«アビオニクス関連(1-1)»
[コンフォーマル空中線]
1987〜1997年
«概要»
曲面薄型構造空中線の実現に必要な技術資料の取得
«前史»
日本はAESAレーダーに関する基礎的な研究を1960年代末から開始し各種試作を行った。1980年代初頭には「将来火器管制装置の研究」の一環として「将来火器管制装置空中線部の研究試作」が実施された。この時に試作された空中線は3端子素子であるGaAsFET素子を採用した。
従来の2端子素子を用いた試作品より飛躍的に電力効率・小型軽量化・集積度・安定度が向上し、後のAESAレーダー開発における実質的な原点となった。
将来火器管制装置空中線は後の多数の
AESAレーダーの技術的な原点となった

将来火器管制装置空中線

将来火器管制装置のアンテナモジュール
«背景・目的»
実用的なAESAレーダーの開発の成功後、TRDIは3次元形状である機体等の外形形状に幅広く適合できる曲面薄型構造空中線の実現を目指した。
«詳細»
上記目標を実現するために曲面上での各種ビームの形成と伴う信号処理技術、冷却技術の実現及び技術資料の取得が目指された。
コンフォーマル空中線(その1)では半球上の表面に多数のアンテナを配置した空中線が試作された。放射パターンやレーダーの指向方向を動的に変化させ瞬時に焦点を合わせるDBF技術・RCSの低減可能性等の各種性能確認試験が行われた。
帯域はXバンド、素子数は1431素子
レーダー方式はPESAである
ディジタル制御で多ビームの形成を1つのアンテナ
で容易に行うことができ、観測幅の拡大が期待できる
試験の結果、所望のビーム形成・RCS低減及びに広角走査が可能であることを確認した。
コンフォーマル空中線(その2)では機体の特徴的な部位である機首・側胴・翼前縁部分に適合するA〜C型までの3種類の形状の空中線が試作された。

コンフォーマル空中線の送受信モジュール
(その3)では空中線駆動部とシステム制御部を、(その4)では全体を制御し記録・表示・解析等を行う機器と専門装置が研究試作された。試験により曲面上での各種ビームの形成と伴う信号処理技術、冷却技術の実現及び技術資料の取得がなされた。
«まとめ»
各種研究試作により曲面薄型構造空中線の実現に関する技術的資料を得た。
[スマートスキンの研究]

1991〜1999年
«概要»
コンフォーマル空中線を更に薄型化し使用帯域の広帯域化を実現する研究
«背景・目的»
前述のコンフォーマル空中線はアンテナから信号処理部を出来るだけ一体化して薄くし、周波数的には狭帯域で実現した技術であった。
コンフォーマル空中線から使用帯域を広帯域化し、更なる薄型化を目指した。
«詳細»
使用帯域を増加させると従来のアンテナは使用できず、従来の送受信モジュールに比べ非効率となり発熱量が増大する。曲面化と帯域の拡大によってビームの形成が複雑になる。
これらを解決するために中長期的に以下の技術課題の達成が目指された。
①薄型層状化技術
②広帯域アンテナ素子技術
③広帯域送受信モジュール技術
④高効率冷却技術
⑤広帯域曲面形状のビーム形成技術
これらの課題の事前解明するため、1996年からスマートスキンの研究の一環としてスマートスキン主要構成要素の研究試作が実施された。1996〜1998年の(その1)ではDBF受信系を、1997〜1999年の(その2)ではDBF送信系の研究試作を実施し、試験を行った。

