2019年06月


«航空機全体(1)»

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  1. 航空機生存性向上の研究
  2. システム統合化技術の研究
  3. ステルス・高運動機の研究
  4. 将来戦闘機のシステム化に関する研究
  5. 高運動ステルス機技術のシステム・インテグレーションの研究
  6. 先進技術実証機




[航空機生存性向上の研究]

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1985〜1987年

«概要»
 生存性向上のための電波ステルスに関する研究



[システム統合化技術の研究]

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1991〜2000年

«概要»
 ステルス・高運動機形状模型、航空性能評価プログラム、将来航空機運用評価システムの各研究試作による航空機技術のシステム的な成立性を目標とする研究




[ステルス・高運動機の研究]

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1996〜2001年

«概要»
 ステルス・高運動機の飛行を模擬することが可能なシミュレータ用ソフトウェア、コックピット装置及び連接型模擬装置等によりステルス・高運動機のパイロットを含めたマン・マシン・システムとしての有効性に関する研究

«背景・目的»
 将来の小型航空機においては、ステルス性と高運動性を兼ね備えることが不可欠となっており、日本においても関連する要素研究が継続的に実施されているが、個々の要素レベルの研究に止まっている。

 このため各要素研究をシステムとして構築した場合の成立性及び運用上の有効性についての研究を実施し、ステルス・高運動機の実現可能性を明確にする必要がある。

«詳細»
 上記目的を達成するために既存のシミュレータを利用して、ステルス・高運動機の飛行を模擬することが可能なソフトウェア、シミュレータ用模擬コックピット及び複数の既存のシミュレータを接続する装置を試作した。 

 シュミレーターによる有効性として、シュミレーター上でパイロット対パイロットでの空戦を行うことは、単純な動きしか生成することができないコンピュータ・ターゲットと異なり、評価すべき戦闘機の各種有効性についての評価の精度を高めることに大いに寄与し、評価の上で有効な手段である。

    研究試作(その1)ではシミュレータ用ソフトウェア及び模擬コックピットの試作等を行った。さらに、研究試作(その2)において、二つの既存シミュレータを連接する装置の試作等を実施した。

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試作品の概要と試験

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試験で用いられたHMD

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CFD(数値流体力学)を活用した主翼の静的
弾性変形の計算。後に風洞内で実際に空力弾性を計測
するために空力弾性風洞試験技術の研究が実施された

 所内試験では以下の特徴を有するステルス・高運動機モデルを用いてシュミレーションを行った。

・高推力重量比/低翼面荷重の主翼等による高運動性
・良好な効きを有する舵面による高運動性
・新型エンジン双発及び推力偏向機構注3)採用による高運動性
・新フライト・コントロール・システムによる高運動性
・垂直尾翼形状によるステルス性と高運動性
・全機形状によるステルス性
・空気取入口ダクト形状によるステルス性

 研究試作と所内試験の結果、以下の効果を得られた。

・シミュレータを用いた、高運動性及びステ
 ルス性の有効性に関する技術資料の収集
・将来のステルス・高運動機の基本設計及び
 機体の有効性評価に関する技術の取得
・二つのシミュレータの接続による通信時間
 の遅れを、予測計算による補正を行うこと
 により、パイロットが体感する遅れが単体
 シミュレータでの表示遅れの許容基準を満
 足することの確認
※等価連接遅れを130msecとする連接技術は、将来の大規模なシミュレータ連接においても、有益な技術として利用可能だという

・CFDと空弾性解析を組み合わせること
 で、定常横転時の空弾性変形の影響を解析
 的に推算することの実現
・連接シミュレータに関する国内での新機種
 開発を行うための基礎データの取得

«まとめ»
 本研究の実施によりステルス・高運動機の
実現可能性に関する技術的資料を得た。本研究成果は、今後も小型航空機の運動能力の向上を図るための研究である「高運動飛行制御システムの研究」に反映することができる。また将来の訓練用シミュレータの連接等への適用も期待される。



[将来戦闘機のシステム化に関する研究]

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2008〜2010年

«概要»
 将来戦闘機のシステム化に関する研究


 
[高運動ステルス機技術のシステム・インテグレーションの研究]

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2008〜2010年


«概要»
 これまで個別に研究を行ってきたステルス技術、IFPC技術、複合材技術等の各種先進技術をシステム・インテグレーションする設計技術について研究し、高運動ステルス機の能力把握、評価等に必要な技術的知見を得る。また、解析により設計した機体がステルス性及び高運動性を有することを確認する。

«背景・目的»
    第5世代機の台頭等の諸外国の動向を踏まえて、将来の戦闘機に求められる個々の各種先進技術の研究をこれまで行ってきた。

 しかし、将来保有すべき戦闘機に関わる技術的見通し及び持つべき機能・性能の見通しは既存の装備、個々の要素技術の地上での検証等では得られない。

 よって、システム・インテグレーションを図った実験機の製作と実飛行環境下での検証による、将来の戦闘機等に適用が期待される先進技術の実機適用への見通し及び運用上の有効性の検証を行う必要がある。

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これまでの研究との関係

«詳細»
 本研究はステルス技術、IFPC技術及び複合材技術等、高運動ステルス機に適用される各種先進技術を適用した、後述の先進技術実証機の実機製作・飛行試験に向けての準備作業的な性格が非常に強い。

 そのため、本研究では実機製作において必要となる、上記各種先進技術を適用した設計技術の研究・細部計画図の作成や、模型を用いた風洞試験などの関連試験が主眼として行われた。
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機体構想

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想定機体への適用技術の詳細

 細部計画図の作成は2009年2月にMHIとの間で、計画図の契約が結ばれると、MHI大江工場において、MHI内に先進技術実証機設計チーム(ATRAS)を発足し、MHI、SUBARU及びIHIの設計者が最大約250名集まり、後述の関連試験の結果を踏まえた高運動ステルス機の細部計画図を作成した。TRDIでは、技術開発官(航空機担当)第3開発室が機体の細部仕様や研究コスト管理、及び研究スケジュールの確保を重点として研究業務を推進した。

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製作された細部計画図

 関連試験は以下のような内容が行われた。

・模型による風洞試験
・構造要素試験
・部分構造試験
・確認全機縮小RCS試験
・操縦室機器配置確認試験

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確認尾部排気・推力偏向風洞試験
一様流風速、模型姿勢角及びエンジン排気を
模擬した空気流を変化させ、後胴6分力等を計測

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確認全機低速風洞試験
模型姿勢角を変化させ、全機6分力等を計測

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全機縮小RCS試験

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操縦室機器配置試験
 コクピット・モックアップにより、
操作性及び視認性を確認

 本事業の実施により以下のような研究目標の達成を実現できた。

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研究目標と成果

 また、設計の進捗とともに機体仕様の設定等変更を要した。これは各種先進技術を適用した機体設計の際に、従来の設計手法では限界があることが判明したからである。

 本事業で得られた技術的知見を反映した設計手法等の改善策がまとめられ、各種先進技術を適用する機体の設計手法等についての有意義な知見を得ることができた。

«まとめ»
 高運動ステルス機の計画図を作成し、高運動ステルス機の能力把握、評価等に必要な技術的知見を取得するとともに、解析により、設計した機体がステルス性及び高運動性を有することが確認できた。

 一方、本研究で生じた課題の要因を分析することによって、各種先進技術を適用する機体の設計手法等についての有意義な知見を得ることができた。本事業の成果は、「先進技術実証機の研究試作」等に反映された。



[先進技術実証機]

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2009〜2017年

«概要»
 将来の戦闘機に適用される、機体・エンジン等の各種先進技術のシステム・インテグレーションを図った高運動ステルス機を試作する。そして実環境下においてシステムの成立性を確認するとともに、運用上の有効性を検証する研究

«背景・目的»
 前述の通り、日本は1980年代後半から高運動ステルス機技術に関する研究を行ってきた。それら先進技術の実機適用への見通し及び運用上の有効性の検証のために、システム・インテグレーションを図った実験機の製作と実飛行環境下での検証を目指した。

 第1段階として「高運動ステルス機技術のシステムのシステム・インテグレーションの研究」では実験機製造のために細部計画図の作成と関連試験等も含めた、設計の有効性の解析を行った。

 第2段階で本事業の「先進技術実証機」を実施し、機体の製造と飛行試験を行い実飛行環境下での技術の成熟度や技術の運用上の有効性を検証する。

«詳細»
 本研究はコスト抑制から、既存の航空機の部品を活用するなどし、製作する航空機の数量について試験評価を行う上で必要最低限の1機が製造される事が当初から決定された(安全性を確保するために静強度試験機は別に制作されている)。

 「高運動ステルス機技術のシステム・インテグレーションの研究」で設計された細部計画図を基に、MHIを主契約者として220社が参加し、実機の製造と飛行試験に向けて研究が進められていった。

 研究試作(その1)では2010年3月にMHIとの間で、製造設計の契約が結ばれると、MHI大江工場及びSUBARU宇都宮工場において、MHI及びSUBARUの最大約270名の設計者により、先進技術実証機の製造図の作成が進められた。製造図の作成とともに各種の関連試験や技術確認試験が行われ、試験結果は製造図の作成に反映された。

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フライト・シミュレーション試験
IFPCシステムに搭載する飛行制御則を搭載した
シミュレータにより、パイロット適合性を確認

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コックピット・シールド試験

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コックピット・シミュレーション試験

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作成された製造図(装備品配置)

 研究試作(その2)では、2011年3月にIHIとの間で、製造設計及び製造の契約が結ばれると、IHI昭島工場及び瑞穂工場において、最大約50名の設計者により、飛行試験用実証エンジンの設計が進められた。また、エンジン製造と並行して強度試験機の製造も進められた。
 
 研究試作(その3)では、飛行試験機の製造が開始された。(その3)の途中からは所内試験も開始され、飛行試験機に搭載された状態でのエンジン地上試験や静強度試験機を用いた全機静強度試験などが開始された。

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試験準備を進める静強度試験機

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全機地上機能試験(推進系統)

