«エンジン関連(1)»
- 将来エンジンの研究(制御)高性能エンジン制御装置
- 将来エンジンの研究(エンジンシステム)
- 将来エンジンの研究(構造強度)高温タービン
- 将来エンジンの研究(熱空力)試験用ファン
- 将来エンジンの研究(エンジンシステムの研究)
- 将来エンジンの研究(2)将来エンジン主要構成要素の研究
- 将来エンジンの研究(3)実証エンジンの研究
- 先進材料のエンジン適用化技術に関する研究
- 分散型制御方式の研究
- エンジン圧縮系要素空力形状の研究
[将来エンジンの研究(制御)高性能エンジン制御装置]
1982〜1989年
[将来エンジンの研究(エンジンシステム)]

1984〜1990年
[将来エンジンの研究(構造強度)高温タービン]

1984〜1991年
[将来エンジンの研究(熱空力)試験用ファン]

1984〜1992年
[将来エンジンの研究エンジンシステムの研究]

1990〜1994年
※高性能エンジン制御装置からエンジンシステムの研究は、
同じ「将来エンジンの研究」として密接な関わりがある。
そして例によって資料も少ないためまとめて解説を行う。
«概要»
将来の航空機用推進装置の独自技術を確立するため、再熱装置(アフターバーナ)・電子式燃料制御装置(FADEC)などを搭載したターボファンエンジン技術の確立を行う。
«背景・目的»
日本は敗戦後、外国の航空機用エンジンの修理やライセンス生産などでエンジン工業の形態の再整理やジェット・エンジン技術を高めてきた。
ジェットエンジンの国産化に向けて、T-1練習機に採用されたJ3-3エンジンで国産初のターボジェットエンジンを、T-4練習機に採用されたF3-30エンジンで国産初の小型機向けターボファンエンジンを開発した。
そして、独自の超音速機用エンジン技術の確立のために、超音速機用エンジンで一般的である比推力を大きくできるアフタ・バーナ付低バイパス比ターボファン・エンジンに関する技術資料の取得を目指した。
«詳細»
高性能エンジン制御装置では航空機用エンジンの油圧機械式制御装置に替わるディジタル電子制御装置(FADEC)に関する研究が行われた。
FADECはすべてのエンジン制御演算をディジタル計算機で行うため、その高度な演算能力を活かしてエンジン性能を最大限に発揮させるとともに,故障診断機能を備えたり制御機能を追加・変更することが容易なため,エンジン全体の開発や改善向上の点でも有利であるとされる。
エンジンシステムでは、推力の増強装置である超音速機用再熱ファンエンジンの再熱装置(アフターバーナ)に関する基礎研究が行われた。
高温タービンでは、燃焼器の高温化による将来エンジンの高性能化に必要な高圧タービンに関する研究が行われた。
高圧タービンは燃焼器からの高温の燃焼ガスを受け止め、タービンの回転として推力を取り出す。燃焼ガスの高温化は推力や燃費の改善に直結する。高温の燃焼ガスに耐える高温タービンの実現はエンジンの高性能化において非常に重要となる。

