«機体構造関連(2-2)»
[シート型・塗料型電波吸収体の研究]
2011〜2012年
«概要»
戦闘機のステルス性の向上に必要な厳しい耐環境性と吸収性能を持つ電波吸収体(RAM: Radar Absorbing Material)に関する研究
«背景・目的»
現在、飛躍的に進化したレーダから隠れるため戦闘機にはステルス性の向上が求められており、形状ステルスと電波吸収体の両面から研究が必要となる。
«詳細»
本研究では、カーボン系材料を用いたシート型・塗料型電波吸収体の特別研究を実施し、RAMの電波吸収効果のシミュレーション及び解析、適用箇所の最適化、各種耐環境性試験等を行った。
2011年は施工性がよいシート形状の2層構成の電波吸収体を製作して高帯域化を図った。また、耐候性試験や剥離性試験、電波吸収特性の温度依存性試験等を実施して、戦闘機プラットフォームへの適用について検討した。
2012年には形状ステルスが施された戦闘機のギャップミスマッチ(機体構造の隙間)等への適用が期待される塗料タイプの電波吸収体について研究が進められた。以下にRAMの航空機適用に向けた各種耐環境試験の画像を挙げる。
柔軟性試験

燃焼性試験

振動試験
耐環境試験の結果、試作したRAMがMIL規格(MILitary Standard:米軍が使用する物資、装備品などの規格)の15項目に適合していることを確認した。
上記のRAMの設計試作と並行して、RAM適用効果のシミュレーションと解析が行われた。RAMの適用箇所の最適化、その効果について、シミュレーション及び解析を実施した。
特にインテークダクト及びエンジンについては、「インテークダクト及びエンジンにおけるレーダ反射断面積の低減」という名目で、適切な部位への電波吸収体の適用による RCSの低減に関する研究もなされた。
該当研究では、少ない反射回数でエンジンへ電波が到達し、電波吸収体が効率的に機能しない浅い入射角の電波における反射強度の低減が目指された。また、エンジンからの反射低減も含めた以上2点がRCS低減の課題となった。
した電波入射角による反射回数の差
反射回数が少ないとRAMによる反射
電波の吸収が不十分になる
※本研究でストレートダクトをモデルとした背景として、専用のレーダブロッカ不要かつ、曲がりダクトに比して空力的にも優れたシンプルな構造で確かなステルス性の確保を研究の狙いにした事が挙げられる。
課題解決のため先に挙げた、カーボン系材料を用いた広帯域にわたるRCS低減と浅い電波入射角に対応し、耐環境性を有するRAMの設計・検討を行った。
インテーク部に関しては、インテーク前部にRAMを適用しRCSの低減を図った。エンジンからの反射波に対しては、エンジン性能への影響が少ない IGV(入口案内翼)、最前静翼及びファンケースにRAMの適用を検討した。
電磁界解析において、正面方向近傍における全金属との差では、各種レーダに用いられる周波数帯域で電波吸収体による RCS 低減効果が得られた。このRCS低減量は、脅威レーダの探知距離を半分程度に減らす効果があることを確認した。
«まとめ»
戦闘機のステルス化に必要な各種性能を備えたRAMを詩作し、RAM適用箇所のシミュレーション及び解析を行い、戦闘機のステルス化に関する知見を得た。
[ステルス化のための複合材、FSSの基礎的検討]
«概要»
CFRPやGFRPといった複合材や特定の周波数だけを透過させる周波数選択性をもつ、FSS・MEFSSを用いた基礎的構造(平板、半円筒)における電波特性を確認する研究。
«背景・目的»
昨今の装備品にはステルス化が要求されている。近年はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)・GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)といった複合材や、FSS・MEFSSのような周波数選択性をもつ構造材が出現してきた。
装備品のステルス化のためにこれら構造材の電波特性を把握し、実用化のための設計、製作上における技術資料を得ることを目指す。
«詳細»
