«機体構造関連(2-1)»
[ウェポン内装化胴体構造の研究]
2010〜2011年
«概要»
将来の戦闘機におけるステルス性向上及び機動性向上等を図るため、ウェポン内装化胴体構造について研究を行い、技術資料を得る。
[ウェポン内装化空力関連技術の研究]

2010〜2015年
«概要»
戦闘機等のステルス性向上を実現する際に不可欠な内装ウェポン分離時の搭載物等に作用する空力現象の解明に関する研究
«背景・目的»
将来の戦闘機にはステルス性や高速性が求められる。従って電波反射源や空気抵抗の元となる兵装は内装化しなければならない。
日本における航空機への兵装の内装化は既にP-1哨戒機の開発で、低速風洞による風洞試験結果を用いた設計手法が確立された。しかし、P-1は亜音速機である。
戦闘機が想定する遷・超音速域でウェポンベイから搭載物を分離する場合、ウェポンベイ周りは衝撃波等を伴う複雑な流れ場である
ため、離れていく搭載物の挙動に流れ場との干渉による変化が生じ、母機と接触するような危険な状況が生じる可能性がある。
ウェポン内装化を実現するためには、搭載物の分離時におけるウェポンベイ周りの空力現象を把握する必要があった。
衝撃波の発生や複数の異なる速度の
気流の存在など複雑な流れ場である
«詳細»
ウェポンベイ周りの空力現象を解明するため、本研究ではKHIを主契約者として2010〜2015年までキャビティ模型(ウェポンベイの部分模型)や分離特性評価装置といった研究試作を行った。
総予算は26.7億円
研究全体の概要
搭載物分離は上向きで行う
所内試験としてまず最初に気流に最も影響を与えるキャビティ(空洞)周りの空力現象の把握が目指された。試験の流れとして異なるキャビティ形状を選定し、風洞試験と数値解析との比較・検討を行った。
キャビティ周りの空力現象解析の全体手順
キャビティ周りの流れ場(キャビティ流)は大きく3つに分類される。試験の一段階目として各キャビティ流の特徴が捉えられる、長さ・深さ・幅の異なるキャビティ形状がそれぞれ選定された。
風洞試験では、選定されたキャビティ形状の模型を使い試験が行われた。遷・超音速を想定した高速風洞試験を行うために、札幌試験場の3音速風洞が用いられた。
試験を通じてキャビティ流によるキャビティ底面の圧力分布や、シュリーレン法による衝撃波の発生状況などのデータを取得した。
※空力現象を解明するには流れ場の可視化が必要となるが、空気は透明体でありそのままだと可視化ができない。空気は密度が異なると光の屈折率が変化する。キャビティ流の場所による圧力の分布(=異なる密度の分布)を利用し光の屈折率の変化を捉える事で、流れ場の可視化が可能となる。この可視化方法がシュリーレン法である。

風洞試験の概要

風洞試験の結果
数値解析では選定されたキャビティ形状を基に、コンピュータ上で試験モデルを作成し試験が行われた。キャビティ形状・速度毎の圧力分布の解析が実施され風洞試験との結果と比較検討された。

試験条件の概要

数値解析による結果
風洞試験と数値解析によりキャビティ形状毎の空力現象の解明が達成された。
次の段階としてより実機に近い環境を想定した試験を行うために、ウェポンベイ扉や搭載物・搭載物の分離を模擬可能な装置(分離特性評価装置:CTS装置)を組み合わせた試験に移行した。試験のためにCTS装置と搭載物の分離特性を評価可能な数値解析ツールが試作され、試験に用いられた。
CTS装置は母機模型下方支持部と搭載物模型支持部によって構成される。これら装置は母機の前後・ピッチや、搭載物分離の前後・ロール・ピッチ・ヨーといった実機での搭載物分離における挙動が模擬可能である。
風洞試験では、内装ベイからの搭載物の分離軌跡を取得することで、内装ベイ等からの搭載物への影響を把握した。また外装された既存搭載物の分離軌跡が取得できることを確認するため、既存母機模型、空対空誘導弾(AAM)搭載物模型及びCTS装置を用いた風洞試験もあわせて実施し実発射試験で得られた誘導弾の軌跡と比較した。
こちらは外翼などが無いクリーンな模型である
ASM-2の模型を用いている
試験によるデータ取得後、CFD解析により搭載物が尾部から落下するような運動を行うことを把握した。この結果を反映し適切な適切な初速度及び角速度を与えることで、ウェポンが安全に分離できることが判明した。また、キャビティ形状が搭載物分離に与える影響等も確認された。
«まとめ»
