«アビオニクス関連(1-2)»

27
  1. 戦闘機搭載用IRST装置の開発
  2. 2波長赤外線センサ技術の研究
  3. 将来航空機基礎技術の研究(航空電子統合化の研究)
  4. 将来アビオニクスシステムの研究
  5. 航空機先進装備システムの研究
  6. 航空機先進装備技術の研究
  7. 航空機先進搭載機器技術の研究




[戦闘機搭載用IRST装置の開発]

img_soubi_koukuu07
08
1997〜2010年

※本研究は将来戦闘機に向けてというよりはF-15の近代化改修への反映と戦闘機用IRST技術の蓄積を図ったものである。しかし、後述する将来戦闘機への反映を目指す先進統合センサ・システムではIRSTの使用が念頭にあるため国産IRST技術として合わせて解説する。


«概要»
    F-15近代化改修機に搭載し、電子戦環境下等における火器管制レーダの探知性能等の低下を補完し目標の探知、追尾のみならず搭載空対空ミサイルの射撃管制に使用する戦闘機搭載用IRST(Infra-red Search and Track (火器管制用)赤外線捜索追尾装置)装置を開発する。

«背景・目的»
 防空戦闘においては、航空機の電子戦能力の向上及びステルス化により対処すべき脅威が多様化及び増大化しつつある。

 このため、将来の戦闘様相に対する対処能力の向上を図るためには、火器管制レーダの探知性能等の低下を補完するとともに使用の局限を可能とする戦闘機搭載用IRST装置を開発する。

 代替品としては、仏国のラファールに搭載のOSF、欧州のユーロファイター搭載のPIRATEが考えられるが、いずれも装置の形状が、F-15近代化機の機首部分の搭載可能なスペースに収まらず、大幅なF-15の再設計が求められるため、コスト、性能の面で妥当ではないとされている。

48
戦闘機搭載用IRSTの想定運用構想

    開発したIRSTはF-15の近代化改修におけるレーダの換装に伴って生ずる機首部分の空きスペースに内装を行う。

«詳細»
  まず、「戦闘機用IRST装置の開発」の開発予算化の前に、開発に向けての事前研究として三菱電機を主契約者となり1997年から2001年にかけて研究試作を実施した。技術研究本部を中心に官民一体となって、設計・製造にあたった。

 研究試作は、3〜5μm帯及び8〜10μm の2波長帯を検出波長帯とし、試験母機の左内舷パイロンに搭載するポッドシステムを試作した。情報は母機のHDD(VSD)及びHUDに表示した。

IMG_20190924_215642
F-15J 801号機の左翼内弦
イロンに搭載されたポッド型IRST
※正確には試作されたポッド型IRSTそのものでは無く、ポッド型IRSTを流用・改造して製作されたUV/IR光源計測システムである。

image20
上記画像のUV/IR光源計測システムの概要
改造の結果、紫外線・可視カメラや各種装置が増設
※当該装置は航空機・ミサイル・フレア・背景などの光波電子線情報の収集用として、改造・開発されたものである。


 また、研究を通し航空機が発する中赤外線及び遠赤外線の実環境データを各種条件ごとに体系的に収集するとともに、基本的な性能・諸元に関して諸外国を凌ぐ装置を開発し得る見通しを得た。

30
試作品と各国のIRSTとの性能比較(推定)

※「戦闘機搭載用IRST装置」として装備品の開発予算が付き試作されたのは2003年からである。1997〜2000年の研究試作と2000〜2002年までの所内試験と部内研究はTRDI内部の研究の一環として進められた。

 研究試作の成果を踏まえ、開発における主要な技術的課題の解明要領を検討するため、平成12~14年度にかけて部内研究を実施した。システム・インテグレーション技術、マン・マシン・インターフェイス技術、小型軽量内装化技術及び自動目標補足追尾技術に関して、開発試作の資となる見通しを得た。


 そして2003年からは「戦闘機搭載用IRST装置」として予算が承認され試作が開始された。
以下の要求の達成を目指したものだった。

40
要求性能

32
運用構想図と表示イメージ

 先述の研究試作の成果を十分に反映し、要求を達成するIRSTの試作品が開発された。F-15近代化改修機に内装型として搭載し電子戦環境下等の状態、火器管制レーダーの機能が制約された状態において、目標航空機の発する赤外線による目標の探知及び追尾、搭載空対空ミサイルの発射管制への使用を意図したものだった。