CFRP・GFRP・FSS・MEFSSの電波特性を解明するために基礎的構造及びレドームとアンテナを模擬した平板、半円筒を製作し、電波透過特性、電波反射特性の計測を行った。
実験ではCFRP は金属同様の特性を示し、GFRP では電波が透過することを確認した。また、GFRP に FSS を付けると、周波数選択性によりハイパスフィルタ性能を示す。
レドーム(半円筒)とアンテナを模擬した系においては、周期的な周波数特性を持つことがわかった。MEFSS においては、FSS と比較し高い Q 値を示し、優れたバンドパスフィルタの性能をもつことを確認した。
«まとめ»
本研究成果より、複合材、FSS を使用したステルス化構造・材料への適用が可能となる見通しが得られた。
※ここではメタマテリアルを用いたステルス技術も合わせて解説する。
«概要»
形状ステルスや電波吸収剤といったステルス技術を補完する、航空機のアンテナ部のステルス化に向けて、メタマテリアル技術を適用したアクティブ電波反射制御に関する研究
2013年(発表年)
«概要»
CFRPやGFRPといった複合材や特定の周波数だけを透過させる周波数選択性をもつ、FSS・MEFSSを用いた基礎的構造(平板、半円筒)における電波特性を確認する研究。
«背景・目的»
昨今の装備品にはステルス化が要求されている。近年はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)・GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)といった複合材や、FSS・MEFSSのような周波数選択性をもつ構造材が出現してきた。
装備品のステルス化のためにこれら構造材の電波特性を把握し、実用化のための設計、製作上における技術資料を得ることを目指す。
自機レーダの電波は透過させつつ相手レーダ
の電波はアンテナへの到来を防ぎ、受信方向と
は異なる向きに反射させ探知を防ぐ
«詳細»
CFRP・GFRP・FSS・MEFSSの電波特性を解明するために基礎的構造及びレドームとアンテナを模擬した平板、半円筒を製作し、電波透過特性、電波反射特性の計測を行った。
実験ではCFRP は金属同様の特性を示し、GFRP では電波が透過することを確認した。また、GFRP に FSS を付けると、周波数選択性によりハイパスフィルタ性能を示す。
レドーム(半円筒)とアンテナを模擬した系においては、周期的な周波数特性を持つことがわかった。MEFSS においては、FSS と比較し高い Q 値を示し、優れたバンドパスフィルタの性能をもつことを確認した。
2018年の防衛技術シンポジウムの電子装備研究所のパンフレットではFSSを用いた、レドームを模した円錐形の仮作品が掲載された。
«まとめ»
本研究成果より、複合材、FSS を使用したステルス化構造・材料への適用が可能となる見通しが得られた。
[アクティブ電波反射制御技術]
2015年(発表年)
※ここではメタマテリアルを用いたステルス技術も合わせて解説する。
«概要»
形状ステルスや電波吸収剤といったステルス技術を補完する、航空機のアンテナ部のステルス化に向けて、メタマテリアル技術を適用したアクティブ電波反射制御に関する研究
«前史»
本研究のキーワードであるメタマテリアルについて述べる。メタマテリアルは、自然界には存在しない人工媒質である。
・ 金属、誘電体等の小片からなる単位素子
・波長に比べ十分小さい間隔で並べて構成
・元の物質、材料とは異なる電気的・磁気的
性質な特性
などの特徴を有する。メタマテリアルは反射の法則(入射角=反射角)に従わない性質を有させることも可能である。この特性を利用して反射方向を制御する事も可能である。
※反射角を制御し敵レーダーに反射波のピークを受信させないという点では、形状ステルスと手法は同一である。
メタマテリアルを用いた空中線部のステルス化は、2011年の防衛シンポジウムで成果が発表されているのが確認されている。この時の研究内容はメタマテリアルを用いて、反射波の位相を制御し反射波の方向を変えるというものであった。
メタマテリアルの概要1
