«アビオニクス関連(2-2)»
- 航空機先進搭載機器システム技術の研究
- パイロットワークロード低減アビオニクス技術の研究
- 戦闘機用統合火器管制技術の研究
- 将来ミサイル警戒技術に関する研究
- 先進RF自己防御シミュレーションの研究
- 戦闘機等のミッションシステム・ インテグレーションに関する研究
[航空機先進搭載機器システム技術の研究]

2010〜2012年
«概要»
航空機のステルス性及び高運動性向上並びにパイロットワークロードの低減を図るための、主要な搭載装備であるアビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究
[パイロットワークロード低減アビオニクス技術の研究]
2010〜2012年
«概要»
航空機のパイロットワークロードの低減を図るための、主要な搭載装備であるアビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究
«補足»
将来の戦闘機はデータリンク等を介して僚機等と連携するとともに、非RFセンサ等を操作制御し、搭載兵装の発射管制を実施することが想定されている。このような状況下で任務達成能力の向上を図るためには、パイロットのワークロードを低減し、状況認識を向上させる必要がある。このために適用可能な表示機器等の要素技術について検討を実施した。
本研究の一環として、防衛航空機用途への適用例のない三次元音響について、基礎的な試験を実施して技術課題を明確化した。
将来の戦闘機の PVI(Pilot Vehicle Interface:パイロット・ビークル・インタフェース)システムとして
①HMD(Helmet Mounted Display:ヘルメッ
ト・マウント・ディスプレイ)
②音声認識
③三次元音響及び大型HDD(Head Down
Display:ヘッド・ダウン・ディスプレイ)
を適用することで、従来の PVI システムに比べて直感的な状況認識を助けることが期待できる。
そのため、本研究ではこれらを構成する技術の動向について調査を行い、技術課題等を検討した。
いずれの技術についても民生分野での発展が著しく、戦闘機に特有の周囲環境等の課題を除いて実用レベルにあることが分かった。
また、三次元音響装置を製作して静的な音像定位試験を行うことで認識率データの取得を実施した。
これにより三次元音響システムの構築に向けて頭部伝達関数の個人適応等の技術課題があることが確認できた。
[戦闘機用統合火器管制技術の研究]
2012〜2022年(所内試験の期間が延長)
«概要»
地上レーダー等の各種アセットと連接したネットワーク中心の戦闘環境空間において、戦闘機間のセンサ及びウェポンを高速データリンクを介して統合的に管制し、射撃機会の増大及び射撃効率の向上を図る統合火器管制技術についての研究
«背景・目的»
周辺国では第4世代戦闘機の配備が進み、既に数的には劣勢となっている。また、ステルス性を有する第5世代戦闘機の開発・配備も行われている。従来の戦い方ではステルス機や数的劣勢といった状況への対処は困難である。
これらへの対処ため、ネットワークを中心とする防空体制構築が必要であり、対ステルス機レーダも含め各種研究が行われている。その中でも戦闘機は将来の防空体制を構築する要素の1つとして位置づけられている。
経空脅威に対処する防空体制
「将来の戦闘機の研究開発ビジョン」ではステルス機・数的劣勢を克服する手段として、クラウドシューティングによる戦闘機の情報化・知能化が提唱された。
次世代の戦闘機が第5世代機を上回りかつ対処可能な技術の1つとして、地上レーダー等の各種アセットと連接したネットワーク中心の戦闘環境空間において、戦闘機間のセンサ及びウェポンを高速データリンクを介して統合的に管制し、射撃機会の増大及び射撃効率の向上を図る統合火器管制技術を研究する。
«詳細»
本研究の実施により達成を目指す、戦闘機用統合火器管制技術の特長について以下に述べる。
①ネットワークを用いた外部アセット(地上
レーダ、AEW等)との連接と情報共有
②僚機間の高速秘匿データリンク
・指向性を持たせたミリ波通信による秘匿性の確保と
大容量通信の実現
・高精度高出力なビーム制御及び全球覆域による遠方
までの確達性の確保
③統合航跡生成
・僚機間秘匿データリンクを用いて、自機と味方機の
情報を統合し
・編隊全体で探知した情報として共有
・自機の探知外の目標も探知・射撃が可能
④パッシブ測位
・自ら電波を発しないIRSTなどの僚機間の光学センサ
の情報を統合
・パッシブな手段による測距を含めた測位を実施(従
来はIRSTは方探情報のみの取得であり、測距は不可
能)
⑤センサ/シュータ・リソース管理
・統合的な誘導弾の管制発射の支援
・回避判断の支援
⑥上記の①〜⑤技術を適用したクラウドシュ
ーティング
・Preferred Shooter Determinatiom
ー適切なシュータの決定
我彼の位置関係等に応じて編隊内の最適なセンサー
機、シュータを決定
・Precision Cue
―精密照準
僚機間の測定情報を統合し目標の位置情報の精度を
向上
目標の位置情報を取得し走査範囲を局限してその分