 本来ならば飛行試験機試作後、2014年中の初飛行を行う予定であった。しかし、2015年1月6日、当初の2014年度内の初飛行予定を、2015年4月以降に先送りすることが報道された。原因はエンジンの出力を制御するためのレバーの位置を認識する装置が正常に作動せずソフトウェアの改修が必要になったこと、空中でエンジンが止まったときに自動で再始動させる「オート・スプールダウン再始動機能」を新たに装備する変更が加えられたことに起因するとされているさらに同年2月15日には初飛行が8月に先送りされることが報道され、10月には初飛行が2016年1月以降に先送りされることが報道された。初飛行の延期による影響か、研究終了予定が当初の2016年から2017年へと延期されている。
※黄色部分は出典との整合性を確認し、一部改変した上でWikipediaから引用した。ブログ作成者によると「作成時間短縮のため仕方が無かった」などと供述している。

 幾度かの延期後、2016年1月28日に先進技術実証機は初の報道公開が行われた。同日に先進技術実証機の型式が「X-2」と制定され、同年2月中旬以降に初飛行を行う旨が通達された。そして2016年4月22日に初飛行が行われた。以下に初飛行の概要と先進技術実証機の概要について述べる。

①初飛行について
 X-2の初飛行は製造企業であるMHIの社内パイロットの手によって実施され 上昇、下降、旋回などの基本特性を確認した。
 初飛行を終えたMHIの操縦士は以下のように語っている。

「極めて安定した初飛行だった。シミュレータでトレーニングした通りの操縦性で今後の防衛省殿のご要求に応える、素晴らしい機体であることを確信した」
 
 X-2の初飛行は社内飛行試験の一環である。社内飛行試験で基本的耐空性を把握し、防衛装備庁に引き渡され各種試験が行われた。

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製造図作成から社内飛行試験に至る手順
社内飛行試験の後に防衛装備庁に
引き渡され、引き続き各種試験を行う

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初飛行するX-2
※先進技術実証機の呼称に関しては、型式がX-2と発表されるまで公式には先進技術実証機、もしくはATD-X(先進技術実証機:Advanced Technological Demonstrator-X )とされていた。非公式な愛称として主にメディアでは心神と呼ばれていた。

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初飛行手順の概要


②先進技術実証機(X-2)の機体概要

 本機は先述の通り、1980年代後半から研究されてきたステルス及び高運動技術の実証に特化した機体である。各種ステルス技術や高運動技術、コスト削減のために各所に既存機の部品を使用している。

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X-2の特徴と機体諸元
既存品に関しては画像の他に
アレスティングフックはT-2のものを流用している

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各種ステルス技術

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高運動技術
IFPC技術や推力偏向パドルが採用されている

 主翼と尾翼はSUBARUが、制御機器はナブテスコが、キャノピの電波吸収剤宇部興産が製造した。複雑に屈曲させたエンジンの吸気ダクトなどもあいまって、RCSは数十キロ先のカブトムシ程度とされる。

 あくまでステルス形状や軽量機体構造・高運動飛行制御技術を備えた機体の設計・試作・試験を行い、それら技術の有効性の確認や要素技術の統合に関する知見を得る事が目的である。そのため武装や火器管制装置などは搭載されておらず、本機が量産されるといったような事は無い。

 社内飛行試験の後、X-2は防衛装備庁に引き渡され岐阜基地周辺空域、J及びK空域で高運動性やステルス性を確認した。飛行試験は2017年10月30日まで32回行われた。飛行安全の確保及び効率的な試験実施のため、試験を実施する際には、地上管制室において飛行中の諸データを常時モニタ及び随伴機による機体外観の監視等を常時行った。

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試験が行われたJ空域及びK空域

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試験の概要

 飛行試験に向けて、初飛行前の2014年には既存のテレメーター計測車に遠隔地にて飛行する先進技術実証機のテレメータデータ及びパイロットボイスを遠隔地にて受信し、FTCSに伝送するとともに、FTCSからのボイス(飛行助言)を先進技術実証機に送信する機能及び遠隔操作部により無人運用が可能な機能を追加している。


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テレメータ計測車により遠隔地での
飛行データを受信し、FTCSへと中継を行う

 ステルス性と高運動性を確認するため、飛行特性・飛行性能等に関するデータを取得する基本特性試験をはじめとして、エンジン作動確認試験、飛行荷重試験、ステルス性を確認する低被観測性確認試験及び高運動性確認試験を実施した。

 ステルス性の計測に関しては、「RCS評価方式の研究(1)屋外計測評価技術の研究」で試作されたステルス評価装置を用いて屋外での動的RCS測定を行った。

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ステルス評価装置の運用構想

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X-2のステルス性の計測に用いられたステルス評価装置

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飛行中のRCSを計測する動的空中線

 2013年時点ではステルス評価装置によるRCSの計測の他、戦闘機レーダー・地対空誘導弾レーダー・早期警戒レーダーなどにX-2がどう映るかを確認する事も予定されていた。

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各種レーダーへのステルス性の確認
※各種レーダーへのステルス性の確認に関しては公式資料中で実際に実施されたかは明記されてないので、恐らく実施されたとは思われるが断言はできない。

«まとめ»
 1980年代後半からのステルス高運動技術は先進技術実証機の設計・試作・試験により要素技術の統合に関する知見を得られ、有効性を確認した。本研究により1つの区切りがついたものの、2010年からはF-2後継の将来戦闘機の選択に資するよう各種研究が行われている。
 

























«アビオニクス関連(1-1)»

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  1. コンフォーマル空中線
  2. スマートスキンの研究
  3. コンフォーマル・レーダー・システムの研究
  4. スマートRFセンサの研究
  5. 3次元高精度方探システム



[コンフォーマル空中線]

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1987〜1997年

«概要»
 曲面薄型構造空中線の実現に必要な技術資料の取得

«前史»
 日本はAESAレーダーに関する基礎的な研究を1960年代末から開始し各種試作を行った。1980年代初頭には「将来火器管制装置の研究」の一環として「将来火器管制装置空中線部の研究試作」が実施された。この時に試作された空中線は3端子素子であるGaAsFET素子を採用した。

 従来の2端子素子を用いた試作品より飛躍的に電力効率・小型軽量化・集積度・安定度が向上し、後のAESAレーダー開発における実質的な原点となった。

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AESAレーダー技術の系譜
将来火器管制装置空中線は後の多数の
AESAレーダーの技術的な原点となった

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将来火器管制装置空中線

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将来火器管制装置のアンテナモジュール

«背景・目的»
 実用的なAESAレーダーの開発の成功後、TRDIは3次元形状である機体等の外形形状に幅広く適合できる曲面薄型構造空中線の実現を目指した。

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レーダー技術研究の全体系譜

«詳細»
 上記目標を実現するために曲面上での各種ビームの形成と伴う信号処理技術、冷却技術の実現及び技術資料の取得が目指された。

 コンフォーマル空中線(その1)では半球上の表面に多数のアンテナを配置した空中線が試作された。放射パターンやレーダーの指向方向を動的に変化させ瞬時に焦点を合わせるDBF技術・RCSの低減可能性等の各種性能確認試験が行われた。

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コンフォーマル空中線(その1)
帯域はXバンド、素子数は1431素子
レーダー方式はPESAである

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DBF技術
ディジタル制御で多ビームの形成を1つのアンテナ
で容易に行うことができ、観測幅の拡大が期待できる


 試験の結果、所望のビーム形成・RCS低減及びに広角走査が可能であることを確認した。

 コンフォーマル空中線(その2)では機体の特徴的な部位である機首・側胴・翼前縁部分に適合するA〜C型までの3種類の形状の空中線が試作された。

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(その2)の空中線の外観及び諸元

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コンフォーマル空中線の送受信モジュール

 (その3)では空中線駆動部とシステム制御部を、(その4)では全体を制御し記録・表示・解析等を行う機器と専門装置が研究試作された。試験により曲面上での各種ビームの形成と伴う信号処理技術、冷却技術の実現及び技術資料の取得がなされた。

«まとめ»
 各種研究試作により曲面薄型構造空中線の実現に関する技術的資料を得た。



[スマートスキンの研究]

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27
1991〜1999年

«概要»
 コンフォーマル空中線を更に薄型化し使用帯域の広帯域化を実現する研究

«背景・目的»
 前述のコンフォーマル空中線はアンテナから信号処理部を出来るだけ一体化して薄くし、周波数的には狭帯域で実現した技術であった。
 コンフォーマル空中線から使用帯域を広帯域化し、更なる薄型化を目指した。

«詳細»
 使用帯域を増加させると従来のアンテナは使用できず、従来の送受信モジュールに比べ非効率となり発熱量が増大する。曲面化と帯域の拡大によってビームの形成が複雑になる。
 
 これらを解決するために中長期的に以下の技術課題の達成が目指された。

①薄型層状化技術
②広帯域アンテナ素子技術
③広帯域送受信モジュール技術
④高効率冷却技術
⑤広帯域曲面形状のビーム形成技術

 これらの課題の事前解明するため、1996年からスマートスキンの研究の一環としてスマートスキン主要構成要素の研究試作が実施された。1996〜1998年の(その1)ではDBF受信系を、1997〜1999年の(その2)ではDBF送信系の研究試作を実施し、試験を行った。

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スマートスキン主要構成要素



«まとめ»
 試作と試験によりC〜Xバンドの広帯域による低サイドローブのビーム形成技術、広帯域アンテナ素子の開発などの技術資料を得た。







[コンフォーマル・レーダー・システムの研究]

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1998〜2003年

«概要»
 覆域の拡大、多目標の同時捜索・追尾及び高分解能画像化表示等、航空機の外形形状に適合可能な先進的コンフォーマル空中線技術を適用したコンフォーマル・レーダ・システムの実現性を検証するための技術資料を得る。

«背景・目的»
 形状に適合させた曲面形状のレーダを使用することにより、覆域を拡大するとともに一つのアンテナから同時に複数のビームを形成するマルチビームを用いて 同時捜索・追尾の多目標化とレーダ電波を使用して、地形等を写真のように映像にして映し出す合成開口レーダの高分解能化を図る。