導体パッチの幅や間隔を
変化させる事で反射方向の制御が可能である
メタマテリアルを用いて反射波の方向を変える研究では、2種類の仮作基板を製作した。
基板毎に構造や反射波制御方向が異なり、以下にその概要を示す。
仮作基板#1
各基板のRCSの測定では反射波の方向が設計通りに制御できている事を確認し、RCSの低減に資するものということが実証された。
反射波方向の制御の結果:仮作基板#1
反射波方向を変えることで受信側に
RCSのピークを受信させない事が可能である
こちらはより広い帯域でのRCSの低減が図られている
メタマテリアルによる反射方向の制御について述べたが、この他にも電波吸収型や電波散乱型など異なる性質をもつメタマテリアルが研究・試作されている。
ステルス性以外にも周波数選択性などの機能を付与する事が可能であるため混信、干渉及びマルチパス等による障害を抑圧して、航空機の安全性向上を図る事も期待されている。
そのため、民間向けのアンテナ用レドームの適用を目指して、MELCOが経済産業省の委託を受け研究が進められている。先述の周波数選択性を持つFSS構造にもメタマテリアルが適応されている。
展示された各種メタマテリアルの画像

周波数選択性を持つメタマテリアルを
用いたレドーム(経済産業省の資料より)
※防衛分野にも航空機のレーダ、通信機器のアンテナ、レドーム等の表面材として、本技術を応用した機器の事業化が期待されるとある(同資料内より)
«背景・目的»
戦闘機の低RCS化技術には大きく形状ステルスと材料ステルスに分類できる。形状ステルスは電波の反射方向の制御と反射部位の局限が主眼であり、材料ステルスはRAMなどが相当し反射量を抑え形状ステルスを補完する。
ひびき氏のツイートより転載
しかし空中線部は遠距離まで電波を放射する必要があるため、アンテナ特性へ影響を与える形状の工夫や電波を吸収・減衰させるRAMは適応できない。現在、アンテナ開口面のステルス化は、傾斜取付け、埋め込み式と周波数選択レドーム等により対策されているが、アンテナ特性への影響が無視できない。
そこで、アンテナ特性に影響を与えずにステルス性を得る技術として、メタマテリアルを用いた反射波の周波数を欺瞞可能なアクティブ電波反射制御技術を実施する必要があった。
※戦闘機のレーダーは反射波の周波数変化から目標の相対速度変化と距離を捉える、パルス・ドップラ式を採用している。反射波の周波数の欺瞞は正常な相対速度や距離の取得を妨げる効果がある。
«詳細»
しかし空中線部は遠距離まで電波を放射する必要があるため、アンテナ特性へ影響を与える形状の工夫や電波を吸収・減衰させるRAMは適応できない。現在、アンテナ開口面のステルス化は、傾斜取付け、埋め込み式と周波数選択レドーム等により対策されているが、アンテナ特性への影響が無視できない。
そこで、アンテナ特性に影響を与えずにステルス性を得る技術として、メタマテリアルを用いた反射波の周波数を欺瞞可能なアクティブ電波反射制御技術を実施する必要があった。
※戦闘機のレーダーは反射波の周波数変化から目標の相対速度変化と距離を捉える、パルス・ドップラ式を採用している。反射波の周波数の欺瞞は正常な相対速度や距離の取得を妨げる効果がある。
«詳細»
先述の通りアクティブ電波反射制御は反射波の周波数を制御する事により、周波数を欺瞞し正確な相対速度の取得を妨げかつRCSの低減を図る技術である。
原理としてはパッチアレイとアクティブ素子を用いて、到来波の反射位相を時間的に 180°変化させて反射周波数を変更する。これにより、脅威側のレーダのドップラ処理に対して周波数軸上で信号をシフトさせ RCS の低減を図るものである。
構造としてはパッチアレイ配列及びそれらのパッチを接続する PIN ダイオードを配したアクティブ層と、裏面の金属反射板(地板)、構造維持層からなる。
反射制御に関してはアクティブ層の PIN ダイオードの ON、OFF 時の電波反射特性の違いにより反射周波数を制御する。PIN ダイオードを ON にした場合は、パッチ配列は金属線のようになる。