風洞試験とCFDを用いた解析によりウェポンベイ周りの空力現象の解明がなされた。
この研究の成果は、実際にウェポンベイ扉を開閉し兵装を射出できる、ウェポンベイの設計に活かされる事となった。本研究で試作されたCTS装置はその後の研究にも活かされる事となった。
[ウェポン・リリースステルス化の研究]
«概要»
戦闘機のステルス性向上のためRCSを低減し、ウェポン搭載時の機体の空気抵抗を低減することにより、優れた高速性能を実現するウェポン内装化に関する研究
«背景・目的»
前述の通り、戦闘機のステルス化と高速化には兵装の内装化が必須となる。超音速機の兵装の内装化に向けて、前述の「ウェポン内装化空力関連技術の研究」ではウェポンベイ周りの空力現象の解明を行った。
本研究ではウェポン内装化空力関連技術の研究で得た空力データを反映しつつ、ウェポンベイ周りの複雑かつ厳しい空力荷重条件下におけるウェポンの短時間かつ確実な分離が可能な、ウェポン内装システムの実現を目指す。
«詳細»
ウェポン内装システムの研究は、2011年からの所内研究2Aとして開始された。2011年はウェポン内装システム動作についてシミュレーションを実施しシーケンスに要する動作時間等について検討を実施するとともにウェポン内装システムを有する胴体の詳細な技術課題を検討した。
2013年から「ウェポン・リリースステルス化の研究」として研究試作が開始された。2013〜2017年までMHIを主契約者としたシステム設計と研究試作が行われ、2016〜2017年まで所内試験が実施された。
総予算は48.5億円
所内試験では最初に、ウェポンベイ構造を持つ母機模型を使った風洞試験により、分離特性の把握を行った。ウェポンベイ構造は、ウェポン内装システムの設計及び分離シミュレーションを通じて設定したウェポンベイ形状に基づく。
全機風洞試験模型は後述する25DMUを基に製作されているが、主翼形状は26DMUに類似しており、両者の中間的な性格を持つ模型とされている。またCTS 装置を用いて、設計したランチャー射出力等を模擬し、誘導弾の分離軌跡を取得した。
全機風洞模型のウェポンベイ部詳細
試験を通じて、飛行諸元、誘導弾の搭載形態、射出力等によって、分離軌跡がどのように変わるかを把握するためのデータを取得した。AAMは各種兵装の中でも射出時に最も気流の影響を受けるとされ、AAMの射出を実現できればASMや航空爆弾といった兵装は問題なく運用できるとされている。
ミーティアAAMに酷似している。
CTS装置による模擬だけでなく、実際に安全にウェポンを分離する必要がある。そのため、設定した射出力で誘導弾を分離するランチャー・システムを試作した。油圧と空圧の両方で作動し、射出は空圧・収納は油圧で行うとされる。
試験ではランチャー・システムから実際に誘導弾の重量等を模擬したダミーストアを射出し、必要な射出力で射出できているかを確認した。
空圧と油圧で作動し、射出は高速性に優れる空圧で行う
形状はF-22のLAU-142/Aランチャーに酷似している
F-22のLAU-142/Aランチャー
下面にAIM-120などの武装がマウントされる
研究の最終段階では、実大の誘導弾内装システムとしてランチャー・システム、ベイ扉の開閉機構を備えたリグ試験供試体を2017年までに試作した。供試体を取り付ける試験架構には、飛行中にベイ扉を開閉する際に発生する大きな荷重を模擬するための負荷機構を具備している。
ランチャー・システムが3つ並ぶ
防衛技術シンポジウム2019ではウェポンベイ扉の開放から模擬AAMの射出の映像が公開された。以下にその映像を示す。
内部にミーティアに酷似したAAMが3発確認できる
«まとめ»
本研究では、戦闘機が高いGや高速で飛行する環境においても、ウェポンが格納されたウェポンベイ扉を短時間で開閉し、その間に安全にウェポンをリリースし、機体からの確実な分離を実現する技術の研究を行っている。
[ステルスインテークダクトの研究]
2011〜2018年
②が本研究のスケジュール
«概要»
高ステルス性を備えた将来戦闘機の実現に必要なステルスインテークダクトの研究
«背景・目的»
前述の通り、戦闘機のステルス化やウェポンの内装化にはには前方からの最大の散乱源であるインテークダクトの低探知化が必要となる。