 それらにより火器管制能力及び偵察能力の向上等を可能とする先進的コ ンフォーマル・レーダ・システムの実現性を検証するための技術資料を得ることを目的とした。

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試験構想図

«詳細»
 研究目的の1つである、先進的なレーダに関する要素技術の有効性の確認   という目標の達成が目指された。そのため、まず任意曲面形状からビーム形成ができることを確認するとともにマルチビームを形成可能なレーダ信号処理等を確認し、先進的な要素技術の有効性を確認した。

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覆域の拡大のイメージ

 その後は研究目的である、航空機搭載コンフォーマル・レーダ・システムの実現性の検証を目指した。

 検証を行うために試作した空中線部と信号処理部を実際にC-1FTBに搭載し、空中線の機体外表面への適合化技術等の先進的な要素技術を統合して、航空機に搭載した状態でレーダ・システムの実現性を検証した。
※C-1FTBとはC-1輸送機の試作機(XC-1:機体番号001)を装備品の飛行実験機としたもの。岐阜基地の飛行開発実験団に配備され、XF7-10、F3などの各種エンジンの空中試験にも用いられた。

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試作品の概要

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機内の様子

  所内試験ではコンフォーマル空中線・DBFにより、同時複数目標探知追尾が可能であることを確認するなど目標の性能を達成した。

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コンフォーマル空中線による多目標追尾の様子

«まとめ»
 各種試作と試験により、先進的なレーダに関する要素技術の有効性の確認や航空機搭載コンフォーマル・レーダ・システムの実現性の検証が達成された。



[スマートRFセンサの研究]

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2002〜2010年


«概要»
    航空機、艦船等への適用が可能で、レ-ダ、ESM、ECM、通信の複数機能を1つのアンテナで実現できる多機能RFセンサシステムに関する技術資料を得る。

«背景・目的»
    レーダ、ESM、ECM及び通信の複数機能を1つのアンテナで実現できる多機能RFセンサの研究が、欧米で2010年代の実用化を目指して進められている。

 これが実現すると航空機、艦船等の防衛装備品に取り付けられる電波機材の

・アンテナやポッド類の削減による低RCS化
・多機能性によるマルチミッション化
・電子機材削減、搭載スペース低減、共通部
 品化によるコンパクト化
・レーダ、ESM、ECM個々の性能向上に
 よる高性能化

など戦闘に大きな影響を及ぼすものと考えられる。

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多機能RFセンサの運用構想

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従来RF機器と多機能RFセンサとの比較

 日本はスマートスキンの研究などで広帯域空中線を試作し、欧米に劣らない基本的な技術を取得した。さらに、帯域を広げ、高出力化及び小型化を図り、受信機等の共通化と多機能化の研究を行うことにより、早期に実用化への目途をつけ、欧米の研究に遅滞なく技術を保有する必要があった。

«詳細»
 先の多機能RFセンサの利点・各機能だけでなく、野外環境において各機能の協調動作による新機能の実現を可能にするセンサシステムの実現を目標とした。

 協調動作の背景として、機首の大口径空中線によるESMで目標の高精度な方探が可能になった事があげられる。レーダーとESMの連携により、ESMで高精度方探を行い走査範囲を絞る。その後、探知方向に集中的にレーダー走査を行うことで探知時間の短縮・探知距離の延伸などが見込めるからである。

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ESMによる方位探知の高精度化
※従来はESMは振幅比較方探方式という複数の離れた位置にあるアンテナで受信した電波の振幅を比較して目標の方位を求める方式を採用し、主翼前縁部の小型空中線が担当していた。敵から電波の照射を受けていることをパイロットに警告することを主たる機能としており、レーダーの走査と協調できるレベルでの高精度な方位探知は望めなかった。

27
レーダーとESMの協調動作のイメージ

 また、それらを実現するために以下の研究課題の達成を目指した。

・レーダー、広帯域にわたる受信が必要な
 ESM等を一つの開口で実現するための広帯
 域高出力空中線
・レーダ、ESM等を一つのハードウェアで実
 現するための多機能ハードウェア共通化技
 術
複数機能の協調動作を実現するための多機
 能制御技術(制御、信号処理)

 研究試作(その1)では全体の設計と空中線が試作された。(その2)では多機能共通ハードウェアが試作され、(その3・4)では多機能処理部を試作した。また、評価試験方法にシュミレーション技術を用いて効率化を図った。

01
各機器の配置

56
試作品の画像一覧
空中線部の冷却は液冷となっている

 空中線部の特徴として、AZ・ELアレイに常時ESM機能を担うDBFA部が配置されている。受信電波を方向に関係なく受信可能な円偏波とする事で、広覆域常時警戒を可能としている。

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各アンテナの配置及び役割

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空中線部の詳細

 APAA部に関してもDBFA部混在による小型・薄型化への要求や、広帯域・高感度高出力化の観点からボウタイアンテナ(Bow-Tie:蝶ネクタイ)が採用された。

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空中線部の技術的課題

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ボウタイアンテナの特徴

 ボウタイアンテナは、レーダ/低帯域におけるVSWR改善(電圧定在波比:値が小さいほどロスが少なくなる)のため、スリットの装荷や端部の円弧化が施された。

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アンテナ部の改善

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素子と送受信モジュールの画像
スマートスキンの研究でのC〜Xバンドから
C〜Kuバンドと更なる広帯域化が実現

 所内試験は2005年から始まり、2007年末〜2009年初頭には電子装備研究所のレーダー電子戦シュミレーターを用いて協調動作試験を行った。

 2009年6月〜2010年6月には野外試験が行われた。茨城県の沖合にて百里基地から発進した機体を目標に、電子装備研究所飯岡支所に設置された試作品がESMによる目標の探知と追尾を行った。この他にも築城基地でも探知試験が行われた。

  2010年7月〜12月にはレーダー電子戦シュミレータを用いて最終的な総合試験を行った。
 
39
所内試験の概要

13
所内試験で用いられたレーダー電子戦シュミレータ

24

茨城県沖合での試験の内容と結果

 各種試験の結果以下の成果が得られた

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目標と得られた成果

 多機能性に関しては時分割制御による各機能の高速同時切替により達成され、ESMの常時使用や各機能の同時使用が可能となった。

 レーダーとESMの協調動作は、非協調動作時に比べ11.2%の探知距離の延伸を実現した。これはレーダーの送信電力の63%増に相当する。また、協調動作により目標探知時間の短縮も図られた。

  ECMもスポットで照射可能な他、ESM自体も方位探知精度の向上や従来比で4倍近い探知距離の延伸が図られている。

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協調動作時との比較

«まとめ»
 当研究の実施により航空機、艦船等への適用が可能で、レーダ、ESM、ECM及び通信の複数機能を1つのアンテナで実現できる多機能RFセンサシステムに関する技術的知見を得ることができた。

 この研究成果は「先進統合センサ・システムの研究試作」、「統合電波システムの研究」に反映された。統合電波システムは海上自衛隊の30FFMのOPY-2多機能レーダーに活用されるなど、広帯域多機能レーダー技術の礎となっている。



[3次元高精度方探システム]

01
23
2008〜2013年

«概要»
 将来戦闘機に適用が期待される構成要素技術のうち、エレベーション及びアジマスの両方向標定が可能な3次元高精度方探システムの実現可能性に関する技術資料を得ることを目的とする研究

«背景・目的»
 各国ではレーダーなどに対する低探知性を有するステルス戦闘機の研究開発が進められており、自機のレーダーによる捜索では探知距離が短くなり、不利な情勢に追い込まれることとなる。

 敵機からの電波を捉え方位探知を行うESMは、ステルス機に対する有効な探知手段となりうる。ESMは自ら電波を発しないパッシブな探知手段であり、秘匿性に優れると共に探知距離もレーダーより長い。また赤外線を用いた探知手段より、雲などの天候の影響を受けにくいなど多くの利点を有する。

 しかし、既存の戦闘機のESMは前述のように敵機の方位探知を行える程の精度を持っていなかった。※詳細はスマートRFセンサの項目を参照

18
従来のESM
3次元方向の方探は不可能てあり2次元方向の
分解能も低く高精度な方探が不可能

 将来戦闘機への適用が期待される3次元方向の高精度な方探を実現するために、水平だけでなく垂直方向の方探も可能な3次元高精度方探システムの研究が必要であった。

«詳細»
 3次元高精度方探システムの研究で以下の運用構想に関する技術的資料の取得を目指した。

・水平及び垂直方向の秘匿性に優れた高精度
 な方位探知
・味方機とのデータリンクを活用したESMに
 よる測距
・上記の自ら電波を発しないパッシブな手段
 によるミサイルの射撃

01
3次元高精度方探システムの実現で可能となる運用構想

11
レーダーのみによる捜索と3次元高精度
方探システムによる捜索の比較

 本研究では技術資料を得るために以下が技術的課題となった。

(ア) 戦闘機用高精度方探技術
デジタル信号処理を取り入れた時間差方探方式による垂直及び水平方向方探の実現、LPI(Low Probability of Intercept)化されたレーダの送信尖頭電力低減や周波数拡散等への対応
※時間差方探方式:複数の離れた位置にあるアンテナで受信した電波の相互の到来時間差により、目標の方向を求める方式。前述の振幅比較方探方式と比べ方探精度が高い。

(イ) 3次元方向標定技術
 目標の垂直及び水平方探情報を組み合わせた統合方探処理による3次元空間に存在する目標の方向標定を行う統合方探処理機能の実現、データリンクを活用した僚機との連携及び他機器(火器管制レーダまたはIRST(Infra-Red Search and Track System))との連接による目標位置標定を用いて自ら電波を発することなくミサイルを発射するシステムの実現性検討

(ウ) 戦闘機搭載用3次元方探アンテナ技術
 試験母機となるF-2の飛行性能とアンテナ性能を考慮した小型軽量化された高精度方探アンテナをF-2の垂直尾翼に搭載するための適合性確保、将来の戦闘機に搭載するための高速度、高G機動、機体振動等の戦闘機搭載環境下に適合した総合的な戦闘機の性能を考慮した高精度方探アンテナの実現性検討