 また、IRST装備による情報量の増加に対処すべくパイロットワークロードの低減も目的に開発された。試作品は信号処理部、電源部、センサ部で構成されている。

22
試作されたIRST


34
試作品のIRSTを搭載するF-15

 試験は岐阜基地等において技術試験を開始した。2006〜2008年にF-15の機体改修が行われ試作品のIRSTを搭載した。

    地上試験は、2006〜2007年にかけて機能・性能試験(飛行環境模擬下)、機能・性能試験(高軌道環境模擬下)、フィールドデータ取得試験、信頼性試験及び環境試験を実施した。

    飛行試験は計70ソーティを2009年に機体定期修理をはさみ、2008~2002年まで実施した。

 2008年の飛行試験では戦闘機搭載用IRST装置に不具合が発生し、試験を中断した。原因究明を行ったところ、当該装置の制御プログラムに問題があり、目標の追尾が不安定になることが判明した。制御プログラムの改修を行い、目標の追尾が安定することを確認した。また、この影響で開発完了時期が2008年から2010年にへと延期された。

    その後、機能・性能である誤警報率、目標探知距離、脅威判定、目標角度分離精度、測距機能、最大追尾角速度及びIRCCM機能について地上試験と飛行試験により、技術的評価を行い、要求を満足していることを確認した。
   
«まとめ»
 電子戦環境下等における火器管制レーダの探知性能等の低下を補完し、目標の探知及び追尾のみならず搭載空対空ミサイルの射撃管制に使用する戦闘機搭載用IRST装置の開発を完了した。

 技術試験及び実用試験の終了を受け、平成22年12月8日の装備審査会議調整部会を経て、IRST装置(F-15)は部隊の使用に供し得ると認められた。

09
達成された要求

 遷音速飛行領域(マッハ数0.9~1.2)においてセンサー部から生じる衝撃波がピトー管と干渉し、高度・速度表示に誤差を生じることが、技術試験において判明した。

 2011~2014年において、F-15近代化機の ADP(Air Data Processor)/OFP(Operational Flight Program)を改修(衝撃波の影響を補正)し、既存機(IRST非搭載機)相当まで影響が抑圧されることを確認した。

 ただし、現在に至るまで当IRSTの搭載改修が施されているF-15の数はごく僅かに留まっている。



[2波長赤外線センサ技術の研究]

11
59
2005〜2014年
※本研究は将来戦闘機などに関する特定の研究では無いものの、戦闘機用のIRSTやFLIRなどに派生可能な次世代赤外線センサ技術として解説する。

«概要»
 2波長QDIPなどの先進半導体技術を用いた、高画素・低コスト・高識別能力を有する2波長赤外線センサ技術に関する研究

«前史»
 日本は1960年代から赤外線センサ技術の研究を進めてきた。戦闘機搭載用赤外線センサとしては、1982年から開始された新FLIRシステム方式の研究を土台として1996〜2004年にかけてF-2戦闘機の外装型FLIR装置(J/AQQ-2)が開発された。

21
赤外線センサ技術の流れ

45
F-2に搭載された外装型FLIR装置

20
外装型FLIR装置の概要
航法及び目標追尾・測距に用いられる

 1980年代半ばからは航空機搭載用は冷却型へと研究がシフトした。
※冷却型赤外線センサとは、冷凍機を用いて液体窒素温度程度(約70K)に検知器を冷却し、赤外線を光子として検出するセンサである。高感度で高フレームレートの画像が得られる長所があり、高速飛翔する弾道ミサイル及びレーダでは難しい電波ステルス機の探知に有効である。また、検知波長帯を2波長化することが可能で、雲、水面からの太陽反射等のクラッタを抑制して、目標の探知能力を上げることができる。

 1995年には将来センサシステム実験装置が試作され、2003〜2005年にはブーストフェイズの弾頭ミサイルの探知を目的とした将来センサシステム(搭載型)を研究試作した。当装置はUP-3Cに搭載され2005年及び2007年にハワイのカウアイ島で弾道ミサイルを捜索追尾することに成功した。

28
将来センサを搭載して飛行試験を行うUP-3C

«背景・目的»
 赤外線センサに使用される波長は高温目標と低音目標で異なり、これまでは用途に応じてセンサを使い分けてきた。

 しかし、技術発展により2波長化や高画素化など優れた特性を有する、量子ドット型赤外線検知器(QDIP:Quantum Dot Infrared Photodetector)などGaAs系の素子の実現に目処がついた。

