より更に広い覆域を実現し常に側面象限を監視できるメリットがある。

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Su-57の機首側面レーダ



 但し、こちらも同様にデメリットも存在する。以下に考えられる例を挙げる。


①機首スペースの圧迫
左右側面に側面用スマートスキンを廃するため機首スペースが圧迫される。


②コストの上昇
単純に警戒用の空中線が増えることによりコストが増加する。


③整備性の悪化
機首スペースの圧迫によるアクセス性の悪化。
可動部が無いという利点は持つ。


④スマートスキンの面積と性能の制限
スマートスキンは空中線の面積から機首レーダに比べ探知距離が劣る。一部覆域では機械式の併用とくらべ探知距離に劣る。



 結論としては真横以後をレーダで警戒しようとすると手法に関わらずデメリットは発生するということである。


 F-35の場合、機械式の併用やスマートスキンは有していないが、EO-DASという全周赤外線警戒装置を有する。EO-DASからの情報を用いてSRAAMの射撃も可能であり、高度なソフトウェアの構築というデメリットもあるが、真横以後の警戒に関する各国の思想の違いが見える。


 ここから話を広げていきたいが、あくまで将来戦闘機が機械走査と併用したAPAAを採用するかも?から派生する話が主題であり、採用が確定している訳でも無いのでここらへんで終了する。
 


[プラズマステルスアンテナ技術の研究]

45
2018年(発表年)

※当研究以前のプラズマを用いたステルス技術の検討についてもここで解説を行う。


«概要»
 戦闘機の高ステルス化に資する、従来のアンテナ形状のままでステルス性を得るプラズマステルスアンテナ技術について研究を行う。



«背景・目的»
 キーワードとなるプラズマについて性質を述べる。物質の状態は基本的には個体、液体、気体に分類される。しかし、物質によって異なるがある一定の温度と圧力になると気体からプラズマへと変化する。


 気体は気体を構成する分子が自由に飛び回っている状態を指す。だがプラズマに変化すると気体分子が持つ電子さえも自由に飛び回りる。マイナスの電荷をもつ自由電子と、分子は電子の放出により陽イオンと化し両方が空間内を自由に飛び回る不安定な状態となる。身近なプラズマの例としてはオーロラや蛍光灯の点灯時の内部などが挙げられる。

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物質の相変化
赤が分子で黄色が電子



 プラズマは物質として特異な状態であり、現にプラズマの一種である電離層は、特定周波数反射し特定周波数は屈折させるという性質を持っている。


 装備品のステルス化への適応を検討するため、プラズマの電気特性を把握する必要があった。

00
地球上空にある電離層の概要


 プラズマを用いたステルス技術の実験的検討に関しては、2010年の防衛技術シンポジウムで発表されている。この時はプラズマを、周波数制御可能なアクティブ電波吸収体としての可能性を蛍光灯を対象にした実験で検証した。


 実験の結果、プラズマが電波吸収体の機能を有すると共に、周波数特性の制御ができるアクティブ電波吸収体の可能性に対する目途がついた。

39
蛍光灯を対象にしたプラズマの
電波反射特性の取得に関する実験



 本題であるプラズマステルスアンテナ技術について述べる。先述の通り、戦闘機のステルス化には形状ステルスと材料ステルスが存在する。戦闘機の通信用のアンテナのステルス化は機体に埋め込むことにより、ステルス化が図られている。他方で、構造や制御の煩雑化が課題となっている。


 そこでプラズマを用いて、従来のアンテナ形状のままでステルス性を得るプラズマステルスアンテナ技術について、検討を行う運びになった。

59
低RCS化を構成する各種低観測化技術
ここではプラズマを用いた手法について述べる

36
アンテナのステルス化について



«詳細»
 電気的な制御による物性の変更が可能で
あるプラズマの特性を利用して仮作したプラズマステルスアンテナについて、通信用アンテナとしての動作及び到来レーダ波に対する反射量低減に関する検討を行うことを目的とした。