 本研究では3次元方位探知システムはMELCOを、試験母機となるF-2Bの改修にMHIを主契約者として研究試作(その1、2)と所内試験が実施された。

 研究試作(その1)では2008〜2010年にシステム設計、細部設計、関連試験及びF-2に適用した場合のシステム発展性検討を実施した。

 研究試作(その2)では2009〜2012年に装置製造、母機改修、関連試験、技術確認試験及び将来戦闘機に適用するためのシステム発展性検討を実施した。

49
試作された垂直尾翼用アンテナ

 2011年度末に、電子装備研究所(目黒
地区)のレーダ電子戦シミュレータにおいて、装置単体での模擬電波探知試験を実施した。

 2012年は、装置を母機へ搭載した形態において、母機適合性試験、方探性能地上試験及び方探性能飛行試験を実施した。同年6月~10月にかけて地上試験および飛行試験を航空自衛隊岐阜基地とその周辺空域で実施し、方探精度や受信感度等の性能を確認した。

37
アンテナの設置状況

47
垂直尾翼に設置された試作アンテナ

3D_radio_direction_finder_02
装置を搭載して飛行試験に向うF-2


 所内試験の結果として以下のような成果を得た。

(ア) 装置単体での技術確認試験により、垂直及び水平方向の方探が可能であることを確認するとともに、装置単体における最小受信感度及び瞬時受信帯域について研究目標を満足することを確認した。

(イ) 発展性検討において、自ら電波を発することなくミサイルを発射するシステムについて実現性を検討し、実現のために必要な技術要件等を明らかにした。

(ウ) 戦闘機搭載環境下における高精度方探アンテナの実現性について、シミュレーション解析等により適合性の見通しを得た。

«まとめ»
 3次元高精度方探を実現するセンサシステムを試作し、F-2Bを母機とする試験を行った。試験の結果、システムの妥当性を確認した。また、ESMによる射撃管制の発展可能性についての技術的要件などを明らかにした。




«エンジン関連(1)»

free_l (1)
防衛省/庁におけるジェットエンジン開発の系譜
この項目ではXF3-400からXF5までを対象とする

3rd-3
  1. 将来エンジンの研究(制御)高性能エンジン制御装置
  2. 将来エンジンの研究(エンジンシステム)
  3. 将来エンジンの研究(構造強度)高温タービン
  4. 将来エンジンの研究(熱空力)試験用ファン
  5. 将来エンジンの研究(エンジンシステムの研究)
  6. 将来エンジンの研究(2)将来エンジン主要構成要素の研究
  7. 将来エンジンの研究(3)実証エンジンの研究
  8. 先進材料のエンジン適用化技術に関する研究
  9. 分散型制御方式の研究
  10. エンジン圧縮系要素空力形状の研究





[将来エンジンの研究(制御)高性能エンジン制御装置]

40
1982〜1989年

[将来エンジンの研究(エンジンシステム)]

45
1984〜1990年

[将来エンジンの研究(構造強度)高温タービン]

11
1984〜1991年

[将来エンジンの研究(熱空力)試験用ファン]

41
1984〜1992年

[将来エンジンの研究エンジンシステムの研究]

48
1990〜1994年
※高性能エンジン制御装置からエンジンシステムの研究は、
同じ「将来エンジンの研究」として密接な関わりがある。
そして例によって資料も少ないためまとめて解説を行う。

«概要»
 将来の航空機用推進装置の独自技術を確立するため、再熱装置(アフターバーナ)・電子式燃料制御装置(FADEC)などを搭載したターボファンエンジン技術の確立を行う。

«背景・目的»
 日本は敗戦後、外国の航空機用エンジンの修理やライセンス生産などでエンジン工業の形態の再整理やジェット・エンジン技術を高めてきた。

 ジェットエンジンの国産化に向けて、T-1練習機に採用されたJ3-3エンジンで国産初のターボジェットエンジンを、T-4練習機に採用されたF3-30エンジンで国産初の小型機向けターボファンエンジンを開発した。

J3_KASM001
J3ターボジェットエンジン

800px-T-1B_Ashiya_(21928049760)
J3エンジンを搭載したT-1中等練習機

14
F3-30ターボファンエンジン

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F3-30を搭載したT-4中等練習機

 そして、独自の超音速機用エンジン技術の確立のために、超音速機用エンジンで一般的である比推力を大きくできるアフタ・バーナ付低バイパス比ターボファン・エンジンに関する技術資料の取得を目指した。

«詳細»
 高性能エンジン制御装置では航空機用エンジンの油圧機械式制御装置に替わるディジタル電子制御装置(FADEC)に関する研究が行われた。

 FADECはすべてのエンジン制御演算をディジタル計算機で行うため、その高度な演算能力を活かしてエンジン性能を最大限に発揮させるとともに,故障診断機能を備えたり制御機能を追加・変更することが容易なため,エンジン全体の開発や改善向上の点でも有利であるとされる。

 エンジンシステムでは、推力の増強装置である超音速機用再熱ファンエンジンの再熱装置(アフターバーナ)に関する基礎研究が行われた。

28
アフターバーナーのイメージ
高温の排気に燃料を噴射することで、
排気の膨張の促進(=出力の向上)を行う

 高温タービンでは、燃焼器の高温化による将来エンジンの高性能化に必要な高圧タービンに関する研究が行われた。

 高圧タービンは燃焼器からの高温の燃焼ガスを受け止め、タービンの回転として推力を取り出す。燃焼ガスの高温化は推力や燃費の改善に直結する。高温の燃焼ガスに耐える高温タービンの実現はエンジンの高性能化において非常に重要となる。

outline_im08
ターボファンエンジンの模式図
タービンは燃焼器からの高温の燃焼ガスと
自身の高速回転による遠心力に晒される


 試験用ファンでは、高圧力比・高効率ファンのための新型動翼である、衝撃波制御翼に関する研究が行われた。

 エンジンシステムの研究では、戦闘機の推進装置として不可欠な超音速機用再熱技術及びエンジンシステムインテグレーション技術に関する研究が行われた。

 そして1992年に国産初のアフターバーナー付きターボファンエンジンとしてXF3-400が防衛庁に納入された。

25
XF3-400

44
XF3-400のカットモデル

これまで研究された再熱ファンエンジン技術のテストベッドとしてXF3-30エンジンをベースに開発された。XF3-30からの改造部分としては、コアエンジン(圧縮機、燃焼機、高圧タービン)の改良による高温化やアフターバーナの追加による推力の増加、なとが挙げられる。

 高温化は当時としては最新の素材である単結晶材をタービンの動翼及び静翼への適用を行い、粉末冶金材を用いたタービンディスクなどにより達成された。

高温化によりF3-30と比べ

・推力:17kN→21kN(リヒート時34kN)
・重量:340kg→501kg
・推力重量比:5→7
・タービン入口温度:1050℃→1400℃

と各種性能の向上が図られている。

14
XF3-400の単結晶材を用いた動翼及び静翼

30
←燃焼機             低圧タービン→
静翼と動翼及びタービンディスクの相対位置
水色が静翼、青色が動翼、灰色部がタービンディスク

07
タービンディスクと動翼の関係
タービンは燃焼ガスを受ける動翼と、動翼を
保持するタービンディスクで構成される

 また、XF3-400には研究されていたFADECが適用された。FADECが故障した時のバックアップとして油圧機械式制御も用意されている。

14
XF3-400のFADEC

XF3-400の地上試験では,AB性能,電子→油圧バックアップ制御切換特性,過渡制御特性等に関するデータ取得、改善等を実施し、XF3-30のグロスポテンシャル性を実証した。

«まとめ»
XF3-400で日本において初めてアフターバーナ付エンジンの技術的成立性などを実証した。技術の蓄積によりXF3-400で最大推力に達成するまでの時間と手間は、XF3-1の70%程度で済んだという

また、このエンジンの成果はより本格的なアフターバーナー付きターボファンエンジンであるXF5にも活かされた。





[将来エンジンの研究(2)将来エンジン主要構成要素の研究]

41
47
1991〜1999年

«概要»
 再熱エンジンのファン、圧縮器、及び燃焼器等主要構成要素の性能向上に関する研究

«背景・目的»
  先述のXF3-400で再熱ファンエンジンに関する一定の成果を得た。その成果を活かし、
より本格的な再熱ファンエンジンの開発に資する研究を行った。

«詳細»
 一言で言うのなら後述のXF5エンジンの準備的な研究である。ファン・圧縮機・燃焼機・タービンなど構成要素毎の性能向上についての研究を行った。試作したものとして

・圧力比4.2の3段ファン
・圧力比6.3の6段圧縮機
・燃焼温度1550℃の燃焼機及びタービン
・制御用電子機器

があげられる。

また、将来の高運動機へ適用するノズルの候補として矩形の排気ノズルを上下方向へ向けることを可能とするXVN-10という推力偏向ノズルの研究を実施した。形としてはF-22の2次元推力偏向ノズルと類似している。試験は先述のXF3-400を用いて行われた。

41
XF3-400を用いて推力偏向試験を行うXVN-10

800px-P&W_F119
F-22の採用エンジンであるP&W F119の推力偏向ノズル

エンジンの後方に2次元推力偏向ノズルを接続し所定の上下方向の角度の推力偏向が可能であることを確認している。

この試験では推力の偏向角、ノズルフラップの冷却、機構等に関する基本的なデータを取得した。この推力偏向ノズルは,エンジン後方から見えるアフターバーナや低圧タービンなどがノズルフラップで隠されること及び高いアスペクト比(矩形ノズルの縦横比)を採用することで周りの空気と混ざりやすくなり,赤外線放射量低減にも効果があるものとされている。

«まとめ»
 各種試作を実施し、より本格的な再熱ファンエンジンの開発に資する技術的成果を得た。

«コラム:謎の IHI-17 エンジン»
 防衛省の資料では掲載が確認されていないが、IHI-17というF3-30をベースにIHIで社内開発された、日本初の純国産アフターバーナー付きターボファンエンジンが存在する。超音速戦闘機用エンジンの技術を取得するために開発された。IHIによるJ79エンジンのライセンス生産版の型番はJ-79-IHI-17Aであるが、IHI-17の文字を含むもののこちらは無関係である。