スマートスキン主要構成要素
«まとめ»
試作と試験によりC〜Xバンドの広帯域による低サイドローブのビーム形成技術、広帯域アンテナ素子の開発などの技術資料を得た。
[コンフォーマル・レーダー・システムの研究]
1998〜2003年
«概要»
覆域の拡大、多目標の同時捜索・追尾及び高分解能画像化表示等、航空機の外形形状に適合可能な先進的コンフォーマル空中線技術を適用したコンフォーマル・レーダ・システムの実現性を検証するための技術資料を得る。
«背景・目的»
形状に適合させた曲面形状のレーダを使用することにより、覆域を拡大するとともに一つのアンテナから同時に複数のビームを形成するマルチビームを用いて 同時捜索・追尾の多目標化とレーダ電波を使用して、地形等を写真のように映像にして映し出す合成開口レーダの高分解能化を図る。
それらにより火器管制能力及び偵察能力の向上等を可能とする先進的コ ンフォーマル・レーダ・システムの実現性を検証するための技術資料を得ることを目的とした。
«詳細»
研究目的の1つである、先進的なレーダに関する要素技術の有効性の確認 という目標の達成が目指された。そのため、まず任意曲面形状からビーム形成ができることを確認するとともにマルチビームを形成可能なレーダ信号処理等を確認し、先進的な要素技術の有効性を確認した。
その後は研究目的である、航空機搭載コンフォーマル・レーダ・システムの実現性の検証を目指した。
検証を行うために試作した空中線部と信号処理部を実際にC-1FTBに搭載し、空中線の機体外表面への適合化技術等の先進的な要素技術を統合して、航空機に搭載した状態でレーダ・システムの実現性を検証した。
※C-1FTBとはC-1輸送機の試作機(XC-1:機体番号001)を装備品の飛行実験機としたもの。岐阜基地の飛行開発実験団に配備され、XF7-10、F3などの各種エンジンの空中試験にも用いられた。
試作品の概要
所内試験ではコンフォーマル空中線・DBFにより、同時複数目標探知追尾が可能であることを確認するなど目標の性能を達成した。
«まとめ»
各種試作と試験により、先進的なレーダに関する要素技術の有効性の確認や航空機搭載コンフォーマル・レーダ・システムの実現性の検証が達成された。
[スマートRFセンサの研究]
2002〜2010年
«概要»
航空機、艦船等への適用が可能で、レ-ダ、ESM、ECM、通信の複数機能を1つのアンテナで実現できる多機能RFセンサシステムに関する技術資料を得る。
«背景・目的»
レーダ、ESM、ECM及び通信の複数機能を1つのアンテナで実現できる多機能RFセンサの研究が、欧米で2010年代の実用化を目指して進められている。
これが実現すると航空機、艦船等の防衛装備品に取り付けられる電波機材の
・アンテナやポッド類の削減による低RCS化
・多機能性によるマルチミッション化
・電子機材削減、搭載スペース低減、共通部
品化によるコンパクト化
・レーダ、ESM、ECM個々の性能向上に
よる高性能化
など戦闘に大きな影響を及ぼすものと考えられる。
日本はスマートスキンの研究などで広帯域空中線を試作し、欧米に劣らない基本的な技術を取得した。さらに、帯域を広げ、高出力化及び小型化を図り、受信機等の共通化と多機能化の研究を行うことにより、早期に実用化への目途をつけ、欧米の研究に遅滞なく技術を保有する必要があった。
«詳細»
先の多機能RFセンサの利点・各機能だけでなく、野外環境において各機能の協調動作による新機能の実現を可能にするセンサシステムの実現を目標とした。
協調動作の背景として、機首の大口径空中線によるESMで目標の高精度な方探が可能になった事があげられる。レーダーとESMの連携により、ESMで高精度方探を行い走査範囲を絞る。その後、探知方向に集中的にレーダー走査を行うことで探知時間の短縮・探知距離の延伸などが見込めるからである。
※従来はESMは振幅比較方探方式という複数の離れた位置にあるアンテナで受信した電波の振幅を比較して目標の方位を求める方式を採用し、主翼前縁部の小型空中線が担当していた。敵から電波の照射を受けていることをパイロットに警告することを主たる機能としており、レーダーの走査と協調できるレベルでの高精度な方位探知は望めなかった。
また、それらを実現するために以下の研究課題の達成を目指した。
・レーダー、広帯域にわたる受信が必要な
ESM等を一つの開口で実現するための広帯
域高出力空中線
・レーダ、ESM等を一つのハードウェアで実
現するための多機能ハードウェア共通化技
術
・複数機能の協調動作を実現するための多機
能制御技術(制御、信号処理)
研究試作(その1)では全体の設計と空中線が試作された。(その2)では多機能共通ハードウェアが試作され、(その3・4)では多機能処理部を試作した。また、評価試験方法にシュミレーション技術を用いて効率化を図った。