 以下にプラズマステルスアンテナの概要及び原理を示す。


 本研究で仮作したプラズマステルスアンテナは、アルゴンと水銀の混合ガスを封入したガラス管等からなる放電管、プラズマ励起用高圧電源及びRF信号印加部からなる回路により構成される。アンテナの形状としては、水平面内において無指向のブレード型を採用している。

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アンテナカバー
水平面に無指向性のブレード型

44
アンテナ本体
アンテナカバーの内部に配置
内部にはアルゴンと水銀の混合ガスが封入され、
強度の面からガラス管からGFRPに変更されている

10
アンテナカバーとアンテナ

10
プラズマステルスアンテナの構造


 原理について述べる。


 プラズマは励起時(電源ON時)は電波に対し金属もしくは誘電体のように振る舞い、敵レーダなどからの電波を反射する。しかし非励起時(電源OFF時)は単純な誘電体となるためレーダ電波を透過する。


 アンテナの非使用時は電源OFFにする事で敵電波を透過させる。通信時に必要な時だけ電源ONにし、通信を行い電波の反射時間の局限を図る。これが基本的な性質である。

04
プラズマステルスアンテナを用いた低探知技術

23
プラズマアンテナの原理
励起時は通信電波に対し金属のように
振る舞うためアンテナとして使用可能である

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アンテナ動作中のプラズマアンテナ


 また、プラズマは電流により励起すると以下のような性質を持つ。


・プラズマ周波数より低い周波数の電波に対
 しては金属のように振る舞う
・プラズマ周波数より高い周波数の電波に対
 しては誘電体のように振る舞う


 これを利用する事でプラズマ周波数を敵レーダ周波数より低くすることで、プラズマアンテナは敵レーダ波に対し誘電体のように振る舞う。誘電体は金属ほど電波を反射しないためRCSの低減に繋がる。

43
プラズマ周波数の性質

 試験ではプラズマアンテナが正常なアンテナ特性を有していることや、電源ON/OFF状態でのRCSの低減を確認した。




51
プラズマアンテナのアンテナ特性

46
RCSの低減効果



«まとめ»
 励起による物性の変化を用いたプラズマステルスアンテナの研究試作を実施し、正常なアンテナ特性やRCSの低減に関する効果を確認した。








«アビオニクス関連(1-2)»

27
  1. 戦闘機搭載用IRST装置の開発
  2. 2波長赤外線センサ技術の研究
  3. 将来航空機基礎技術の研究(航空電子統合化の研究)
  4. 将来アビオニクスシステムの研究
  5. 航空機先進装備システムの研究
  6. 航空機先進装備技術の研究
  7. 航空機先進搭載機器技術の研究




[戦闘機搭載用IRST装置の開発]

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08
1997〜2010年

※本研究は将来戦闘機に向けてというよりはF-15の近代化改修への反映と戦闘機用IRST技術の蓄積を図ったものである。しかし、後述する将来戦闘機への反映を目指す先進統合センサ・システムではIRSTの使用が念頭にあるため国産IRST技術として合わせて解説する。


«概要»
    F-15近代化改修機に搭載し、電子戦環境下等における火器管制レーダの探知性能等の低下を補完し目標の探知、追尾のみならず搭載空対空ミサイルの射撃管制に使用する戦闘機搭載用IRST(Infra-red Search and Track (火器管制用)赤外線捜索追尾装置)装置を開発する。

«背景・目的»
 防空戦闘においては、航空機の電子戦能力の向上及びステルス化により対処すべき脅威が多様化及び増大化しつつある。

 このため、将来の戦闘様相に対する対処能力の向上を図るためには、火器管制レーダの探知性能等の低下を補完するとともに使用の局限を可能とする戦闘機搭載用IRST装置を開発する。