 先のTD-Xとは違い2008年と2012年の国際航空宇宙展(JA)で展示が確認されている。

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JA2008でのIHI-17

Car Watchより転載
12
JA2012でのIHI-17
 
 スペックは全長3000mm x 外径560mm、質量485kg、推力20kNとされている。画像は存在するものの、インターネットで閲覧可能な詳細な資料は確認できていない。

 JA2008では説明パネルも設置されたが、それを鮮明に映した画像は未確認である。僅かに、JA2012の画像からF3-30の後に製造された事は推測される。
 
情報提供を求む。






[将来エンジンの研究(3)実証エンジンの研究]

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48
1995〜2002年

«概要»
 主要構成要素の研究試作成果を統合し超音速戦闘機の推進装置として不可欠な高性能ターボファンエンジンの国産技術獲得の研究

«背景・目的»
 XF3-400や先の主要構成要素の研究で培った技術を基に、将来の超音速航空機などの推進装置として不可欠なアフタ・バーナ付ターボファン・エンジンの国産化を可能とする技術基盤を確立しその技術レベルを実証する。

«詳細»
技術実証のために実証エンジンXF5-1が試作された。1995年から2000年にかけて5回の試作が行われ、計測形態1基を含む4基のエンジン並びに構造強度(部品)及び補機試験用供試体を試作した。
※後の先進技術実証機の製造では、搭載エンジンであるXF5-1も新規に2基製造された。実証エンジンの研究による4基と、先進技術実証機の搭載のため設計変更された2基で、合計6基のXF5-1が製造された。先進技術実証機に搭載された型式のものを、XF5-1(FT)とする文書も存在する。

50
XF5-1

技術の蓄積によりXF5-1で最大推力に達成するまでの時間と手間は、XF3-1の30%程度で済んだという

   コアエンジンの高温化や軽量化によりXF3-400と比べ全体的な性能の向上が果たされた。


・推力:34kN→49kN(リヒート時)
・重量:501kg→644kg
・推力重量比7→8
・全体圧力比:14→26
・タービン入口温度1400℃→1600℃


設計にあたっては以下の点が考慮された。

① 全体圧力比,燃焼器出口温度およびアフ
 タ・バーナ出口温度の向上
②新素材の積極的な導入および薄肉化,一体
 化などによる軽量化
③ 機体システムとの交信機能
④ポストストールマニューバ ( PSM ) を考慮
 したディストーション耐性の確保および飛
 行領域の設定
⑤航空機搭載を考慮した十分な安全性・信
 頼性の確保
⑥運動ステルス機への搭載を念頭においた
 IFPCへの対応

30
XF5-1の構造
 
 各構造の特徴を述べる。
 


 ファン3段

・すべての作動領域で安定作動させるための
 CFRPの適用で軽量化された可変入口案翼 
 ( FIGV ) の装備

・ディストーション耐性と圧力損失の低減を
 図った3次元翼形状

・2段および3段の動翼とディスクを一体にし
 たブリスク構造を採用による軽量化

・2段および3段ブリスク一体化によるディス
 ク間の締結構造を排除と軽量化

04
CFRP製のFIGVと一体化されたブリスク



 圧縮機6段

・先述と同様の理由によるFIGVの装備

・衝撃波による圧力損失の低減を図る翼形状

・1段-2段ディスクおよび4段-5段の一体部
 品化による軽量化

・高温強度特性が良好な耐熱チタンのディス
 クや翼への採用と軽量化

05
圧縮機の静翼と動翼


 燃焼器

・3次元計算流体力学の適用による最適な空力
 形状の決定

・2枚の板の間に冷却空気を流すトランスピレ
   ーション冷却方式を採用した2重壁構造

・セラミックコーティングを適用した耐熱金
 属材料の採用

51
燃焼器と燃料噴射器
※燃焼器の周上部にある孔に20個の噴射器が取り付けられる。圧縮機で
圧縮された空気はライナ側面の小さい多数の孔からライナ内部
(燃焼スペース)に取り入れられ空気の渦を作り、燃料が噴射・点火
される。これにより生じた燃焼ガスが高圧タービンを駆動させる。

Screenshot_20190615-160718
燃焼器周辺の各機器の配置(画像はXF9-1の内部)



 高圧タービン

・三次元計算流体力学の適用などによって高
 負荷化、高効率化を図る

・静翼および動翼は高温での引っ張り強度が
 高く冷却空気削減効果も期待できる第2世
 代単結晶ニッケル基合金CMSX-4を採用

・静翼および動翼は冷却効率の高めるため複
 数の冷却効果を狙った複合翼を採用
※タービン自体は燃焼ガスの温度に耐えられないため、冷却技術を用いて熱からタービンを守る。冷却空気量が多くなると燃費や推力の悪化に繋がるため、冷却効率を上げたりタービン自体の耐熱性を高めるなど様々な工夫がされている。

・タービンディスクは高強度材料であるニ
 ッケル基粉末冶金合金AF115を採用

・応力が高くなるディスク本体部への貫通穴
 がないボルトレス構造を採用

・高圧タービンの回転で圧縮機を駆動
43
高圧タービンの動翼及び静翼
高速回転時に動翼にある小孔から空気が滲み出し
動翼を覆う事で熱から守る(フィルム冷却)



 低圧タービン

・動翼と同じく複合翼を採用

・圧縮機の4段目からの空気で冷却

・低圧タービンの回転でファンを駆動

35
低圧タービン



 アフターバーナー

・良好な着火と軽量化を図れる火花点火方式

・圧力損失の低減を図りつつ、安定燃焼性と
 燃焼効率が良好なフレームホルダ
※戦闘機がアフターバーナーを焚くとエンジンの後ろからタービンらしきものが映るが、その正体はフレームホルダある。排気速度をアフターバーナーの点火に適した速度に下げる役割がある。

・冷却性能と軽量性、強度を両立したライナ

・セラミック基複合材料(CMC)とチタンア
 ルミナイド合金を適用し,耐熱性向上と軽
 量化を図った、面積を可変可能な排気ノズル
※アフターバーナー作動時は加熱により排気体積が膨張(排気密度が低下)する。そのままだとエンジン後部の排気が膨張した分、コアエンジン部の空気が圧縮(=圧力の上昇)され作動に影響を及ぼしかねない。そのため排気面積の拡大で流速の変化や排気密度の低下といった変動を調節する。

19
アフターバーナー部の構造



 制御部

・主な機能は下記画像の通り

・バックアップも含め完全な2重のFADEC
(XF3-400ではバックアップは油圧機械式)

・2回の故障でも飛行を可能とする冗長性

・MIL-STD-1553BでのFLCCとの連結による
 IFPC機能(IFPCモード時では制御信号をパ
 イロットのスロットル指令からFLCCからの
 指令信号に切り替える)

・全飛行領域で適切にエンジンを制御するエ
 ンジン制御機能 

・故障箇所および故障内容を診断する故障診
 断機能

 ・ 故障内容に応じた適切なエンジン制御レベ
 ル( 7 段階 )の選択
22
主要制御と補機一覧

56
制御部の画像



 その他

制御・補機は次の①〜⑦よりなるが
① 電子制御系統 
② 潤滑油系統 
③ 燃料系統 
④ アクチュエータ系統
⑤ 点火系統 
⑥ 防氷系統
⑦ 機体表示用系統

これらをエンジンに装着しファン流の流路を形成するバイパスダクト(圧縮機〜低圧タービンまでのカバー部)は、化学的に除肉を行うケミカル・ミーリング加工を適用することによって軽量化を図っている。

50
バイパスダクト

エンジンの製造後には、エンジンを航空機に搭載するための安全性確認として耐久試験が行われた。アイドルからアフターバーナを使用した最大推力までの作動などを繰り返し行い、60時間相当の飛行時間に対する耐久性を確認した。

09
耐久試験を行うXF5-1

02
最大推力でのAB作動状態

その他には米軍規格MIL-E-5007Dに準拠した予備飛行定格試験(PFRT:Preliminary Flight Rating Test)の各試験項目を完了し、XF5-1は飛行試験に供しうることが実証された。空力推進研究施設内のエンジン高空性能試験装置(ATF)を用いた高空性能試験も実施された。

17
ATFに装着されたXF5-1

前述の通りXF5-1はPSMを考慮したエンジンのため、耐ディストーション性が求められる。関連研究である高運動飛行制御システムの研究では、耐ディストーション耐性について試験を行った。エンジン入口面にディストーションプレートを配置して、エンジン前面での気流の乱れを模擬しエンジンが健全に作動するのを確認した。

49
耐ディストーション性に関する試験

«まとめ»
XF5-1エンジンは国産として初の本格的アフタ・バーナ付ターボファン・エンジンであり技術基盤の確立および技術レベルの向上・実証への大きな貢献を果たした。

 49kN級再熱ファンエンジンとしては世界最軽量級を実現し、XF3-30に比べ耐ディストーション性能が3倍と確実な進歩を示している。

前述の高運動飛行制御システムの研究や先進技術実証機にも密接な関係をもち、試験に用いられるなど高運動ステルス技術の発展にも繋がった。

14
XF5-1と各種研究との関係

エンジン・ファミリー化技術によってXF5-1 エンジンの技術がP-1哨戒機に搭載されているF7-10 エンジンに適用されるなど技術波及効果の大きな研究であった。








[先進材料のエンジン適用化技術に関する研究]

05
2006〜2009年

«概要»
先進材料を航空機用エンジンに関する研究部品に適用するために必要な構造および評価方法に関する研究



[分散型制御方式の研究]

32
2006〜2011年

«概要»
エンジン制御を分散化して冗長性等を向上させる研究



[エンジン圧縮系要素空力形状の研究]

05
2008〜2010年

«概要»
将来の航空機用エンジン圧縮系空力要素について数値解析を利用した空力性能向上に関する研究




«機体構造関連»

