【研究開発詳細(2)】
 研究開発詳細(2)では先述の「将来戦闘機に関する研究開発ビジョン」より以降の、事前の研究開発について述べる。(1)と同様に個人撮影のものは無断転載を禁ずる。

 なお、どの研究も将来戦闘機への適応を想定し、「開発プランの選択肢に資する」目的である。実際の開発内容によっては選択される技術も変化しうるため、ここで述べられる研究全てが必ず適用される訳では無い。


«飛行制御関連»

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  1. 電動アクチュエーション技術の研究
  2. 推力偏向ノズルに関する研究



[電動アクチュエーション技術の研究]

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2015〜2019年

«概要»
 将来の戦闘機に要求される高ステルス性機体形状を実現する方策の一つとして、油圧系統を廃することにより機体形状の設計自由度の向上等を図る電動アクチュエーションシステムに関する研究を行い、技術資料を得る研究

«背景・目的»
 ステルス戦闘機の実現には、内装型ウェポンベイや屈折したインテークダクトなどの配置を考慮した複雑な機体構造が必要となる。艤装の簡素化と機体構造への制約を軽減するため、機器間の接続が電気配線のみで構成される電動アクチュエーションシステムに関する研究を行う。

 従来の舵面・降着装置の動作を行なっていた油圧アクチュエータは、油圧系統の配管設置のために剛性、長さ等を考慮した設計が必要であり機体構造への制約があった。

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油圧アクチュエータと電動アクチュエータの比較
本研究では個々のアクチュエータに独立した油圧接続
をもち、電動モータでポンプを駆動させるEHAを採用
※従来はシリンダの作動のために配管を機体内に這わし、機体側の油圧源からアクチュエータへと油圧を伝達させる必要があった

«詳細»
 電動アクチュエーションシステムの利点として以下の内容が挙げられる。

・油圧用の配管の不要と伴う機体設計上の制
 約緩和
・点検口の削減、機体表面平滑化によるステ
 ルス性への寄与
・整備性の向上
・被弾時の操縦系統への影響局限による生存
 性の向上

 上記利点を実現するアクチュエーションシステムの成立に向けて、以下の技術的課題の達成が目指された。

・耐環境性、耐久性、電磁適合性を踏まえた
 アクチュエータ性能
・モータ部に要求される大電流に対する発熱
 対策
・戦闘機の機体内部に搭載可能なレベルの小
 型軽量化
・高負荷電力対応高電圧電源システム技術

 研究試作(その1)と(その2)で各種研究試作が行われた。全体システムの設計と電源システムの試作はMHIが行った。

 電動モーターには埋込永久磁石型同期モータが採用され、インバータスイッチング方式・モータの駆動方式についてはパルス幅変調によるベクトル制御が行われている。

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基本設計の概要

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研究試作品の概要
 
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試作されたアクチュエータと全体配置

«まとめ»
 将来の戦闘機に要求される高ステルス性機体形状を実現する方策の一つとして、油圧系統を廃することにより機体形状の設計自由度の向上等を図る電動アクチュエーションシステムに関する研究を行った。
総予算は29.5億円



[推力偏向ノズルに関する研究]

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2016〜2023年(画像は計画時のもの)

«概要»
 高運動性が求められ、かつステルス性確保のために操舵面積の縮小等が予測される今後の戦闘機のエンジンに有効である推力偏向ノズルについての研究

«背景・目的»
 将来の戦闘機は高運動性とステルス性の両方の要求が予測される。従来の舵面を用いた空力操舵を上回る運動性を確保するには推力偏向機能が必須となる。また、推力偏向で機体の姿勢制御を代替することは尾翼などの操舵面を削減・縮小する事が可能となり、無尾翼機の姿勢制御やステルス性の向上にも寄与する。

 以上の事からステルス性と高運動性を両立する従来の排気ノズルに代わる三次元推力偏向ノズルが必要である。

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推力偏向による利点

«詳細»
 将来の戦闘機の選択に資する、推力偏向ノズルを実現するべく以下の目標の達成を目指している。

・XF9-1級の大推力エンジンの排気ジェットを
 全周20度偏向させるために必要な三次元
 可変機構技術の確立

・推力偏向ノズル故障時においても、排気ノ
 ズル面積が急減することによってエンジン
 が不安定作動となることを防ぐとともに、
 推力偏向時におけるアクチュエータ固着な
 どの故障によって発生する非対称推力を極
 力打ち消すためのノズル制御技術の確立

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基本設計の概要
全周20°に渡っての推力偏向が可能

研究試作ではXF9-1エンジンに装着可能な3次元推力偏向ノズルが試作された。設計期間短縮などの効率性と経費削減のため、XF9-1の排気ノズルに関する基本的な構造、材料、制御等に関する設計成果を活用している。

総予算は41.6億円

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試作品の概要

MAST Asia 2019で展示された試作品(XVN-3)の模型
※機構として青色のアクチュエータ-青色の推力偏向リング-ノズルと接続されている。アクチュエータの伸縮に合わせ、リングを介してノズルの向きと角度を偏向する事ができる。これが本試作品の推力偏向の仕組みである。
Yasuおすぎ氏提供
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同じくMAST Asia 2019での模型
※前述の通り、アフターバーナー機能を有する戦闘機用エンジンはノズルのコンバージェント/ダイバージェントを行う必要がある。そのため、本試作品では水色のアクチュエータが伸縮を行う事でリングを介しノズルのコンバージェント/ダイバージェントを行う。

«まとめ»
 高運動性とステルス性の両立に寄与する三次元推力偏向ノズルに関する研究を行い、XVN-3という推力偏向ノズルの試作品を試作した。研究目標の達成のために2023年まで所内研究を行う予定である。


«コラム:推力偏向パドルと推測偏向ノズル»
 先の先進技術実証機では、全周方向に推力を偏向する3次元推力偏向パドルを採用した。
しかし先述の通り先進技術実証機の後からも、同じく全周方向に推力を偏向する3次元推力偏向ノズルの研究が行われている。

 この2つの違いとして、構造の違いが挙げられる。

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先進技術実証機の推力偏向パドル付近
XF5-1は機体フレームの内部に収められている

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XF5-1の後部写真
ノズルのダイバージェント/コンバージェントを行う

 先進技術実証機の推力偏向パドルでは、パドルによる偏向機構部は機体フレームに接続されている。パドルは推力偏向のみを行う。

 ノズルのコンバージェント/ダイバージェントは、機体フレーム内部に収められているエンジンの尾部の動作機構で行われる。

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XF9-1への装着を考慮したXVN-3推力偏向ノズル

 一方、推力偏向ノズルは偏向機構がエンジン本体に取付けられている。ノズルは偏向機構により推力を偏向する他、ダイバージェント/コンバージェントの役割も担う。

 よって先進技術実証機では推力偏向パドルが採用されたものの、必ずしも将来戦闘機が推力偏向パドルを採用するという訳では無い。