 代替品としては、仏国のラファールに搭載のOSF、欧州のユーロファイター搭載のPIRATEが考えられるが、いずれも装置の形状が、F-15近代化機の機首部分の搭載可能なスペースに収まらず、大幅なF-15の再設計が求められるため、コスト、性能の面で妥当ではないとされている。

48
戦闘機搭載用IRSTの想定運用構想

    開発したIRSTはF-15の近代化改修におけるレーダの換装に伴って生ずる機首部分の空きスペースに内装を行う。

«詳細»
  まず、「戦闘機用IRST装置の開発」の開発予算化の前に、開発に向けての事前研究として三菱電機を主契約者となり1997年から2001年にかけて研究試作を実施した。技術研究本部を中心に官民一体となって、設計・製造にあたった。

 研究試作は、3〜5μm帯及び8〜10μm の2波長帯を検出波長帯とし、試験母機の左内舷パイロンに搭載するポッドシステムを試作した。情報は母機のHDD(VSD)及びHUDに表示した。

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F-15J 801号機の左翼内弦
イロンに搭載されたポッド型IRST
※正確には試作されたポッド型IRSTそのものでは無く、ポッド型IRSTを流用・改造して製作されたUV/IR光源計測システムである。

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上記画像のUV/IR光源計測システムの概要
改造の結果、紫外線・可視カメラや各種装置が増設
※当該装置は航空機・ミサイル・フレア・背景などの光波電子線情報の収集用として、改造・開発されたものである。


 また、研究を通し航空機が発する中赤外線及び遠赤外線の実環境データを各種条件ごとに体系的に収集するとともに、基本的な性能・諸元に関して諸外国を凌ぐ装置を開発し得る見通しを得た。

30
試作品と各国のIRSTとの性能比較(推定)

※「戦闘機搭載用IRST装置」として装備品の開発予算が付き試作されたのは2003年からである。1997〜2000年の研究試作と2000〜2002年までの所内試験と部内研究はTRDI内部の研究の一環として進められた。

 研究試作の成果を踏まえ、開発における主要な技術的課題の解明要領を検討するため、平成12~14年度にかけて部内研究を実施した。システム・インテグレーション技術、マン・マシン・インターフェイス技術、小型軽量内装化技術及び自動目標補足追尾技術に関して、開発試作の資となる見通しを得た。


 そして2003年からは「戦闘機搭載用IRST装置」として予算が承認され試作が開始された。
以下の要求の達成を目指したものだった。

40
要求性能

32
運用構想図と表示イメージ

 先述の研究試作の成果を十分に反映し、要求を達成するIRSTの試作品が開発された。F-15近代化改修機に内装型として搭載し電子戦環境下等の状態、火器管制レーダーの機能が制約された状態において、目標航空機の発する赤外線による目標の探知及び追尾、搭載空対空ミサイルの発射管制への使用を意図したものだった。

 また、IRST装備による情報量の増加に対処すべくパイロットワークロードの低減も目的に開発された。試作品は信号処理部、電源部、センサ部で構成されている。

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試作されたIRST


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試作品のIRSTを搭載するF-15

 試験は岐阜基地等において技術試験を開始した。2006〜2008年にF-15の機体改修が行われ試作品のIRSTを搭載した。

    地上試験は、2006〜2007年にかけて機能・性能試験(飛行環境模擬下)、機能・性能試験(高軌道環境模擬下)、フィールドデータ取得試験、信頼性試験及び環境試験を実施した。

    飛行試験は計70ソーティを2009年に機体定期修理をはさみ、2008~2002年まで実施した。

 2008年の飛行試験では戦闘機搭載用IRST装置に不具合が発生し、試験を中断した。原因究明を行ったところ、当該装置の制御プログラムに問題があり、目標の追尾が不安定になることが判明した。制御プログラムの改修を行い、目標の追尾が安定することを確認した。また、この影響で開発完了時期が2008年から2010年にへと延期された。