56
  1. 新複合材構造の研究
  2. 先進胴体構造の研究
  3. 先進隔壁構造の研究
  4. 先進航空機構造の研究
  5. 降着装置の軽量化の研究
  6. スマート・スキン機体構造の研究



[新複合材構造の研究]

22
01
1994〜2003年

«概要»
   軽量かつ生存性・整備性の高い航空機を実現するための、従来の複合材にない耐損傷性及び適用可能性に優れた特性を有する3次元複合材に関する研究

«背景・目的»
 F-2は一体成形複合材主翼を採用している。これにより積層型炭素系複合材の航空機への本格的な適用が実現した。しかし積層型の構造は炭素繊維などの 縦/横/斜め糸 で織られた織物(層)を積み重ねて樹脂で焼き固めるもので、層を引っ張る力にはとても強いものの層と層とを剥がす力に弱い性質があった。

 このため主翼など、薄く広い板状の部品にしか複合材への適用ができなかった。

43
種類別の航空機構造
F-2の場合、下面外板と桁が一体で成型されている

 そこで、航空機への適用性に優れ且つ、複雑な形状を可能とするあらゆる方向への強度を高めた3次元複合材の研究を行った。
※3次元複合材:2種類以上の素材を複合した複合材料のうち、繊維状の強化材料を3次元的に配置したもの。

«詳細»
 適用範囲を広げるには従来の複合材料の、層と層を引っ張る力に弱いという性質の克服が課題であった。そのため、層と層とをZ糸という厚み方向のドライの糸で縫い合わせて三次元の織物にすることで、剥がれにくくする手法の実現が目指された。

02
3次元織物複合材の概要
層と層を縫い合わせるZ糸が導入されている

3D TIMONのHPより転載
 ResinTransferMolding
3次元複合材の成型法である
RTM法(レンジ・トランスファー・モールディング)

 3次元複合材の実現のために

①設計・解析技術
②製織技術
③樹脂浸透技術
④成型加工技術

の4点の技術項目の達成が必要とされた。

 ①の達成は、設計基準を定めるとともに有限要素法とユニットセル法を組み合わせた3次元複合材強度解析法を中心とした解析基準を設定することで実現した。
※ユニットセル法::繊維と樹脂の最小構成となる単位(ユニットセル)でモデル化し、その3次元方向の強度を算出することにより、複合材構造物全体の強度を検討する方法

     ②の達成は、面内4軸に面外1軸を加えた複雑形状部品の5軸3次元製織法を開発し達成された。これには高密度繊維配向、面内糸のうねり低減、面外糸の配置と締め付け及び製織の一部自動化を含む。

 ③の達成は、厚板3次元織物に対する樹脂含浸・硬化技術を取得し達成された。これには金型技術、温度プロセス、保圧技術及び低粘度樹脂の採用を含む。

 ④の達成は、機能部品への複合材の適用技術を開発し達成された。これには、異形形状、丸棒及び円筒形状部品と摺動部対策を組み合わせた油圧アクチュエータ(差動装置)への適用を含む。

 また、実大部品の成形技術を開発した。これには大型化及び発展性を見込んだスカーフ結合方式 及びくさび効果による異種部分との結合等の技術を含む。

 また、①〜④の技術資料を得るために1994〜2001年にかけて下記の各種航空機部品が試作された。

55
各試作品の概要
(航空機の画像はあくまでイメージ)

06
上記の翼胴結合金具の実物画像
100トンの荷重に耐え、従来の金属性の
ものと比較して約30%の軽量化がなされた。

«まとめ»
 20億円が投入された当研究の実施により航空機への複合材料の適用範囲拡大に資する、3次元複合材料の実現に必要な技術課題の達成と試作品の目標性能の達成がなされた。

 特に、製織技術及び樹脂含浸技術については、我が国では研究段階であったものを応用段階へと発展させたものであり、3次元複合材に関する設計、製造分野での固有の技術に成り得たものと評価がなされている。



[先進胴体構造の研究]

08
16
1999〜2002年

[先進隔壁構造の研究]

38
2003〜2006年

[先進航空機構造の研究]

25
2007〜2009年
※先進胴体構造・先進隔壁構造・先進航空機構造の研究は密接な関係を持ち、資料も少ないためまとめて紹介する

«概要»
 使用温度環境の厳しい胴体構造の軽量化とコスト低減を目指し、耐熱樹脂を活用した複合材料及び新しい加工方法を用いたチタン系金属材料、ナノ複合材の適用に向けた研究

«目的・背景»
 戦闘機の胴体構造は様々な艤装を効率的に納めるために複雑な曲面と部材配置を有し、且つエンジン及びダクトからの熱に継続的に晒される。F-2の主翼に使われた複合材は母材であるエポキシ樹脂の特性に制約され、耐熱性は特段に高いものではなく、複合材のエンジン周辺構造への適用は困難であった。

 使用温度環境の厳しい胴体構造の軽量化とコスト低減を実現する材料の、基礎特性の確認と胴体隔壁及び外板への適用研究を実施した。

«詳細»
 耐熱性に優れた耐熱樹脂を活用した複合材料及び新しい加工方法を用いたチタン系金属材料を候補として材料基礎特性の検討を行った。複合材は耐熱性に優れたビスマレイミド樹脂及びポリシアネート樹脂を用いた耐熱複合材を候補材料として検討を進め、クーポン試験及び要素試験により基礎的技術資料を得た。

 なお、本研究は、同時期に次世代超音速機への耐熱三次元複合材の適用に関する研究を実施していた宇宙航空研究開発機構(JAXA)との研究協力項目の一つとして取り上げられ、試験データ等の交換を通じ、研究の効率化が図られた。

08
試験を行うチタン合金片

 金属材料については、超塑性/拡散接合チタン合金の適用について検討を実施してきた。チタン合金は耐熱性や比強度に優れ、エンジン周辺構造等にこれまでも使用されてきた実績があるが、加工性に難があることで知られている。

 そこで、新しい加工方法(超塑性成形、拡散接合)を適用し、一次構造部材である胴体隔壁として十分な形状及び強度を有しつつも安価に製造する技術について検討・試験を実施し、接合面の強度特性や多層構造設計技術に関する指針を得た。先進隔壁構造の研究はSUBARUが担当をしている。

 また、2007年以降は技術的成熟度が高まってきたナノ複合材等の可能性を追求すべく、先進航空機構造の研究を実施している。


[降着装置の軽量化の研究]

26
2005〜2006年

«概要»
 将来の航空機(戦闘機)の降着装置の軽量化を図るため、降着装置のうち、ドラッグストラット、旋回機構及び昇降機構部等への複合材等の適用のため国内における関連技術及び基礎材料の候補調査



[スマート・スキン機体構造の研究]

56
03
2006〜2010年

«概要»
 航空機の外形形状に沿って配置可能な空中線システムであるスマート・スキンセンサに適合した、機体の変形がセンサ精度に悪影響を与えないような高強度/高剛性でかつ軽量な構造に関する研究

«目的・背景»

36
スマートスキンセンサの搭載で可能になる運用構想

 諸外国の最新鋭戦闘機は低被観測性や高運動性を兼ね備える傾向がある。それらに対処に有効な、スマートスキンセンサの配置を可能とする胴体構造の研究と各種研究試作を行った。
※スマートスキンセンサとは航空機の外形形状に沿って配置可能な空中線システムである

«詳細»
 スマート・スキンセンサの搭載には以下の事が求められる。

・センサ部の高機動時での負荷への耐性
・ スマート・スキンセンサ及び周辺構造との
     段差隙間によるRCSの増加の極限
・機体の変形がセンサ精度に悪影響を与えな
 いような軽量高剛性構造技術を適用した
 前胴部構造

 これらを達成するためにMHIが主契約者となり、TRDI第3開発室による機体の細部仕様や研究コスト管理、及び研究スケジュールの確保を重点とした管理のもと、MHIの設計者が最大約80名集まり、前胴供試体等の設計、製造を行った。


 研試(その1)ではスマート・スキン・センサの機体への取り付けの設計に関する資料を得る事を目的とした。そのため、搭載を想定したレーダのシステム設計、関連試験及びスマート・スキン構造要素供試体の設計及び製造を行った。

46
研試(その1)での内容

 2008年の所内試験のスマート・スキン構造要素試験ではセンサ構造要素試験を反映した構造層の強度計算を実施し、強度成立性を確認した。RCS増加を抑制できることを確認した。

 また、センサのRCSの測定値が推算値と少し差異がある事が確認された。差異の原因として内部構造の影響によるものと判明し、内部構造の再検討を行って改善を図った。

35
センサ構造の強度成立性の確認

 研試(その2)では研試(その1)での成果を基に、センサ及びセンサを搭載した胴体構造に関する資料を得るため、構造設計、関連試験及び風洞試験模型の設計及び製造を行った。

17
研試(その2)の概要

56
制作された前胴構造

28
前胴構造強度試験の様子

 所内試験ではスマート・スキン風洞試験として、平成22年度に試作したウェポンベイの模擬を含む全機低速風洞試験模型及び全機高速風洞試験模型の風洞試験により、その試験評価を実施した。

 平成22年6月から7月にかけて、札幌試験場の三音速風洞において全機高速風洞試験を、平成22年9月から11月にかけて、航空装備研究所の低速風洞において全機低速風洞試験を行った。

 両風洞試験とも、ウェポンベイの幅を2種、深さを2種、扉サイズを2種、扉開度を2種の各々の組合で風洞試験を行い、全機6分力を計測し、ウェポンベイの無い形態(クリーン形態)との比較をし、ウェポンベイや扉の形態による全機6分力への影響に関する基礎的なデータを得た。

 これらにより、ウェポン・ベイの有無による空力データを用いて前胴部荷重基準点における荷重への影響を確認し、その荷重で前胴部の構造強度が成立することを確認した。

38
試作された内装ウェポン扉付き風洞試験模型

15
ウェポン扉を開いた状態で低速風洞試験を行う様子

56
ウェポン扉を閉じた状態で高速風洞試験を行う様子

«まとめ»
 スマート・スキン機体構造を適用して前胴部重量を低減する実現性を示すとともに、構造強度が成立することを確認した。また、ウェポン・ベイに関する空力データを用いて、前胴部の構造強度が成立することを確認した。更にスマート・スキンセンサ搭載によるRCS増加の低減を図ることができた。