OFF にした場合、ダイポール形状のパッチアレイのみとなる。OFF 時に透過した電波は、アクティブ層の透過位相及び裏面金属との経路長により、ON 時の表面反射と比較して 180°の位相遅れが生じる。

アクティブ層と地板の断面図
※改めて解説を行うとPINダイオードに電流が流れる(ON時)とダイオードとパッチアレイからなるアクティブ層は金属板の様な反射特性を有しアクティブ層で反射が起こる。PINダイオードに電流が流れない(OFF時)と入射波はアクティブ層を透過し、地板で反射する。OFF時の透過経路の差から180℃の位相遅れが発生する。
この 180°の位相差を時間的に切り替えることで、二値の位相変調がなされ、反射波が周波数軸上でシフトする。この周波数軸上の信号シフトにより、脅威レーダの捕捉するドップラ周波数ゲートの帯域外へ信号をシフトさせることで、低被観測性が得られる。
空対空レーダーの概略
メインローブを用いて捜索を行う
反射波の周波数を変化させる
※信号強度の高い反射波の周波数を位相変調により対応帯域外にシフトさせ、レーダーに目標からの反射波と認識させる事を防ぐ。対応帯域での信号強度を抑え、低RCS性も実現する。
※本来は、最も信号強度の大きい目標の反射波からの周波数変化を速度と距離の算出に用いるが、位相変調による周波数のシフトで正しい周波数変化の探知を防ぐ。反射波を捉えても正確な距離と速度の算出を妨害する。
試験の結果、ON・OFFの切り替えにより位相の切り替え・任意に周波数をシフトできる事や20dB以上のRCSの削減に効果がある事が判明した。アクティブ電波反射技術の適用箇所としてはレーダーアンテナの支持構造としての活用が想定されている。
試験結果1
«まとめ»
空中線部の低RCS化に有効な、メタマテリアルを用いたアクティブ電波反射技術の実現可能性に関する研究を行っている。
制御技術による周波数のシフトは有事における低RCS性や正確な距離・速度の取得の妨害だけでなく、平時でのステルス機の正確な情報の取得を妨害するという点でも有意義である。
[ステルス戦闘機用レドームに関する研究]
«概要»
戦闘機のステルス化を追求する上で必須となる、低被探知性を考慮した複雑形状のレドームについて研究するとともに、当該レドームと搭載レーダ等との適合化技術についての研究
«背景・目的»
将来の戦闘機にはステルス性が要求されている。レーダを防護するレドームにもエッジをもつ複雑な形状による形状ステルスが必要となる。
また、近年のレーダ技術の発展で高出力化や広覆域化、電子戦能力の付与による広帯域化も進んでいる。レドームはレーダの性能を最大化し、それらに対応する良好な電波特性を持つ事も要求される。
更に戦闘機の超音速巡航も想定すると機首は空力加熱で従来よりも加熱されるため高い耐熱性が必要で有り、高温でも対風圧などに耐えられる強度及び雨の中を飛行するときの耐降雨性等の環境性能にも優れる必要がある。
日本はF-2の開発以降は新規に戦闘機用レドームを開発した実績がない。F-2の開発において作成した戦闘機用レドームは、曲面形状の従来型レドームであり、敵機等が放射したレーダ波を到来方向以外に反射するステルス性を有していない。また、近年の高出力、広帯域の我のレーダ波を減衰無く透過させる良好な電気特性を有していない。
将来の空戦における優位性を確保するためにも、ステルス性や電波特性、耐環境性にも優れたステルス機用レドームの研究を行う必要がある。
«詳細»
60.8億円の総予算のもと、MHIを主契約者として2015〜2020年まで、ステルス戦闘機用レドームの研究試作を行っている。
ステルス戦闘機用レドームの技術的課題については以下の内容が挙げられる。
①複雑形状技術
・電波の反射方向を変化可能な形状ステルス
技術
・ステルス形状に伴う、外形において平面形
状間の接合部などの複雑構造部
②耐環境性技術
2015〜2020年
«概要»
戦闘機のステルス化を追求する上で必須となる、低被探知性を考慮した複雑形状のレドームについて研究するとともに、当該レドームと搭載レーダ等との適合化技術についての研究
«背景・目的»
将来の戦闘機にはステルス性が要求されている。レーダを防護するレドームにもエッジをもつ複雑な形状による形状ステルスが必要となる。