曲がったダクトによりエンジンファン面を外部から見えなくしたりすることでステルス化が図られる。しかし、ダクト内の空力特性が悪化しエンジン性能に悪影響を与える傾向がある。ステルス性と空力特性を両立したインテークダクトの研究を行う必要がある。
遮蔽・ウェポンベイの収納など様々な制約がある
«詳細»
ステルスインテークダクトに関する研究は2011年に所内研究2Aとしてウェポンリリース・ステルス化の研究と共に開始された。
所内研究ではダクト内の乱れ等の基礎的な調査検討を実施し、ステルスインテークダクトに関する技術課題を把握するとともに、ステルスインテークダクトに関する構想、技術課題の解明方法等について検討を実施した。
2015年にはステルスインテークダクトの
研究試作(研究)としてSUBARUを主契約者とし8.3億円の予算の基、研究試作が開始された。
ダクトの曲げ率などの構成要素に関するCFDを実施し、境界層抽気や曲がり部への微小なベーン(羽根)の配置による気流の剥離抑制など空力特性の改善の確認を行った。
CFDによる解析後、流れ制御機構を持つ模型の風洞試験を2017〜2018年まで実施し空力特性の改善効果を確認した。
風洞模型の全体画像
風洞模型の内部構造
インテークの蓋付近に境界層抽気用の
多数の小孔が存在する(画面輝度最大推奨)

三音速風洞での試験状況
«まとめ»
ステルス性と空力性能を両立するインテークダクトについてCFDによる解析と風洞試験による有効性の確認を行った。
«背景・目的»
ステルス性が要求される将来戦闘機においては、RCS低減を目的としたウェポン内装化による胴体容積増加や複雑な曲面を有するステルス形状など重量増加傾向にあり、軽量化が必須である。
更なる軽量化のために、F-2では主翼・尾翼構造でしか適用できなかった複合材を、エンジンからの熱の影響を受け複雑な形状を有する胴体構造への適用を可能にする必要がある。
«詳細»
更なる軽量化と複合材の適用範囲の拡大のために以下の実現が目指された。
①一体化・ファスナレス構造技術
②ヒートシールド技術
③高効率・高精度構造解析技術
①の一体化・ファスナレス構造技術に関しては、複合材製部品を接着剤による接着成形によって結合し、複合材の適用部位の拡大とファスナ(金属製ボルト)の更なる削減を図ることで構造重量の低減を目指す技術である。
構造重量の約50%を占める中胴・後胴は、F-2 戦闘機の主翼に適用した複合材の一体成形技術を用いると、大型かつ複雑な治具が必要となりコスト的に不利であるとともに、製造上の制約により上面外板はファスナ結合とならざるを得なかった。
②のヒートシールド技術に関しては、軽量かつ熱遮蔽性能に優れた部材をエンジン周辺に配置することで、エンジン周辺の構造部材を従来の重い耐熱合金から、軽量な複合材やアルミ合金等に変更し、機体構造の軽量化を図るものである。
従来は複合材の母材となるエポキシ樹脂の耐熱性の限界から、高温となるエンジン周辺構造への複合材の適用は困難であった。

エンジン周辺構造
※エンジンを囲むような水色の円筒構造部が熱を遮蔽するヒートシールドである。ヒートシールド技術によりエンジン周辺構造にも緑色で示される複合材の適用が可能となる。
③高効率・高精度構造解析技術は
・自動でCAD(Computer-Aided Design)モデルから詳細
FEMモデルへ自動変換するツール
・設計者の技量によらず適切な解を得るためのモデル
作成ルール及び破壊判定ルールの策定
を中核とする次世代航空機構造解析基準である。
FEM(Finite Element Method)モデルの作成を短期間で実施でき、設計者の技量頼みであったFEMモデルの作成を自動化する。軽量化に伴う強度不足のリスクを局限する狙いである。
従来手法と高効率・高精度構造解析技術との比較
従来の航空機の構造設計について述べる。
❶3DCADデータから各部材の内部荷重の算出を目的とした、ラフな全機FEMモデルを作成する。
❷算出した内部荷重を基に各部材のサイジング作業を行う。各部材の強度評価では、試験データ等に基づく設計チャートを使用した手計算を実施する。
❸応力集中部など全機FEMモデルでは評価できない箇所は別途、詳細なFEMモデル(部分FEMモデル)を作成・評価する。
一方で近年は解析技術の向上から詳細なFEMモデルを全機レベルで作成し、直接強度評価が可能になった。この新手法のメリットとして解析精度の向上が挙げられる。
しかし従来手法では部分FEMモデルの適用範囲を限定し解析時間を抑制したが、詳細なFEMモデルを全機レベルに拡大すると多大な人手とコストを要する。