46
2波長赤外線センサの検知帯域

27
QDIPの利点

 これらQDIPに関する研究を行うことで、地形や車両などの低温目標から航空機の排気ガスといった高温目標など多目標に対応できる次世代センサに関する研究を行う必要があった。多波長を用いた画像処理で太陽光などのノイズを低減し目標の視認性を向上させ、かつ量子効率が高いため探知距離が延びることと、動作温度が高いため冷凍機が小型化できるなど数多くの利点が期待されていた。

37
量子型赤外線センサの種類

07
QDIPの利点

«詳細»
 本研究では航空機、車両、ミサイルなど幅広い適応が期待される2波長赤外線センサの実現可能性を検証するため、富士通を主契約者として各種研究試作が行われた。

 研究試作(その1)では2005〜2007年にかけて単波長QDIPと信号処理表示部/データ解析部が試作された。

31
試作品の概要

58
センサ部の詳細構造

30
単波長QDIPの構造

 所内試験の結果、画像の安定性・均一性に優れ、冷却温度(80K程度)で動作が可能な256x256長波長帯QDIPの実現を確認した。この成果は後の2波長QDIPの試作に反映された。

 研究試作(その2)では2008〜2010年にかけて2波長QDIPが、研究試作(その3)では2009〜2010年には2波長信号処理表示部と2波長反射光学系が試作された。この試作されたInAS(ヒ化インジウム)を用いた480x480画素の2波長QDIPは、2波長QDIPとしては世界初の成果であった。

18
研究試作(その2・3)の概要
単波長と比べ中赤外線の量子ドット層が追加されている

22
2波長反射光学系の概要

 2011〜2013年の研究試作(その4)では2波長QDIPかつ1024x1024画素のハイビジョン化を実現した。以下に研究試作の概要を示す。

56
研究試作(その4)の概要
 
 2波長QDIPの試作後、所内試験では2波長における目標の見え方の違いを利用し、目標探知識別能力の向上に資する2波長融合処理の有効性に関する試験を行った。

36
2波長での見え方の違い

以下に2波長融合処理の例を示す。

①特徴量分類処理
複雑背景の中から高温排気ガス(選択放射体)を抽出し、ノイズを低減する。遠方の航空脅威、遠方のミサイル などの捜索に向く。

08
06
51


②太陽光クラッタ低減処理
太陽光クラッタ背景において、太陽光クラッタを低減し、目標の視認性を改善する。太陽光クラッタ背景の不審船などの海上目標、低空で侵入してくる目標に向く。特にこの処理では単波長と比べ探知識別能力が9.1倍にまで向上する事が確認された。

47
47
16


③2波長差分処理
複雑背景において、背景雑音を低減するとともに、2波長の放射特性の差を際立たせて表示する。植生や建造物に紛れた車両などの地上目標、港湾背景の不審船などの海上目標などに向く。

31
18
56

«まとめ»
 本研究の実施により高精細な2波長QDIPの実現が実現された。これにより2波長帯域の取得による運用場面の拡大や2波長融合処理による目標探知識別能力の向上が可能な事も検証された。



[将来航空機基礎技術の研究(航空電子統合化の研究)]

01
1987〜1997年

«概要»
 航空機搭載電子機器を統合制御するため、情報管理方式及び表示方式についての研究



[将来アビオニクスシステムの研究]

52
00
2002〜2011年

«概要»
 限られた搭載スペースで効率的な情報処理が可能な情報処理機能を統合化(データフュージョン)した将来戦闘機用アビオニクスシステムの構築に関する研究

«背景・目的»
 将来戦闘機には複雑化する戦闘環境及び組織戦闘への対処を図るため、各種センサーを用いてあらゆる方向からの脅威に対処する能力及び僚機間と連携した戦闘能力が必須である。

 従来のアビオニクスシステムは、各センサごとに専用のアビオニクスシステムで信号処理を行っている。つまり、高性能化に対しては個別に情報処理の向上を図る必要があり機体内の搭載スペース、冷却能力、電源要領に限界があるため、機能・性能の拡張性に乏しい。将来において飛躍的に増大するセンサからの入力信号に対応できなくなる恐れがあった。