研究開発詳細(1)
 
 研究開発詳細(1)では2010年に発表され、初めて明確にF-2戦闘機後継の選択肢として必要な研究を明記した「将来戦闘機に関する研究開発ビジョン」より以前の、事前の研究開発について述べる。

 «コラム»は明確な出典が無いが個人的に興味深い事象について取り上げるため、資料性は担保しない。
ビジョン以前の研究は、公式としては将来の戦闘機開発の技術蓄積が主眼であり具体的な装備品のニーズに沿ったものでは無かった

«飛行制御関連(1)»

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  1. 高機動/自己修復飛行制御システムの研究
  2. 自己修復飛行制御システムの研究
  3. 将来操縦システムの研究
  4. 高運動飛行制御システムの研究
  5. 電動アクチュエータの研究



[高機動/自己修復飛行制御システムの研究]


«概要»
失速域での操縦性・安定性と、システムの耐故障・損傷性の確保に関する研究。基礎的研究は1986年から行われていた。



[自己修復飛行制御システムの研究]

14
39
1995〜(2006)年
※ここでは2000年までの試験について述べる

«概要»
耐故障・損傷性を有する飛行制御システムの研究



«背景・目的»
飛行機の安全性を確保するため、舵面の故障や損傷が発生しても、飛行を維持する必要がある。このため、ロバスト性に優れる飛行制御システムを研究する。

また、戦闘機など小型高性能機でのポストストール機動等の実現には、推力偏向による飛行制御の研究が不可欠であった。

※ロバスト性:外乱や機体特性の変化が生じても、安定性・制御性の
劣化を防ぐ頑健性のこと




«詳細»
目標の実現のために下記の①〜③についての研究が行われた。

①舵面等の故障・損傷及び高迎角飛行領域での、空力
 特性の変動に対処できる飛行制御則の設計

②舵面の故障・損傷を補償する、舵面使用方法の
 再構築

③空力舵面制御・推力偏向を最適に制御する、
 再構築飛行制御機能を持つ、制御則構成の設計

③推力偏向制御による、高仰角飛行領域での高機動
 機体の運動制御

 
飛行制御アルゴリズムや評価法に関する基礎的研究(86年〜)の成果を検証するため、95年より自己修復飛行制御システムの設計が開始された。

性能確認試験(97〜98年)ではコンピュータ・シミュレーションによる、自己修復飛行制御システムのロバスト性に関する試験を行った。




機体の墜落時のきりもみ特性の計測のため、通常の
風洞と異なり垂直方向への気流を発生させられる。
通常の風洞のように水平方向への気流の発生も可能。


各技術の妥当性評価のため、動的風洞装置が試作され、2000年に試験を行った。動的風洞試験装置は垂直兼用風洞を用いる。

動的風洞試験装置には動的風洞模型がある。以下にその特徴を記す。





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防衛技術シンポジウム2009で展示された
動的風洞模型の本体

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模型本体の尾部
高圧空気噴出口と推力偏向パドル、
左右ボディフラップが確認できる



動的風洞模型は

・カナード
・主翼前縁フラップ
・主翼後縁フラップ
・垂直尾翼
・尾部横のボディフラップ

の左右各2箇所・合計10個の舵面を備える。また、尾部に垂直偏向パドルも有する。





試験時は模型背部にアンビリカルケーブルを接続する。
ケーブルは制御装置と模型に電気的接続を与え、模型のセンサからの飛行情報と制御装置からの制御信号を伝送する。

また、模型にはケーブルから高圧空気が供給される。
高圧空気は模型尾部の高圧空気噴出口から噴出し、推力として働く。

模型は風洞風路外に逸脱しないよう、外部装置による全自動の位置計測と姿勢制御が行われる。

 



試験当初、模型は胴体部を貫通する主支持棒により安定化され、下記(a)(b)の形態で飛行運動を模擬した。
これによって設計された制御則の妥当性を確認した。


本装置の特徴としてフリーフライトが挙げられる。
模型は(b)の形態で固定され、姿勢制御やトリム状態を確立し、主支持棒が急速降下しフリーフライトに移る。
フリーフライト時は模型は風洞内で浮揚し、外部からはアンビリカルケーブルと接続されるのみである。
フリーフライトは、(a)(b)の形態で制御則の妥当性を確認した後に実施された。



試験の結果、風速22.4 m/s、迎角約30 degで約70秒間のフリーフライトを実現した。
ケーブルからの抗力で自由大気中の飛行とは異なる運動特性とはなるが、実空力下での自己修復飛行制御システムの妥当性を評価した。




 
«まとめ»
MHIが主契約者となりTRDI第3研究室と共同で行われた当研究は、通常飛行時の通常迎角と高機動時の高迎角を想定した試験において自己修復飛行制御システムの妥当性を確認した。また、動的風洞試験の試験方法の指針を得た。






«コラム:幻の TD-X ?»

07
jane'sによるTD-Xの実機イメージ
外見は前述の動的風洞模型と類似している

一部メディアによると、2000年代前半にXF3-400を2基搭載したTD-X(Technology Demonstrator eXperimental)という双発実証機を作るという情報が存在した。
ステルス性や光信号化された操縦システムを備えた、F-15Jの後継機に向けての研究の1つだったという。

しかし、実際にはそのような機体は製造されておらず、防衛省/庁の資料にも該当する情報は存在しない。
何故そのような情報が出現したのか・関係者の認識はどのようなものだったのかも含め謎に包まれている。






[将来操縦システムの研究]

42
56
1992〜1999年

«概要»
航空機の油圧系統の高圧化や操縦信号の光信号化(FBL/フライ・バイ・ライト)を図った操縦システムの研究

«背景・目的»
将来の操縦システムとして航空機の油圧系統の高圧化による軽量化や操縦系統のFBL化による小型化を図った研究。

操縦系統のFBL化は1978年より基礎的検討が開始された。油圧系統は1985年の航空機用8000psi油圧システムの研究で負荷能動制御型の高圧油圧システムが検討された。

1988年からは光信号系と負荷能動型高圧油圧システムとを統合し、航空機用光油圧操縦システムの研究として総合性能の確認を行った。

«詳細»
 1992年からは操縦桿から舵面制御アクチュエータまでの一系統の将来操縦システムの研究試作に着手した。1995年からは3本のアクチュエータを同時制御する将来操縦システムの研究試作に着手した。また、油圧システムは従来の3000psiから8000psiへの高圧化が図られた。

42
将来操縦システムの地上リグ試験装置

«まとめ»
 研究試作によりアクチュエータの同時制御を行う将来操縦システムのシステムの成立性の見通しを得た。油圧系統の高圧化により従来比で約20%の見通しを得、操縦系統の小型軽量化に資するものとなった。

 この成果は1997年より着手された次世代操縦システムの研究に反映された。(ここでは、次世代操縦システム自体は将来操縦システムの研究として一括にして紹介している。)

 後に高圧油圧システムは後述する高運動飛行制御システムの研究にも採用された。FBLはP-1哨戒機で全面的に操縦系統として採用となった。2010年時点で電磁波の影響を受けない操縦システムとして直ぐに将来戦闘機にむけての開発移行が可能なレベルとされた。



[高運動飛行制御システムの研究]

34
24
2000〜2008年

«概要»
 電波、可視光、赤外線などへのステルス性やエンジン・舵面の統合制御技術( IFPC: IntegratedFlight Propulsion Control)を適用した高運動飛行制御技術の研究

«背景»
 高運動性とステルス性の両立という、相反する要求が将来小型航空機に要求される。

 これを達成する為に電波・可視光・赤外線などへのステルス技術や、エンジン制御と舵面による空力での飛行制御を統合した IFPCなどの成立性、有効性を地上試験で確認する必要があった。

«詳細»
 開発にあたってはMHIが主契約者となりMHI、KHI、SUBARU、IHIの重工4社の最大50人の設計者による体制で開発が推進された。TRDI側は技術開発官第3開発室が機体の細部仕様や研究コスト管理、及び研究スケジュールの確保を重点として研究業務を推進した。


 研試(1)では高運動性とステルス性を有する小型航空機のシステム基礎構想を策定し、それに基づくリグ試験構想を策定した。また、この時に試作された推力偏向パドルはアフターバーナー付き実証エンジン(XF5)の 2200 ℃以上のエンジン噴流に所要の時間、直接挿入されることから高熱性に優れたインコネル材を用いた設計である。

 2003年からの所内試験ではIHIの瑞穂工場において投入された1枚の推力偏向パドルが偏向時に実証エンジン1号機のエンジン排気温度・圧力環境に耐えられることを確認した。この際に実証エンジンの推力が目標値に達しなかったため、耐圧性能については解析を含めて確認した。

57
推力偏向パドルと推力偏向機構

※パドルのギザギザの形状は、IRステルスの一環としてパドルでエンジン噴流を攪拌することによるIR低減効果を把握するための風洞試験及び熱流動数値解析を行いその結果を反映させたものである。
また、可視光へのステルス性として縮小模型を用いた視認性に関する試験を実施し,コントラストを変化させることにより視認性を制御するた
めに必要となる照明デバイスの必要輝度検討を実施している。


研試(2)と研試(3)ではIFPC技術を適用した高運動飛行制御について、この実現に必要な機体とエンジンの適合性に関する資料を得るため実証エンジンを搭載し、高運動性及びステルス性を有する超音速小型航空機システム基本構想を策定した。その結果に基づいてリグ試験構想を策定した。

また、ステルス性を考慮しつつ高迎角・高速時にエンジンが不安定とならない機体のインテーク設計を実施し、低速飛行模擬用ディストーション・スクリーンと高速飛行模擬用ディストーション・スクリーンを試作した。
49
高迎角時のインテークダクト内の気流の乱れ
エンジン入口にディストーションプレートを配置
※ディストーション・スクリーンとはインテークによるエンジン前面での空気の乱れを模擬する装置である