また、近年のレーダ技術の発展で高出力化や広覆域化、電子戦能力の付与による広帯域化も進んでいる。レドームはレーダの性能を最大化し、それらに対応する良好な電波特性を持つ事も要求される。
更に戦闘機の超音速巡航も想定すると機首は空力加熱で従来よりも加熱されるため高い耐熱性が必要で有り、高温でも対風圧などに耐えられる強度及び雨の中を飛行するときの耐降雨性等の環境性能にも優れる必要がある。
日本はF-2の開発以降は新規に戦闘機用レドームを開発した実績がない。F-2の開発において作成した戦闘機用レドームは、曲面形状の従来型レドームであり、敵機等が放射したレーダ波を到来方向以外に反射するステルス性を有していない。また、近年の高出力、広帯域の我のレーダ波を減衰無く透過させる良好な電気特性を有していない。
将来の空戦における優位性を確保するためにも、ステルス性や電波特性、耐環境性にも優れたステルス機用レドームの研究を行う必要がある。
«詳細»
60.8億円の総予算のもと、MHIを主契約者として2015〜2020年まで、ステルス戦闘機用レドームの研究試作を行っている。
ステルス戦闘機用レドームの技術的課題については以下の内容が挙げられる。
①複雑形状技術
・電波の反射方向を変化可能な形状ステルス
技術
・ステルス形状に伴う、外形において平面形
状間の接合部などの複雑構造部
②耐環境性技術
・超音速巡航での従来より高い空力加熱を想
定した高耐熱性
・高温時での対風圧を想定した強度
・雨天中の飛行を想定した耐降雨性、耐雷性
③電波適合性技術
・レーダの高出力、広帯域及び広覆域電波を
想定したレドーム
・レドーム内反射、レドーム透過に伴うアン
テナパターン崩れ等によるシステム性能の
低下を局限可能なレドーム
④レドーム関連技術
・レドームの低RCS化に関する研究
ステルス戦闘機用レドームの概要
メタマテリアルを使用したレドーム
2010年時点ではメタマテリアルの適用が期待されていた
※これまでにレドーム向け技術として周波数選択性をもつメタマテリアルを用いたMEFSS構造を解説した。しかし、2019年7月時点では当研究にどのような技術が用いられているかを明記する資料がまだ存在しないため、どのような構造技術が使われているかは不明である。
研究試作では上記特性を有するレドームを試作し、製造に関する知見を得る見込みである。試作内容としては機首レドームと、主翼前縁のESM用アンテナである。
また、「多機能RFセンサの研究試作」など、防衛省においてこれまで実施してきたレドームに係る研究事業の成果を反映すると共に、既存事業のアンテナ等を官給して活用するなどにより、効率的な研究を実施する予定である。

試作レドームの概要
所内試験では実際に既存戦闘機を改修し、搭載して試験をするのではなく、地上において試験設備を使用して、様々な条件下での試験を繰り返し実施することで、効率的な試験を実施すると共に研究経費の抑制を図る計画としている。
«まとめ»
将来の空戦での優位性に資する目的としてステルス性、電波特性及び耐環境性に優れる戦闘機用レドームを試作している。2020年までに所内試験を終える予定である。
«コラム:機械走査式のAESAレーダとかその他色々»
AESAに代表されるフェイズドアレイレーダの特徴として、位相制御による電子走査が挙げられる。素子アンテナの発信のタイミングを電子的に制御することで、ビームの指向方向を変化させられる。利点として下画像のような点が挙げられる。
スロットアレイを用いた従来のアンテナは電子的にビーム指向方向を変えられない。そのため、アンテナを物理的に機械走査して目標の捜索・追尾を行っていた。
※APAAとAESAは厳密な意味は違うがここではほぼ同じものとして扱う。
板状のアンテナを可動させ走査を行う
機械走査を必要としないのがAPAAの特長であったが、近年は機械走査とAPAAによる電子走査を組み合わせたレーダが登場している。具体的にはJAS-39E/FのRaven ES-05や、EF-2000のトランシェ3から装備が始まるCAPTOR-Eが該当する。