    その後、機能・性能である誤警報率、目標探知距離、脅威判定、目標角度分離精度、測距機能、最大追尾角速度及びIRCCM機能について地上試験と飛行試験により、技術的評価を行い、要求を満足していることを確認した。
   
«まとめ»
 電子戦環境下等における火器管制レーダの探知性能等の低下を補完し、目標の探知及び追尾のみならず搭載空対空ミサイルの射撃管制に使用する戦闘機搭載用IRST装置の開発を完了した。

 技術試験及び実用試験の終了を受け、平成22年12月8日の装備審査会議調整部会を経て、IRST装置(F-15)は部隊の使用に供し得ると認められた。

09
達成された要求

 遷音速飛行領域(マッハ数0.9~1.2)においてセンサー部から生じる衝撃波がピトー管と干渉し、高度・速度表示に誤差を生じることが、技術試験において判明した。

 2011~2014年において、F-15近代化機の ADP(Air Data Processor)/OFP(Operational Flight Program)を改修(衝撃波の影響を補正)し、既存機(IRST非搭載機)相当まで影響が抑圧されることを確認した。

 ただし、現在に至るまで当IRSTの搭載改修が施されているF-15の数はごく僅かに留まっている。



[2波長赤外線センサ技術の研究]

11
59
2005〜2014年
※本研究は将来戦闘機などに関する特定の研究では無いものの、戦闘機用のIRSTやFLIRなどに派生可能な次世代赤外線センサ技術として解説する。

«概要»
 2波長QDIPなどの先進半導体技術を用いた、高画素・低コスト・高識別能力を有する2波長赤外線センサ技術に関する研究

«前史»
 日本は1960年代から赤外線センサ技術の研究を進めてきた。戦闘機搭載用赤外線センサとしては、1982年から開始された新FLIRシステム方式の研究を土台として1996〜2004年にかけてF-2戦闘機の外装型FLIR装置(J/AQQ-2)が開発された。

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赤外線センサ技術の流れ

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F-2に搭載された外装型FLIR装置

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外装型FLIR装置の概要
航法及び目標追尾・測距に用いられる

 1980年代半ばからは航空機搭載用は冷却型へと研究がシフトした。
※冷却型赤外線センサとは、冷凍機を用いて液体窒素温度程度(約70K)に検知器を冷却し、赤外線を光子として検出するセンサである。高感度で高フレームレートの画像が得られる長所があり、高速飛翔する弾道ミサイル及びレーダでは難しい電波ステルス機の探知に有効である。また、検知波長帯を2波長化することが可能で、雲、水面からの太陽反射等のクラッタを抑制して、目標の探知能力を上げることができる。

 1995年には将来センサシステム実験装置が試作され、2003〜2005年にはブーストフェイズの弾頭ミサイルの探知を目的とした将来センサシステム(搭載型)を研究試作した。当装置はUP-3Cに搭載され2005年及び2007年にハワイのカウアイ島で弾道ミサイルを捜索追尾することに成功した。

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将来センサを搭載して飛行試験を行うUP-3C

«背景・目的»
 赤外線センサに使用される波長は高温目標と低音目標で異なり、これまでは用途に応じてセンサを使い分けてきた。

 しかし、技術発展により2波長化や高画素化など優れた特性を有する、量子ドット型赤外線検知器(QDIP:Quantum Dot Infrared Photodetector)などGaAs系の素子の実現に目処がついた。

46
2波長赤外線センサの検知帯域

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QDIPの利点

 これらQDIPに関する研究を行うことで、地形や車両などの低温目標から航空機の排気ガスといった高温目標など多目標に対応できる次世代センサに関する研究を行う必要があった。多波長を用いた画像処理で太陽光などのノイズを低減し目標の視認性を向上させ、かつ量子効率が高いため探知距離が延びることと、動作温度が高いため冷凍機が小型化できるなど数多くの利点が期待されていた。