新手法と従来手法の比較
以下に新手法でのFEM解析作業を示す。
部品単品FEMモデルの作成
全機FEMモデル作成にはまず、部品単品でのFEMモデルが必要である。部品の3DCADデータから中立面シェル要素のメッシュを作成し、CAD 形状を考慮した板厚情報や材料特性のプロパティの作成を行う。部品CADの板厚や材料特性を調査するため、モデル作成に多くの人手と時間を要する。
ファスナ接合部
構造全体のFEMモデル作成には部品FEMモデルを組み上げ=アセンブリする。この時、部品同士のファスナ接合部はファスナ一本一本をモデル化し高精度な強度解析を行う。
しかし航空機は大量のリベットを使用するため、ファスナモデルの作成には多大な工数と人手が必要である。FEMモデル作成でのボトルネックにもなりうる。
全機FEMモデルの解析
全機FEMモデルはアセンブリ作業と拘束等の境界条件を設定し完成する。完成後は解析を実施し、強度評価とレポート作成を行う。この時、全機モデルが大規模化し強度評価が必要な部品点数が増える。レポート作成までの作業を効率化する必要がある。
部分FEMモデルの作成
複合材接着構造など全機FEMモデルを用いた強度評価が難しい箇所はソリッド要素を用いた部分FEMモデルを作成する。金属構造に比べ材料方向の定義等の作業に多くの手間を要する。これも同様にモデル作成作業の効率化が必要である。
まとめると、新手法では詳細な全機FEMモデル作成・評価に要する時間と人手を抑制する必要がある。
新手法の課題を踏まえ、MHIの社内研究ではFEM解析作業の効率化に資する各種自動化ツールが開発された。
MHIが社内研究で開発した、自動化ツールを述べる。
当該自動化ツールはAltair HyperWorks(アルテアエンジニアリング(株))をベースとし開発された。
(1) 単品FEMモデル自動作成ツール
目的としては単品FEMモデル作成の効率化を図る。
単品FEMモデル作成時に3DCADデータから板厚を自動で抽出する。板厚変化の多い部品も効率良くモデル化できる。
材料面でも材料データベースを基にFEMモデルに自動で材料特性を入力し効率化する。
複合材料が対象の場合、積層構成の入力も事前の積層パターンを選択することで自動化できる。
(2) ファスナ結合部自動作成ツール
目的としては全機FEMモデル作成でのアセンブリ作業を効率化する。
航空機の構造解析ではファスナ結合部を剛体要素やばね要素、梁要素等を用いてモデル化する場合がある。その際に以下の作業の効率化を行った。
・ファスナ接合部から複数層の母材を自動で結合
・接合する母材の板厚、剛性を自動で取得
・ファスナのばね定数を自動計算
・梁要素のモデル化の際に必要となるファスナの材料
やサイズをデータベースから抽出
機体構造軽量化技術の研究では上記(1)(2)の自動化ツールが採用された。
一体化・ファスナレス構造技術/ヒートシールド技術/高効率・構造解析技術を実現するためにMHIが主契約者となり総事業費77億円で研究試作が開始された。
一体化・ファスナレス構造とヒートシールド技術に関しては研究目標として、「機体構造の軽量化」10%以上低減を目指し基本設計を行った。基本設計では従来構造と比べ構造質量を11.6%軽減する見込みを得、軽量化に関する基本設計段階における技術的課題の解明の見通しを得た。
高効率・高精度構造解析技術は、研究目標を「構造解析の高効率な高精度化」解析期間を努めて半減として基本設計を行った。基本設計の結果、解析にかかる作業工程の66%(中胴構造)を削減した。
当研究の高効率・構造解析技術では更に2つの自動化ツールが開発された。以下にそれを示す。
(3) M.S.計算ツール
目的としては全機FEMモデルのレポート作成までの作業を効率化する。
全機FEMモデルのファスナ接合部を一本ずつに強度評価が可能である。結合する母材の強度評価も材料データベースを基に自動で計算し、強度評価の自動化を実現。
強度評価結果のレポートを所定のフォーマットで自動作成する機能を有し、強度評価のアウトプット作成を効率よく実行できる。
(4) 複合材構造の部分 FEM モデル自動作成ツール
目的としては複合材構造の部分FEMモデルの作成を効率よく行う。
シェル要素では強度評価が難しい、接着強度等をソリッド要素で構造をモデル化する。