メリットとしてはAPAAを機械走査で傾ける事により、走査可能覆域が大幅に増加する事が挙げられる。覆域の拡大は敵機の早期発見や射撃機会の増加に繋がる。
空中線の根本のジンバル機構により
一定角度内で任意の方向に空中線を指向可能である
具体的な動作イメージとしては当動画を参考
機械走査式のAPAAを突如として取り上げたのは理由がある。それは将来戦闘機のレーダとして機械走査式APAAが使われる「かも」しれないからである。
但し根拠は弱い。先の「ステルス戦闘機用レドーム」や「小型熱移送システム」でのポンチ絵が、空中線に機械走査を併用する事を想定しているように解釈が出来なくも無い 程度である。

VCSの研究でのポンチ絵
※空中線の構造がジンバル機構に類似?また、ピンク色の矢印が空中線の可動を表している?研究で広覆域への対応が明記されてるのもそのため?
このように非常に資料性に欠ける推測である。
また、機械式と電子式の併用はメリットだけでなく当然デメリットも存在する。
以下に考えられるデメリットを挙げる。ほぼ全てが可動部の追加を起因とする。
①信頼性の悪化
可動部を廃し、信頼性を向上させたのがAPAAである。可動部の再追加は信頼性の悪化に繋がる。
②設計難度の上昇
可動部の追加により、可動時でも冷却・電気系統が健全に作動するように配慮する必要がある。レドーム内は地上の真夏の高温や上空の極低温などの過酷な条件でも健全に作動する、優れた対環境性を有する設計が必要。
③コストの上昇
上記を満たす設計は当然コストに反映される。
④機首スペースの圧迫
可動部の追加は電気系統や冷却系統が配されている機首部のスペースを圧迫する。
⑤整備性の悪化
可動部の追加は構造の複雑化や点検箇所の増加を招く。機首スペースが圧迫されるためアクセス性も悪化する。
覆域を広げる手段として、機首側面にスマートスキンを配するという事例も存在する。日本でもスマートスキンは研究されており、戦闘機への適応例としては露国のSu-57が挙げられる。機首の左右側面に側面象限監視用の固定レーダを配している。
可動部がないため信頼性は向上するほか、機械式併用より更に広い覆域を実現し常に側面象限を監視できるメリットがある。
但し、こちらも同様にデメリットも存在する。以下に考えられる例を挙げる。
①機首スペースの圧迫
左右側面に側面用スマートスキンを廃するため機首スペースが圧迫される。
②コストの上昇
単純に警戒用の空中線が増えることによりコストが増加する。
③整備性の悪化
機首スペースの圧迫によるアクセス性の悪化。
可動部が無いという利点は持つ。
④スマートスキンの面積と性能の制限
スマートスキンは空中線の面積から機首レーダに比べ探知距離が劣る。一部覆域では機械式の併用とくらべ探知距離に劣る。
結論としては真横以後をレーダで警戒しようとすると手法に関わらずデメリットは発生するということである。
F-35の場合、機械式の併用やスマートスキンは有していないが、EO-DASという全周赤外線警戒装置を有する。EO-DASからの情報を用いてSRAAMの射撃も可能であり、高度なソフトウェアの構築というデメリットもあるが、真横以後の警戒に関する各国の思想の違いが見える。
ここから話を広げていきたいが、あくまで将来戦闘機が機械走査と併用したAPAAを採用するかも?から派生する話が主題であり、採用が確定している訳でも無いのでここらへんで終了する。
※当研究以前のプラズマを用いたステルス技術の検討についてもここで解説を行う。
«概要»
戦闘機の高ステルス化に資する、従来のアンテナ形状のままでステルス性を得るプラズマステルスアンテナ技術について研究を行う。
(CAPTOR-Eの動作イメージ)
との覆域の比較 最大で真横以後も捜索可能
機械走査式のAPAAを突如として取り上げたのは理由がある。それは将来戦闘機のレーダとして機械走査式APAAが使われる「かも」しれないからである。
但し根拠は弱い。先の「ステルス戦闘機用レドーム」や「小型熱移送システム」でのポンチ絵が、空中線に機械走査を併用する事を想定しているように解釈が出来なくも無い 程度である。

VCSの研究でのポンチ絵
ジンバル機構らしき構造が見えなくもない?