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量子型赤外線センサの種類

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QDIPの利点

«詳細»
 本研究では航空機、車両、ミサイルなど幅広い適応が期待される2波長赤外線センサの実現可能性を検証するため、富士通を主契約者として各種研究試作が行われた。

 研究試作(その1)では2005〜2007年にかけて単波長QDIPと信号処理表示部/データ解析部が試作された。

31
試作品の概要

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センサ部の詳細構造

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単波長QDIPの構造

 所内試験の結果、画像の安定性・均一性に優れ、冷却温度(80K程度)で動作が可能な256x256長波長帯QDIPの実現を確認した。この成果は後の2波長QDIPの試作に反映された。

 研究試作(その2)では2008〜2010年にかけて2波長QDIPが、研究試作(その3)では2009〜2010年には2波長信号処理表示部と2波長反射光学系が試作された。この試作されたInAS(ヒ化インジウム)を用いた480x480画素の2波長QDIPは、2波長QDIPとしては世界初の成果であった。

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研究試作(その2・3)の概要
単波長と比べ中赤外線の量子ドット層が追加されている

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2波長反射光学系の概要

 2011〜2013年の研究試作(その4)では2波長QDIPかつ1024x1024画素のハイビジョン化を実現した。以下に研究試作の概要を示す。

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研究試作(その4)の概要
 
 2波長QDIPの試作後、所内試験では2波長における目標の見え方の違いを利用し、目標探知識別能力の向上に資する2波長融合処理の有効性に関する試験を行った。

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2波長での見え方の違い

以下に2波長融合処理の例を示す。

①特徴量分類処理
複雑背景の中から高温排気ガス(選択放射体)を抽出し、ノイズを低減する。遠方の航空脅威、遠方のミサイル などの捜索に向く。

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②太陽光クラッタ低減処理
太陽光クラッタ背景において、太陽光クラッタを低減し、目標の視認性を改善する。太陽光クラッタ背景の不審船などの海上目標、低空で侵入してくる目標に向く。特にこの処理では単波長と比べ探知識別能力が9.1倍にまで向上する事が確認された。

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47
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③2波長差分処理
複雑背景において、背景雑音を低減するとともに、2波長の放射特性の差を際立たせて表示する。植生や建造物に紛れた車両などの地上目標、港湾背景の不審船などの海上目標などに向く。

31
18
56

«まとめ»
 本研究の実施により高精細な2波長QDIPの実現が実現された。これにより2波長帯域の取得による運用場面の拡大や2波長融合処理による目標探知識別能力の向上が可能な事も検証された。



[将来航空機基礎技術の研究(航空電子統合化の研究)]

01
1987〜1997年

«概要»
 航空機搭載電子機器を統合制御するため、情報管理方式及び表示方式についての研究



[将来アビオニクスシステムの研究]

52
00
2002〜2011年

«概要»
 限られた搭載スペースで効率的な情報処理が可能な情報処理機能を統合化(データフュージョン)した将来戦闘機用アビオニクスシステムの構築に関する研究

«背景・目的»
 将来戦闘機には複雑化する戦闘環境及び組織戦闘への対処を図るため、各種センサーを用いてあらゆる方向からの脅威に対処する能力及び僚機間と連携した戦闘能力が必須である。

 従来のアビオニクスシステムは、各センサごとに専用のアビオニクスシステムで信号処理を行っている。つまり、高性能化に対しては個別に情報処理の向上を図る必要があり機体内の搭載スペース、冷却能力、電源要領に限界があるため、機能・性能の拡張性に乏しい。将来において飛躍的に増大するセンサからの入力信号に対応できなくなる恐れがあった。

 限られた機体搭載スペースにおいて機能・性能の向上を図るため、情報処理機能を統合化し、将来の技術発展にも容易に対処可能な拡張性を有する将来アビオニクスシステムの構築を行う。ライフサイクルコストの低減も重要な要素である。