各機器の配置
空中線部の冷却は液冷となっている
空中線部の特徴として、AZ・ELアレイに常時ESM機能を担うDBFA部が配置されている。受信電波を方向に関係なく受信可能な円偏波とする事で、広覆域常時警戒を可能としている。
APAA部に関してもDBFA部混在による小型・薄型化への要求や、広帯域・高感度高出力化の観点からボウタイアンテナ(Bow-Tie:蝶ネクタイ)が採用された。
空中線部の技術的課題
ボウタイアンテナは、レーダ/低帯域におけるVSWR改善(電圧定在波比:値が小さいほどロスが少なくなる)のため、スリットの装荷や端部の円弧化が施された。
スマートスキンの研究でのC〜Xバンドから
C〜Kuバンドと更なる広帯域化が実現
所内試験は2005年から始まり、2007年末〜2009年初頭には電子装備研究所のレーダー電子戦シュミレーターを用いて協調動作試験を行った。
2009年6月〜2010年6月には野外試験が行われた。茨城県の沖合にて百里基地から発進した機体を目標に、電子装備研究所飯岡支所に設置された試作品がESMによる目標の探知と追尾を行った。この他にも築城基地でも探知試験が行われた。
2010年7月〜12月にはレーダー電子戦シュミレータを用いて最終的な総合試験を行った。
所内試験の概要

所内試験で用いられたレーダー電子戦シュミレータ
各種試験の結果以下の成果が得られた
多機能性に関しては時分割制御による各機能の高速同時切替により達成され、ESMの常時使用や各機能の同時使用が可能となった。
レーダーとESMの協調動作は、非協調動作時に比べ11.2%の探知距離の延伸を実現した。これはレーダーの送信電力の63%増に相当する。また、協調動作により目標探知時間の短縮も図られた。
ECMもスポットで照射可能な他、ESM自体も方位探知精度の向上や従来比で4倍近い探知距離の延伸が図られている。
«まとめ»
当研究の実施により航空機、艦船等への適用が可能で、レーダ、ESM、ECM及び通信の複数機能を1つのアンテナで実現できる多機能RFセンサシステムに関する技術的知見を得ることができた。
この研究成果は「先進統合センサ・システムの研究試作」、「統合電波システムの研究」に反映された。統合電波システムは海上自衛隊の30FFMのOPY-2多機能レーダーに活用されるなど、広帯域多機能レーダー技術の礎となっている。
[3次元高精度方探システム]
2008〜2013年
«概要»
将来戦闘機に適用が期待される構成要素技術のうち、エレベーション及びアジマスの両方向標定が可能な3次元高精度方探システムの実現可能性に関する技術資料を得ることを目的とする研究
«背景・目的»
各国ではレーダーなどに対する低探知性を有するステルス戦闘機の研究開発が進められており、自機のレーダーによる捜索では探知距離が短くなり、不利な情勢に追い込まれることとなる。
敵機からの電波を捉え方位探知を行うESMは、ステルス機に対する有効な探知手段となりうる。ESMは自ら電波を発しないパッシブな探知手段であり、秘匿性に優れると共に探知距離もレーダーより長い。また赤外線を用いた探知手段より、雲などの天候の影響を受けにくいなど多くの利点を有する。
しかし、既存の戦闘機のESMは前述のように敵機の方位探知を行える程の精度を持っていなかった。※詳細はスマートRFセンサの項目を参照