 限られた機体搭載スペースにおいて機能・性能の向上を図るため、情報処理機能を統合化し、将来の技術発展にも容易に対処可能な拡張性を有する将来アビオニクスシステムの構築を行う。ライフサイクルコストの低減も重要な要素である。

51
将来のアビオニクスへの要求

20
将来のアビオニクスのビジョン

«詳細» 
 上記の統合化アビオニクスを実現するにあたって以下の研究目標の達成を目指した。

①情報処理機能の統合化
②複数異種センサの動作制御と統合信号処理
③パイロットワークロードの低減
④複数のアンテナの共用化
⑤技術累積可能なシステムアーキテクチャ

 また、モデリング&シミュレーション技術を用いることで設計、製造、試験、評価を行う。モデルの構築と検証を繰り返すスパイラル開発方式を導入することで、センサの機能・性能向上、コックピット表示の統合化及び限られた機体の搭載スペース等を踏まえたうえで、最大限の運用効果が発揮できる、経済性も兼ね備えたアビオニクスシステムの実現を目指した。

08
要求と解決手段

56
モデリング&シュミレーションの概要

22
スパイラル開発方式の概要


 上記を達成するために本研究試作では、アビオニクスシステムの性能・構成を任意に設定して、空対空戦によるアビオニクスシステムの構成検討が可能なリアルタイム交戦型フライト・シミュレータを製作した。

 彼我に分かれて最大6機の模擬戦闘機を操縦し、接敵・索敵~中距離戦~近距離戦の模擬空戦が可能である。模擬しているモデルはアビオニクスの他、これらをを評価するための機体やミサイル等を備えている。

 MFD(Multi Function Display)には各センサの探知情報を統合した結果を表示し、タッチパネル方式を採用し、表示する項目や大きさをカスタマイズできる。情報の表示はHMD(Helmet Mounted Display)にも可能であり、40°φの視野角で緑色による両眼表示が可能である。

52
試作品の概要
 
14
シュミレーション内での模擬モデル

 57
簡易コックピット

 本研究試作では三菱電機が主契約者となって33億円をかけて2002年より研試(その1)を開始した。効果の把握を行うために所内試験でシュミレーション試験を行った。

 研試(その4)と(その5)を供試品として航空自衛隊の操縦士、要撃管制官及び航空医学実験隊の支援を受け、2009〜2011年にかけてアビオニクスシステム評価試験を実施した。

 評価試験では、パイロット・イン・ザ・ループのリアルタイム交戦シミュレーションにおいて異なるアビオニクスの組合せが交戦に与える効果に関するデータを取得し、交戦効果(交換比等)やパイロットコメントによりアビオニクス構成による効果の評価が可能であることを確認し、良好な結果を得た。

 また、コックピット評価装置も活用し、統合信号処理や HMD 等のユーザインタフェースがパイロットのワークロードや状況認識に与える寄与を評価するためのデータを取得し、統合信号処理の効果やパイロットワークロード低減効果が評価可能であることを確認し、これも良好な結果を得た。
※パイロット・イン・ザ・ループ:シミュレーションのループの中に人間(パイロット)が介在して、シミュレーションを実施すること。

27
将来アビオニクスシステムの性能確認試験

 所内試験においてシミュレーション試験を行うことにより、情報処理機能の統合化、複数異種センサの動作制御、統合信号処理等に関する技術資料が得られていることを確認した。得られた効果は以下の通りである。

37
本研究で得られた効果

«まとめ»
 アビオニクスシステムの構成を変えて模擬戦闘機を操縦してリアルタイムで交戦できる
シュミレーターの試作と、所内試験でアビオニクス構成が交戦結果に与える影響の評価により当初の目標が達成された。

 情報処理機能の統合化、複数異種センサの動作制御、統合信号処理等が可能な将来アビオニクスシステムに関する技術的知見を得ることができた。



[航空機先進装備システムの研究]

02
2002〜2003年



[航空機先進装備技術の研究]

28
2004〜2006年

«概要»
 航空機の任務達成能力及び整備性等の向上を図るための、主要な構成要素であるアビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究



[航空機先進搭載機器技術の研究]

16
2007〜2009年

«概要»
 航空機の任務達成能力及び整備性等の向上を図るための、主要な搭載装備である操縦系統、アビオニクス・システム等に関する先進的な技術に関する研究