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将来のアビオニクスへの要求

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将来のアビオニクスのビジョン

«詳細» 
 上記の統合化アビオニクスを実現するにあたって以下の研究目標の達成を目指した。

①情報処理機能の統合化
②複数異種センサの動作制御と統合信号処理
③パイロットワークロードの低減
④複数のアンテナの共用化
⑤技術累積可能なシステムアーキテクチャ

 また、モデリング&シミュレーション技術を用いることで設計、製造、試験、評価を行う。モデルの構築と検証を繰り返すスパイラル開発方式を導入することで、センサの機能・性能向上、コックピット表示の統合化及び限られた機体の搭載スペース等を踏まえたうえで、最大限の運用効果が発揮できる、経済性も兼ね備えたアビオニクスシステムの実現を目指した。

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要求と解決手段

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モデリング&シュミレーションの概要

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スパイラル開発方式の概要


 上記を達成するために本研究試作では、アビオニクスシステムの性能・構成を任意に設定して、空対空戦によるアビオニクスシステムの構成検討が可能なリアルタイム交戦型フライト・シミュレータを製作した。

 彼我に分かれて最大6機の模擬戦闘機を操縦し、接敵・索敵~中距離戦~近距離戦の模擬空戦が可能である。模擬しているモデルはアビオニクスの他、これらをを評価するための機体やミサイル等を備えている。

 MFD(Multi Function Display)には各センサの探知情報を統合した結果を表示し、タッチパネル方式を採用し、表示する項目や大きさをカスタマイズできる。情報の表示はHMD(Helmet Mounted Display)にも可能であり、40°φの視野角で緑色による両眼表示が可能である。

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試作品の概要
 
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シュミレーション内での模擬モデル

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簡易コックピット

 本研究試作では三菱電機が主契約者となって33億円をかけて2002年より研試(その1)を開始した。効果の把握を行うために所内試験でシュミレーション試験を行った。

 研試(その4)と(その5)を供試品として航空自衛隊の操縦士、要撃管制官及び航空医学実験隊の支援を受け、2009〜2011年にかけてアビオニクスシステム評価試験を実施した。

 評価試験では、パイロット・イン・ザ・ループのリアルタイム交戦シミュレーションにおいて異なるアビオニクスの組合せが交戦に与える効果に関するデータを取得し、交戦効果(交換比等)やパイロットコメントによりアビオニクス構成による効果の評価が可能であることを確認し、良好な結果を得た。

 また、コックピット評価装置も活用し、統合信号処理や HMD 等のユーザインタフェースがパイロットのワークロードや状況認識に与える寄与を評価するためのデータを取得し、統合信号処理の効果やパイロットワークロード低減効果が評価可能であることを確認し、これも良好な結果を得た。
※パイロット・イン・ザ・ループ:シミュレーションのループの中に人間(パイロット)が介在して、シミュレーションを実施すること。

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将来アビオニクスシステムの性能確認試験

 所内試験においてシミュレーション試験を行うことにより、情報処理機能の統合化、複数異種センサの動作制御、統合信号処理等に関する技術資料が得られていることを確認した。得られた効果は以下の通りである。

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本研究で得られた効果

«まとめ»
 アビオニクスシステムの構成を変えて模擬戦闘機を操縦してリアルタイムで交戦できる
シュミレーターの試作と、所内試験でアビオニクス構成が交戦結果に与える影響の評価により当初の目標が達成された。

 情報処理機能の統合化、複数異種センサの動作制御、統合信号処理等が可能な将来アビオニクスシステムに関する技術的知見を得ることができた。



[航空機先進装備システムの研究]

02
2002〜2003年



[航空機先進装備技術の研究]

28
2004〜2006年

«概要»
 航空機の任務達成能力及び整備性等の向上を図るための、主要な構成要素であるアビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究



[航空機先進搭載機器技術の研究]

16
2007〜2009年

«概要»
 航空機の任務達成能力及び整備性等の向上を図るための、主要な搭載装備である操縦系統、アビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究




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