の電力をビームとして照射―より遠距離での高精度
な測定を可能にする
・Launch on Remote
―遠隔発射
シュータと僚機の双方で目標を捕捉・位置情報を照
合しミサイルの発射と誘導を実施
高精度な射撃管制が可能
・Engage on Remote
―遠隔交戦
目標の捕捉を僚機に委託しそれを基に発射機がミサ
イルの射撃及び誘導を実施
僚機が目標を捕捉していればシュータは目標を直接
探知せずともミサイルの射撃及び誘導が可能
・Forward Pass
―誘導権移管(フォワードパス)
シュータのミサイルの誘導権を僚機に移管し僚機が
ミサイルの中間誘導を継続発射後、シュータは脅威
から即座に離脱が可能
従来のAAMの誘導
ミサイルシーカが作動するまで
発射機が目標を捉え続ける必要がある
僚機がAAMの誘導を担う事で
発射機は速やかに離脱が可能
・Remote Fire
―遠隔射撃
シュータはミサイルの発射のみを行い目標の捕捉及
びミサイルの誘導を完全に僚機に委託する
発射と射撃管制の分離による任務時の自由度向上や
シュータはミサイル誘導以外の役割に専念可能
上記①〜⑤の特長を備えた統合火器管制により、空間的に分散している編隊内のセンサやウェポンを僚機間で共有する。編隊内での目標情報を統合的に処理してターゲッティングやミサイル誘導も可能とする。
これにより、生存率を向上しつつの射撃機会の増加、射撃効率及び効果の上昇を図る。
統合火器管制によって実現する戦闘コンセプト
これらの実現に向けて、本研究では統合火器管制ソフトウェアを試作し、地上及び飛行試験によりその有効性を確認する。また、近距離高速秘匿データリンクは実際に高い指向性を持つ通信装置を試作し、統合火器管制装置と共に実機に搭載して試験を行う。
研究全体の流れ
2010年から所内試験2Aとして開始され、研究試作は2012年から開始された。174億円の総予算のもと、MHIを主契約者として各種研究試作及び試験を行っている。
研究試作(その1)では将来の戦闘機(パッシブ測位機能なし)を対象にしたシステム設計(その1)を行い、それに基づいて統合火器管制ソフトウェア(その1)を設計・製造した。併せて、統合火器管制ソフトウェア(その1)を評価するために必要なシミュレータを既保有のシミュレータを利活用し、整備した。
なお、利活用する既存のシュミレータは先行研究試作である「将来アビオニクスシステムの研究」において試作されたコックピット部などを用いる。
試作された簡易コックピットの概要(再掲)
研究試作(その2)では研究試作(その1)を基に、赤外線センサを装備し、パッシブ測位機能を有する戦闘機を想定し、システム設計(その3)を行う。それに基づいて統合火器管制ソフトウェア(その3)を設計・製造を実施した。
統合火器管制の評価を行うシュミレータは以下の要素で構成されている。
1.コックピット表示部
・模擬コックピット部: コックピットを模擬
・映像発生装置: シュミレータ映像を発生
・監視部: 6台の模擬コックピット部の戦闘状
況を外部から監視
2.統合火器管制部
・戦闘機の模擬
・統合火器管制の実行
3.シュミレーション実行制御部
・戦闘状況の表示
・シュミレーションの実行制御
4.戦域模擬計算部
・早期警戒管制機の模擬
・評価解析
最大18機の戦闘機をリアルタイムで模擬可能
シミュレーション試験は飛行試験に比して優位性を有している、特異な条件下における数々のシナリオに基づく試験を繰り返し実施することができる。種々の飛行環境での検証を実施するとともに本技術による将来の戦闘機の運用方法を見い出す事が可能である。
シュミレーション試験では主に編隊内で一元的に利用する目標の航跡情報を生成する「統合航跡生成技術」、複雑な僚機間連携を管理し、任務分担などをパイロットに伝達して支援を行う「センサ/シュータ・リソース管理技術」などの技術課題を確認する。
その後、目視外模擬戦闘において統合火器管制技術の有効性を確認するとともに、最も効率的で効果的な戦い方を評価することを目的として実施するものである。
また、ステルス機の探知に有効な、赤外線センサなどの自ら電磁波等を放射しないパッシブ方式のセンサを搭載した戦闘機が各々取得した目標の方位情報を編隊内で共有し、目標の位置を三角測量により推定する「パッシブ測位技術」についても確立する。
2015年の所内試験では研究試作(その1)の試作品を、統合火器管制ソフトウェア(パッシブ測位機能なし)の有効性について試験し、成果を得た。
2016年の所内試験では研究試作(その2)の試作品を用いてシミュレーション試験をパッシブ測位機能が付与された統合火器管制ソフトウェアの機能の有効性を評価し、将来の新しい戦い方を確立した。

模擬戦闘試験中のコックピット内の様子
Borozino氏提供
防衛装備庁技術シンポジウム2017・2018では統合火器管制のシミュレーション試験時の動画が公開された。
以下にシミュレーションの様子を記す。
❶状況開始
距離100海里(185km)で数的劣勢条件での空対空戦闘
我側4機(青#01〜04)と敵側8機(赤#101〜108)
我側は統合火器管制と僚機間データリンクを有する