形状のパラメータを指定しモデル作成の自動化や複合材の材料方向の定義を自動化し効率化を果たした。
全機 FEM モデルと部分 FEM モデルをつなぐ作業の自動化を実施した。ソリッド要素で作成した部分FEM モデルをシェル要素で作成した全機 FEM モデルに埋め込み解析する際に、スムーズに部分FEMモデルを用いた解析ができる。
基本設計の後からは、2017年には一体化・ファスナレス構造技術及び高効率・高精度構造解析技術の検証のため、構造要素供試体を試作した。構造要素供試体は内部に燃料タンクを構成する構造部位であり、燃料タンク圧を模擬した加圧試験を実施した。
所内試験の結果、加圧試験において耐荷することを確認するとともに所要のデータを取得した。
構造要素供試体と将来戦闘機の相対配置
構造要素供試体の詳細
展示された構造要素供試体の一部
(1枚目・相対配置画像の点線部)
接着剤による面接着が窺える
解析技術では既述の自動化ツールを作成し、モデル作成ルール及び破壊判定ルールを定めた次世代航空機構造解析基準を作成した。
また、各自動化ツールの解析作業効率化への効果検証が実施された。同一の航空機構造に対して従来手法(手計算+詳細 FEM)と新手法(高精度 FEM による直接評価+自動化ツール)のそれぞれを適用し,FEM モデルの作成から強度評価までの一連の作業に要した作業工数の比較が実施された。
従来手法に比べ新手法では作業工数の 50%以上の削減を実現し、航空機の構造設計における自動化ツールの効果の目途が得られた。
ヒートシールド技術については、別途製作した供試体により耐火要素試験及び遮熱性能要素試験を行い、所要の耐火性及び遮熱性を有することを確認した。
構造要素供試体の試作後、2018年からはさらに大型で広い範囲の胴体構造を模擬した部分構造供試体の試作及び試験を行い、飛行中の力をかけた構造強度及び解析精度の検証を実施している。
部分構造供試体は、戦闘機の中部胴体、後部胴体及び主翼の一部を模擬した実大の供試体である。供試体作成における、戦闘機の想定モデルとしては後述の26DMUである。
将来戦闘機と部分構造供試体の相対配置
部分構造供試体の詳細
今後の予定として、部分構造試験終了後の2019年後半から2022年にかけて耐環境試験を実施する運びである。
«まとめ»
機体の複合材の適用範囲の拡大と更なる軽量化のために、一体化ファスナレス構造、ヒートシールド技術、高効率・高精度解析技術に関する研究を行い、所要の試験を実施している。
[将来戦闘機用小型熱移送システムに関する研究]
2016〜2020年
«概要»
将来戦闘機の搭載アビオニクス性能向上に伴う発熱量増大に対処し、機体性能を最大発揮するために必須となる小型熱移送システムに関する研究
«背景・目的»
将来の戦闘機には敵ステルス機などへの対処から先進的なアビオニクスシステムの搭載が必要不可欠である。
レーダ等の大出力化等に伴う発熱の増大に対応するための冷却システムが必須である。増大する発熱への対応にあたり、従来のエア・サイクル・システム(以後、ACS:Air Cycle Systemと表記する。)
では、エンジンから一部の圧縮空気を抜き、冷却空気を作った上で熱交換するため、装置の大型化及びエンジン性能の低下を招く。
戦闘機の内部とACS
エンジンと接続されており、
エンジンからの圧縮空気を用いる
レーダーの直接的な冷却はリッキド・クーリング
・システム(以後、液冷システムもしくはLCS:
Liquid Cooling System)で行う
※機器の冷却とは何らかの物質に機器からの熱を吸収させる事である。継続して冷却するためには、液冷システムにより吸収された熱を排熱する必要がある。レーダ→液冷システム→冷却空気→空気排熱という形で排熱する事により、継続した機器の冷却が可能になる(→が表す別の系への、熱の移動がいわゆる熱交換である)。熱移送・排熱能力が不十分だと冷却液の吸収する熱量に対し熱交換が追いつかなくなり、冷却液の吸収できる熱量は限界に達し機器の冷却ができなくなる。
これらの事からレーダーなどの発熱量の増大に対応する、効率の良い熱移送能力を持つ小型熱移送システムの実現が必要である。
そのため、米国のF-22でも採用されている、小型で熱移送能力に優れたベーパ・サイクル・システムの研究を実施する。排熱能力の拡張の為、空気への排熱だけでなく燃料への排熱に関する研究も行う。