※空中線の構造がジンバル機構に類似?また、ピンク色の矢印が空中線の可動を表している?研究で広覆域への対応が明記されてるのもそのため?
このように非常に資料性に欠ける推測である。
また、機械式と電子式の併用はメリットだけでなく当然デメリットも存在する。
以下に考えられるデメリットを挙げる。ほぼ全てが可動部の追加を起因とする。
①信頼性の悪化
可動部を廃し、信頼性を向上させたのがAPAAである。可動部の再追加は信頼性の悪化に繋がる。
②設計難度の上昇
可動部の追加により、可動時でも冷却・電気系統が健全に作動するように配慮する必要がある。レドーム内は地上の真夏の高温や上空の極低温などの過酷な条件でも健全に作動する、優れた対環境性を有する設計が必要。
③コストの上昇
上記を満たす設計は当然コストに反映される。
④機首スペースの圧迫
可動部の追加は電気系統や冷却系統が配されている機首部のスペースを圧迫する。
⑤整備性の悪化
可動部の追加は構造の複雑化や点検箇所の増加を招く。機首スペースが圧迫されるためアクセス性も悪化する。
覆域を広げる手段として、機首側面にスマートスキンを配するという事例も存在する。日本でもスマートスキンは研究されており、戦闘機への適応例としては露国のSu-57が挙げられる。機首の左右側面に側面象限監視用の固定レーダを配している。
可動部がないため信頼性は向上するほか、機械式併用より更に広い覆域を実現し常に側面象限を監視できるメリットがある。
但し、こちらも同様にデメリットも存在する。以下に考えられる例を挙げる。
①機首スペースの圧迫
左右側面に側面用スマートスキンを廃するため機首スペースが圧迫される。
②コストの上昇
単純に警戒用の空中線が増えることによりコストが増加する。
③整備性の悪化
機首スペースの圧迫によるアクセス性の悪化。
可動部が無いという利点は持つ。
④スマートスキンの面積と性能の制限
スマートスキンは空中線の面積から機首レーダに比べ探知距離が劣る。一部覆域では機械式の併用とくらべ探知距離に劣る。
結論としては真横以後をレーダで警戒しようとすると手法に関わらずデメリットは発生するということである。
F-35の場合、機械式の併用やスマートスキンは有していないが、EO-DASという全周赤外線警戒装置を有する。EO-DASからの情報を用いてSRAAMの射撃も可能であり、高度なソフトウェアの構築というデメリットもあるが、真横以後の警戒に関する各国の思想の違いが見える。
ここから話を広げていきたいが、あくまで将来戦闘機が機械走査と併用したAPAAを採用するかも?から派生する話が主題であり、採用が確定している訳でも無いのでここらへんで終了する。
[プラズマステルスアンテナ技術の研究]
2018年(発表年)
※当研究以前のプラズマを用いたステルス技術の検討についてもここで解説を行う。
«概要»
戦闘機の高ステルス化に資する、従来のアンテナ形状のままでステルス性を得るプラズマステルスアンテナ技術について研究を行う。
«背景・目的»
キーワードとなるプラズマについて性質を述べる。物質の状態は基本的には個体、液体、気体に分類される。しかし、物質によって異なるがある一定の温度と圧力になると気体からプラズマへと変化する。
気体は気体を構成する分子が自由に飛び回っている状態を指す。だがプラズマに変化すると気体分子が持つ電子さえも自由に飛び回りる。マイナスの電荷をもつ自由電子と、分子は電子の放出により陽イオンと化し両方が空間内を自由に飛び回る不安定な状態となる。身近なプラズマの例としてはオーロラや蛍光灯の点灯時の内部などが挙げられる。
赤が分子で黄色が電子