従来のESM
3次元方向の方探は不可能てあり2次元方向の
分解能も低く高精度な方探が不可能
将来戦闘機への適用が期待される3次元方向の高精度な方探を実現するために、水平だけでなく垂直方向の方探も可能な3次元高精度方探システムの研究が必要であった。
«詳細»
3次元高精度方探システムの研究で以下の運用構想に関する技術的資料の取得を目指した。
・水平及び垂直方向の秘匿性に優れた高精度
な方位探知
・味方機とのデータリンクを活用したESMに
よる測距
・上記の自ら電波を発しないパッシブな手段
によるミサイルの射撃
方探システムによる捜索の比較
本研究では技術資料を得るために以下が技術的課題となった。
(ア) 戦闘機用高精度方探技術
デジタル信号処理を取り入れた時間差方探方式による垂直及び水平方向方探の実現、LPI(Low Probability of Intercept)化されたレーダの送信尖頭電力低減や周波数拡散等への対応
※時間差方探方式:複数の離れた位置にあるアンテナで受信した電波の相互の到来時間差により、目標の方向を求める方式。前述の振幅比較方探方式と比べ方探精度が高い。
(イ) 3次元方向標定技術
目標の垂直及び水平方探情報を組み合わせた統合方探処理による3次元空間に存在する目標の方向標定を行う統合方探処理機能の実現、データリンクを活用した僚機との連携及び他機器(火器管制レーダまたはIRST(Infra-Red Search and Track System))との連接による目標位置標定を用いて自ら電波を発することなくミサイルを発射するシステムの実現性検討
(ウ) 戦闘機搭載用3次元方探アンテナ技術
試験母機となるF-2の飛行性能とアンテナ性能を考慮した小型軽量化された高精度方探アンテナをF-2の垂直尾翼に搭載するための適合性確保、将来の戦闘機に搭載するための高速度、高G機動、機体振動等の戦闘機搭載環境下に適合した総合的な戦闘機の性能を考慮した高精度方探アンテナの実現性検討
本研究では3次元方位探知システムはMELCOを、試験母機となるF-2Bの改修にMHIを主契約者として研究試作(その1、2)と所内試験が実施された。
研究試作(その1)では2008〜2010年にシステム設計、細部設計、関連試験及びF-2に適用した場合のシステム発展性検討を実施した。
研究試作(その2)では2009〜2012年に装置製造、母機改修、関連試験、技術確認試験及び将来戦闘機に適用するためのシステム発展性検討を実施した。
2011年度末に、電子装備研究所(目黒
地区)のレーダ電子戦シミュレータにおいて、装置単体での模擬電波探知試験を実施した。
2012年は、装置を母機へ搭載した形態において、母機適合性試験、方探性能地上試験及び方探性能飛行試験を実施した。同年6月~10月にかけて地上試験および飛行試験を航空自衛隊岐阜基地とその周辺空域で実施し、方探精度や受信感度等の性能を確認した。
所内試験の結果として以下のような成果を得た。
(ア) 装置単体での技術確認試験により、垂直及び水平方向の方探が可能であることを確認するとともに、装置単体における最小受信感度及び瞬時受信帯域について研究目標を満足することを確認した。
(イ) 発展性検討において、自ら電波を発することなくミサイルを発射するシステムについて実現性を検討し、実現のために必要な技術要件等を明らかにした。
(ウ) 戦闘機搭載環境下における高精度方探アンテナの実現性について、シミュレーション解析等により適合性の見通しを得た。
«まとめ»
3次元高精度方探を実現するセンサシステムを試作し、F-2Bを母機とする試験を行った。試験の結果、システムの妥当性を確認した。また、ESMによる射撃管制の発展可能性についての技術的要件などを明らかにした。








































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