※ベーパ・サイクル・システム:液体の蒸発及び気体の凝縮により熱を移送させるサイクル・システムのこと。以下はVCS(Vapor Cycle System)と表記する。
また、レーダ以外にも、モータ、発電機等からも発熱するため、全機レベルで放熱できる能力が不足する可能性がある。
そこで全機レベルの熱収支管理技術も併せて研究を行う。ミッション全体を通した全機の熱収支を管理し、最適な熱移送システム、排熱先を適宜選択し、機体性能を最大発揮することに資する。
後述の将来戦闘機機体構想の研究ではVCSの実現を前提にDMUが作成されている。また、将来戦闘機のバーチャル・ビークルの研究試作においては、各搭載装備品の発熱量詳細内訳、冷却要求値の割り付け等を検討している。
このバーチャル・ビークルの研究試作では、本研究試作から得られるVCSに係る成果の活用が必要不可欠である。
«詳細»
以下に本研究のキーワードとなるVCSの概要を記述する。
VCSとは先述の通り、液体の蒸発及び気体の凝縮により熱を移送させるサイクルのことである。代替フロン等の高い蒸発潜熱を利用したサイクルのため、熱移送能力に優れ小型化が可能である。

VCSの構造詳細
凝縮器は燃料タンクに、蒸発器はLCS
に接続されている。(1枚目より)
下概念図のVCSの流れを述べる。
①蒸発
・レーダ等の熱はLCSの冷却液により吸収さ
れ、蒸発器に送られる。
・膨張した代替フロンが冷却液の持つ熱を蒸
発という形で奪う。熱を放出した冷却液は
再び液冷システムへと送り返され機器の冷
却を行う。
※蒸発による相変化で熱を吸収する点では、真夏の打ち水と同じである。
②圧縮
・蒸発した代替フロンは圧縮機へと送られる。
・蒸発した代替フロンは、後の凝縮過程で熱
を放出しやすいように圧縮機のモータで高
温高圧に圧縮される。
③凝縮
・燃料が凝縮器へと送られる。
・蒸発し圧縮された代替フロンは、燃料によ
り冷却され凝縮器で凝縮する。
・代替フロンの凝縮による熱を受け取った燃
料は再び燃料タンクに送られ、エンジンで
消費されるか再び排熱に使用される。
・この時点で排熱自体は完了する。
※燃料は比熱が大きく、大量に搭載可能であるため(F-35Cの場合、機内燃料は満載で約9t)排熱先として利用できる。
④膨張
・凝縮された代替フロンは膨張弁に送られる。
・蒸発器で蒸発しやすいように、代替フロン
は膨張弁で相はそのままで膨張される。
・膨張した代替フロンが蒸発器へと送られて
①へと戻る。
※実際は支流も存在するなど、もう少し複雑な構成である。
サイクル内で蒸発・凝縮を繰り返すのは
代替フロンなどの冷媒である。
前述の要求を達成するために2018年から総額35.7億円の予算で、小型高性能なVCSや熱収支管理技術の研究試作を行っている。また、同時に既に先進技術実証機などで実績のある、ACSの研究試作も行っている。
LCSは器材で模擬している。エア・ラムによる冷却も空気力学からシュミレート可能なため、機器の動作及び冷却状態をソフトウェアで模擬するなど、研究試作箇所の局限によるコスト削減が行われている。
将来戦闘機の熱移送システムは全てVCSに置き換えるのでは無い。VCSやACSを併用し、排熱先も空気と燃料の両方を併用する事で、熱移送能力及び排熱能力の強化を図る。
熱収支管理技術で最適な熱移送システム及び排熱先を選択する事で、機体性能を最大発揮する。これが将来戦闘機用熱移送システムのコンセプトである。


将来戦闘機の熱移送システム
VCSとACSの併用及び実際段階でどうなるかは不明なもののレーダの冷却に液冷システムを想定している。
2019年1月時点では基本設計を完了している。VCS供試体の構成を検討し、各構成品の性能割当てと基本設計を行い、熱移送システムが所要の熱移送能力を得る見通しを得た。基本設計の成果を基に、各種試作や試験が行われていく。
実際に設計されたVCS
この他にもACSが試作される。
«まとめ»
レーダーを始めとするアビオニクスの発熱量増大に対応する、小型で熱移送力に優れたVCSや熱移送・排熱を管理する熱収支管理技術に関する研究を行っている。今後2020年までに試作と所内試験を実施し、その有効性確認する予定である。




























































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