プラズマは物質として特異な状態であり、現にプラズマの一種である電離層は、特定周波数反射し特定周波数は屈折させるという性質を持っている。
装備品のステルス化への適応を検討するため、プラズマの電気特性を把握する必要があった。

地球上空にある電離層の概要
プラズマを用いたステルス技術の実験的検討に関しては、2010年の防衛技術シンポジウムで発表されている。この時はプラズマを、周波数制御可能なアクティブ電波吸収体としての可能性を蛍光灯を対象にした実験で検証した。
実験の結果、プラズマが電波吸収体の機能を有すると共に、周波数特性の制御ができるアクティブ電波吸収体の可能性に対する目途がついた。
蛍光灯を対象にしたプラズマの
電波反射特性の取得に関する実験
本題であるプラズマステルスアンテナ技術について述べる。先述の通り、戦闘機のステルス化には形状ステルスと材料ステルスが存在する。戦闘機の通信用のアンテナのステルス化は機体に埋め込むことにより、ステルス化が図られている。他方で、構造や制御の煩雑化が課題となっている。
そこでプラズマを用いて、従来のアンテナ形状のままでステルス性を得るプラズマステルスアンテナ技術について、検討を行う運びになった。
ここではプラズマを用いた手法について述べる
«詳細»
電気的な制御による物性の変更が可能で
あるプラズマの特性を利用して仮作したプラズマステルスアンテナについて、通信用アンテナとしての動作及び到来レーダ波に対する反射量低減に関する検討を行うことを目的とした。
以下にプラズマステルスアンテナの概要及び原理を示す。
本研究で仮作したプラズマステルスアンテナは、アルゴンと水銀の混合ガスを封入したガラス管等からなる放電管、プラズマ励起用高圧電源及びRF信号印加部からなる回路により構成される。アンテナの形状としては、水平面内において無指向のブレード型を採用している。
アンテナカバー
水平面に無指向性のブレード型

アンテナ本体
アンテナカバーの内部に配置
内部にはアルゴンと水銀の混合ガスが封入され、
強度の面からガラス管からGFRPに変更されている
原理について述べる。
プラズマは励起時(電源ON時)は電波に対し金属もしくは誘電体のように振る舞い、敵レーダなどからの電波を反射する。しかし非励起時(電源OFF時)は単純な誘電体となるためレーダ電波を透過する。
アンテナの非使用時は電源OFFにする事で敵電波を透過させる。通信時に必要な時だけ電源ONにし、通信を行い電波の反射時間の局限を図る。これが基本的な性質である。
励起時は通信電波に対し金属のように
振る舞うためアンテナとして使用可能である

アンテナ動作中のプラズマアンテナ
また、プラズマは電流により励起すると以下のような性質を持つ。
・プラズマ周波数より低い周波数の電波に対
しては金属のように振る舞う
・プラズマ周波数より高い周波数の電波に対
しては誘電体のように振る舞う
これを利用する事でプラズマ周波数を敵レーダ周波数より低くすることで、プラズマアンテナは敵レーダ波に対し誘電体のように振る舞う。誘電体は金属ほど電波を反射しないためRCSの低減に繋がる。
試験ではプラズマアンテナが正常なアンテナ特性を有していることや、電源ON/OFF状態でのRCSの低減を確認した。
プラズマアンテナのアンテナ特性

RCSの低減効果
«まとめ»
励起による物性の変化を用いたプラズマステルスアンテナの研究試作を実施し、正常なアンテナ特性やRCSの低減に関する効果を確認した。




















































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