敵側は統合火器管制を有さない
前列#01#02はシュータ機、後列#03#04はセンサ機
として我側は散開する
❷射撃開始
我・敵共に互いを探知し、射撃を開始
我側
#01が#103#104#107に1発ずつ計3発を発射
#02が#101#105#106に1発ずつ計3発を発射
敵側
#102#103#104#108が#01に1発ずつ計4発を発射
#101#106が#02に1発ずつ計2発を発射
#102#108のミサイルは早期に誘導を喪失する
❹前列と後列の入れ替り
我側
#01#02は離脱し後列に移る。ミサイルの誘導を引き継いだ#03#04が前列になり前列と後列が入れ替る。
❷での#02のミサイルが#101に命中する。
敵側
#103が❷で発射したミサイルは命中せず。
#102#105#107がそれぞれ#03#02#01対しミサイルを
発射
我側は❷でのミサイルで#101#103#104#105#107を
撃破した。#106には命中せず。
敵側は❹までのミサイルを全て外す。
我側
#03が#102#108に1発ずつ計2発を発射
#04が#106に1発を発射 #106に命中
敵側
#102が#04に1発を発射
#108が#03に2発を発射 そのうち1発は誘導を喪失
統合火器管制の実現には、僚機間の高速秘匿データリンクが必要である。研究試作(その3)以降ではミリ波を用いた通信用の空中線の試作と試験を行う。
ミリ波通信技術は情報通信技術研究機構(NICT)とMELCOが共同で開発した大容量通信技術を活用する。当技術は双方向通信かつ、ミリ波帯(40GHz)での大容量通信(100Mbps)やアンテナのAPAA化でのビームの電子制御により、機体姿勢に追従しての指向性を持たせた通信が特長である。
アンテナの高性能化、移動体(航空機)に搭載するための装置の小型化・軽量化、航空機の姿勢に追従して電波の放射方向を高速に制御するアンテナ制御技術などを実証している。
防衛用途に応用するにあたり、以下の防衛特有の事項について技術的な検討を行う必要がある。
(1)民間において実証研究に用いた機体と比較して、より機体規模の小さい戦闘機へ搭載するための小型・軽量化及び限られたスペースへの搭載に際して他の電子機器との干渉防止
(2)民間において実証された通信距離と比較して、より遠方での戦闘機の統合火器管制に必要な大容量のデータ通信を確立するためのアンテナや素子の更なる高性能化
(3)民間において実証された定常飛行もしくは緩やかな機動をする移動局(航空機)と固定局(地上)と異なり、高速飛行かつ高機動する戦闘機と戦闘機間において、安定した通信を確保するための、データリンクのビーム制御技術の確立
研究試作(その3)では飛行実証用データリンク装置のシステム設計が行われ、試験用の空中線が試作された。以下に試作された通信用の空中線の概要を述べる。
1.ハードウェア
・小型高出力/広覆域のミリ波空中線
・APAA方式空中線
・SiGeを用いた16x16素子の空中線
2.ソフトウェア
・機体の機動に応じて適切に、APAA空中線の
通信用電波のビームを指向する高精度ビー
ム指向制御
・確実なオーバーラップ制御
地上試験では最初に、試作された空中線の送信出力の大きさを測定した。結果、設計目標を上回る従来品の2倍近くの送信出力を確認した。
送信出力の確認後は空中線とビーム制御技術の統合が目指された。
試作空中線の送信出力の試験結果
従来品の2倍近い出力を確認
回転台に載せられた空中線同士の
ビーム制御について試験された事が読み取れる
実際の飛行環境下では水蒸気による減衰などの影響を受けてデータリンクの到達距離が短くなる。激しく動く戦闘機においてはデータリンクのビーム制御の追従性が悪くなったりする。
そのため、地上試験後はF-2及びT-4に飛行実証用の機体改修を実施する。統合火器管制技術及び僚機間秘匿データリンク技術を実際の飛行環境化での有効性を確認する。実際にネットワーク射撃を実施する計画である。
飛行実証にあたっては
・飛行実証用統合火器管制処理装置
・飛行実証用データリンク装置
・光学センサ
・テレメトリ機能付き実証用誘導弾
・試験用搭載機器(インターフェースボック
ス及びGPS/IMU)
・搭載母機改修(F-2及びT-4)
の設計と製造が予定されている。
・試験搭載用機器の製造
・飛行実証用データリンク装置(電源部・空
中線用電源部)の製造
・飛行実証用データリンク装置の設計
・空中線(搭載用)の設計
・搭載母機改修の細部設計(F-2)
までの進捗が確認されている。
2021年6月までに飛行実証用搭載装置の製造と、飛行実証用機としてF-2/T-4の改修を行う。
«まとめ»
ネットワーク戦闘を特長とする戦闘構想の実現のために、ミリ波帯の大容量通信技術や統合火器管制技術の研究をおこなっている。

















































































ステルス戦闘機用レドームの概要











































