2005年からの所内試験は札幌試験場においてエンジン適合性試験が行われた。先述の2種類のスクリーンを用いてインテークが発生する気流の乱れを模擬し実証エンジンが健全に作動することを確認した。ディストーションプレートが配置された箇所は圧力が低下している。

32
耐ディストーション耐性の評価

06
試験が行われた札幌試験場

 
研試(その4)ではステルス性と高運動性を両立させる機体形状を検討し、機体形状の電波反射特性に関するデータを取得するため、全機実大RCS試験模型を設計・製作した。

 また、飛行制御システム基本構想及び飛御システム基本仕様を策定するとともに、IFPC機能の成立性を確認する試験に供する、FLCC(Flight Control Computer)及び
ACC(Actuator Control Computer)と上記画像の推力偏向機構を設計・試作した。


 機体形状設計においては

・電波ステルス性と高運動性の実現
・機体上のエッジからの反射を一方向に集約
・前方からの最大の散乱源であるインテーク
 ダクトのステルス化
・コックピット内部の機器、パイロットから
 の乱反射の低減
・機体表面外板からの反射の低減

の実現に重きを置き

・高迎角領域でのトリム飛行が可能となるよ
 うな形状設計
・機体のエッジ方向の統一と直交面の削減
・ダクト壁面への電波吸収材の使用
・ダクトの湾曲化
・視認性も両立したITO(Indium Tin Oxide)
 コーティングの風防、キャノピへの適用
・外板の大型化とフレームレス化による隙間
 の減少、表面をメッシュで被覆

などが施された。

02
設計された機体の三面図

 全機実大RCS模型については、研究の初期段階では,全機形状の1/10の縮小模型を使ったRCS計測やインテークダクト、構造物、装備品などの機体部分を実大サイズで計測する試験を実施した。そして設計した機体の詳細形状まで含め,各要素の複合による電波特性を全機レベルで総合的に把握するために全機の実大模型を用いたRCS計測を2005年に実施した。

 全機レベルでの計測を実施するに当たり、国内に計測可能な施設が存在しないためフランス装備庁(DGA)の CREAR SOLANGE(大型電波暗室)において、電波反射特性データを取得した。試験は屋内設備の中で行なわれケブラーロープ4本で懸架した実大模型に対して電波を照射し、供試体からの反射波を受信アンテナで受信することにより電波反射量を計測した。

34
全機実大RCS模型
※本事業の終了後はお役御免となったように思われる本模型だが、2017年以降の「ステルス評価装置の性能確認試験」では本模型を用いたRCSの静的計測を行うという。小型航空機、艦艇、車両等の対レーダ被探知性を評価し、将来の戦闘機等の残存性向上に資することをねらいとし、小型航空機等のレーダ反射断面積(RCS: Radar Cross Section)の屋外計測・評価手法に関する技術資料を得る目的で行われる。

18
フランスで試験を行う全機実大RCS模型

 IFPC機能の実現の為にFLCCはエンジンコントローラである FADEC(Full Authority Digital Engine Control)と機能連接を実現している。
推力偏向パドルはFLCCと連接したACCと機体に装備されたアクチュエータよって駆動される。油圧システムであるアクチュエータは5000psiの高圧化がなされている。

 舵面駆動系統も同様に高圧油圧化されたFBW(Fly By Wire)技術を採用しているが、前縁フラップ駆動系にはFBL技術が適用されている。
46
試作されたFLCCとACC

51

46
操作系統の全体図
1枚目左下画像は全機実大RCS模型の後部

 2007年からの所内試験では浜松基地のエンジン・テストセルにて、推力偏向機構/IFPC 試験として推力偏向成分を計測した。3枚のパドルを実証エンジン噴流に投入しパドル操舵による推力偏向能力、耐熱性、耐久性を確認した。また、パドル・アクチュエータが正常に作動することを確認した。

 更に、クローズドループ ・シミュレー ションによりIFPC機能の成立性を確認し試験結果を反映し、実飛行条件における高迎角飛行領域での縦機動時の機体運動を推算・設計目標を満足することを確認した。

00
推力偏向試験時の様子


 研試(その5)では

・高迎角域での飛行特性
・先進エアデータ・センサ機能
・失速遷移領域近傍における空力特性
・耐故障性・損傷性を向上させた自己修復飛
 行制御機能におけるアルゴリズム設計手法
 の妥当性

17
先進エアデータセンサの概要

13
自己修復飛行制御
舵面Dの故障を検知し他の舵面で
補償するような飛行制御の再構築を行う


などに関する技術データ取得を目的とした。
これらの取得のために無線操縦により飛行可能かつステルス性・高運動性を有する機体形状を持つ22%スケールモデル、および専用地上装置を試作した。スケールモデルは研試(その4)までに設計された機体形状と同一である。また、自己修復飛行制御機能の概要については先述のとおりである。

23
22%スケールモデル

07
スケールモデルの諸元及び機能

58
飛行を行うスケールモデル

 飛行試験は北海道大樹町多目的航空公園で行った。試験は2007年9月3日から11月2日まで2ヶ月間で33回行われた。

 自己修復飛行制御の試験ではラダー・水平尾翼・外/内弦フラッペロンの固着もしくは欠損を想定した試験が行われた。

 先進エアデータセンサの試験では目標迎角時でのエアデータを取得した。

27
試験の概要

57
自己修復飛行制御の試験

08
試験ケース

31
エアデータ取得試験

上記の技術データの取得や機能の確認を行った。最後の33回目に予期し得ない風向の変動と逆光による操縦者の機体姿勢視認困難により墜落、大破したが、いずれの機能も良好なデータを取得した。

 研試(その6)ではインテークダクトの電波反射を低減させるレーダ・ブロッカの成立性を検討するため、レーダ・ブロッカの基礎設計を行うとともに電波反射特性に関する技術資料を得るための供試体を試作した。

 所内研究の低被観測性試験ではエンジンファン付近においてレ-ダ・ブロッカを取り付けた形態でRCS値と取付による空力特性の変動を計測し、ステルス性に有効であることを確認した。

27
試作されたレーダーブロッカ

20
実証エンジンの入口に取付けられたブロッカのイメージ

«まとめ»
 本研究において、低被観測性及び高運動性を兼ね備えた将来小型航空機を実現するために必要となるステルス技術に関しては設計した小型航空機が欧米の代表的なステルス機に匹敵するステルス性を有することを全機実大模型計測により確認した。また推力偏向機能を備えた高運動性を実現するための操縦系統の地上試験装置の設計・製作を行い,FBL /高圧油圧機能を含めたエンジン飛行制御統合技術の地上実証を実施した。

 飛行試験では先進エアデータセンサの成立性が確認され、自己修復飛行制御は舵面故障でも飛行特性を正常時相当に復帰させることが可能であり、その有効性を確認した。

 この研究成果は後の先進技術実証機へと反映されることとなった。



[実証用自己修復飛行制御システムの研究]

48
2002〜2003年

«概要»
 フラップや方向舵などの舵面が壊れても、制御プログラムを修正して安全に飛行を続けられる自己修復飛行制御システムの研究

«補足»
 当システムの概要に関しては前述の通りである。この研究は実施時期的に前述の飛行試験を行った22%スケールモデルで試験された制御システムと同一だと考えられる。



[電動アクチュエータの研究]

50
52
2004〜2006年

«概要»
   戦闘機の機動性向上等を図るため、アクチュエーションシステムを小型軽量化する技術について研究し、舵面制御技術に関する技術資料を得る。

«目的・背景»
 従来は舵面駆動を油圧アクチュエータを用いていた。しかし、油圧系配管は機内容積の圧迫や整備性の低下を招いていた。

 そこで、小型高性能機の舵面駆動を小型軽量な電動アクチュエータによって代替(PBW: Power By Wire)し、操縦システムの軽量化や整備性の向上等に寄与する研究。

«詳細»
 本研究ではPBWの代表的な形式のひとつであるEHAについて研究が実施された。

 従来は機内に油圧配管を通す必要があった。EHAでは油圧系を舵面部に局所化し、機内の油圧配管を廃する事が可能になった。

 構造としては、電動モータと油圧ポンプ、シリンダ等から構成される。油圧ポンプに直結された電動モータの回転速度を正逆両方向に制御することにより、シリンダへの吐出油量を変化させてシリンダの位置制御を行う。

08
従来の油圧アクチュエータとPBWの主な形式
EHAは固着し難いなどの利点が存在する

 研究の初期段階では以下のEHA構成要素について試作及び試験を行った。

・電動モータ
・油圧ポンプ
・シリンダ

35
試作されたEHA要素モデル

10
電動モータの主要諸元

 試作した要素モデルでは電動モータのコイル及び回転数検知センサを3重とし、それぞれ独立のモータドライバにより制御する。油圧ポンプ等は1重構成で定格圧力は21MPa(3000psi)である。


 試験では舵面アクチュエータとしての基本
的な性能である

・舵角特性
・無負荷最大作動速度
・最大出力等

を計測する性能試験と、負荷状態において各種作動を行い電動モータの温度上昇(発熱)に関するデータを取得する負荷作動試験を実施した。

 試験の結果、試作したEHA要素モデルは今 回設定した要求値を満足し、舵面駆動アクチュエータとしての基本的な動作に問題はないことを確認した。

53
性能試験試験で得られた要素モデルの主要性能

要素モデルの試作及び試験により舵面駆動用EHAに関する技術的な基礎を確立した。また、モータの発熱に関しても今回の供試体に関して所要のデータを取得することができた。

 第2段階として実機搭載を想定し、各構成要素を一体化するなど小型軽量化を図った供試体を特別研究にて仮作した。舵面駆動に必要な機能・性能等の実現に関する技術資料を取得した。

34
試作された電動アクチュエータ

 また、航空機の電動化の実現に必要となる電源システムについて、高電圧電源システム供試体を所内研究にて仮作し、電力変換機能、電力遮断機能及び回生電力処理機能の実現に関する技術資料を取得した。

15
試作された高圧電源システム

«まとめ»
 電動アクチュエータの成立性について見通しを得た。





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