ターボファンエンジンの模式図
タービンは燃焼器からの高温の燃焼ガスと
自身の高速回転による遠心力に晒される
試験用ファンでは、高圧力比・高効率ファンのための新型動翼である、衝撃波制御翼に関する研究が行われた。
エンジンシステムの研究では、戦闘機の推進装置として不可欠な超音速機用再熱技術及びエンジンシステムインテグレーション技術に関する研究が行われた。
そして1992年に国産初のアフターバーナー付きターボファンエンジンとしてXF3-400が防衛庁に納入された。
XF3-400のカットモデル
これまで研究された再熱ファンエンジン技術のテストベッドとしてXF3-30エンジンをベースに開発された。XF3-30からの改造部分としては、コアエンジン(圧縮機、燃焼機、高圧タービン)の改良による高温化やアフターバーナの追加による推力の増加、なとが挙げられる。
高温化は当時としては最新の素材である単結晶材をタービンの動翼及び静翼への適用を行い、粉末冶金材を用いたタービンディスクなどにより達成された。
高温化によりF3-30と比べ
・推力:17kN→21kN(リヒート時34kN)
・重量:340kg→501kg
・推力重量比:5→7
・タービン入口温度:1050℃→1400℃
と各種性能の向上が図られている。
水色が静翼、青色が動翼、灰色部がタービンディスク
タービンは燃焼ガスを受ける動翼と、動翼を
保持するタービンディスクで構成される
また、XF3-400には研究されていたFADECが適用された。FADECが故障した時のバックアップとして油圧機械式制御も用意されている。
XF3-400のFADEC
XF3-400の地上試験では,AB性能,電子→油圧バックアップ制御切換特性,過渡制御特性等に関するデータ取得、改善等を実施し、XF3-30のグロスポテンシャル性を実証した。
«まとめ»
XF3-400で日本において初めてアフターバーナ付エンジンの技術的成立性などを実証した。技術の蓄積によりXF3-400で最大推力に達成するまでの時間と手間は、XF3-1の70%程度で済んだという。
また、このエンジンの成果はより本格的なアフターバーナー付きターボファンエンジンであるXF5にも活かされた。
[将来エンジンの研究(2)将来エンジン主要構成要素の研究]
1991〜1999年
«概要»
再熱エンジンのファン、圧縮器、及び燃焼器等主要構成要素の性能向上に関する研究
«背景・目的»
先述のXF3-400で再熱ファンエンジンに関する一定の成果を得た。その成果を活かし、
より本格的な再熱ファンエンジンの開発に資する研究を行った。
«詳細»
一言で言うのなら後述のXF5エンジンの準備的な研究である。ファン・圧縮機・燃焼機・タービンなど構成要素毎の性能向上についての研究を行った。試作したものとして
・圧力比4.2の3段ファン
・圧力比6.3の6段圧縮機
・燃焼温度1550℃の燃焼機及びタービン
・制御用電子機器
があげられる。
また、将来の高運動機へ適用するノズルの候補として矩形の排気ノズルを上下方向へ向けることを可能とするXVN-10という推力偏向ノズルの研究を実施した。形としてはF-22の2次元推力偏向ノズルと類似している。試験は先述のXF3-400を用いて行われた。
エンジンの後方に2次元推力偏向ノズルを接続し所定の上下方向の角度の推力偏向が可能であることを確認している。
この試験では推力の偏向角、ノズルフラップの冷却、機構等に関する基本的なデータを取得した。この推力偏向ノズルは,エンジン後方から見えるアフターバーナや低圧タービンなどがノズルフラップで隠されること及び高いアスペクト比(矩形ノズルの縦横比)を採用することで周りの空気と混ざりやすくなり,赤外線放射量低減にも効果があるものとされている。
«まとめ»
各種試作を実施し、より本格的な再熱ファンエンジンの開発に資する技術的成果を得た。
«コラム:謎の IHI-17 エンジン»
防衛省の資料では掲載が確認されていないが、IHI-17というF3-30をベースにIHIで社内開発された、日本初の純国産アフターバーナー付きターボファンエンジンが存在する。超音速戦闘機用エンジンの技術を取得するために開発された。IHIによるJ79エンジンのライセンス生産版の型番はJ-79-IHI-17Aであるが、IHI-17の文字を含むもののこちらは無関係である。
先のTD-Xとは違い2008年と2012年の国際航空宇宙展(JA)で展示が確認されている。
JA2008でのIHI-17
スペックは全長3000mm x 外径560mm、質量485kg、推力20kNとされている。画像は存在するものの、インターネットで閲覧可能な詳細な資料は確認できていない。
JA2008では説明パネルも設置されたが、それを鮮明に映した画像は未確認である。僅かに、JA2012の画像からF3-30の後に製造された事は推測される。
情報提供を求む。
[将来エンジンの研究(3)実証エンジンの研究]
1995〜2002年
«概要»
主要構成要素の研究試作成果を統合し超音速戦闘機の推進装置として不可欠な高性能ターボファンエンジンの国産技術獲得の研究
«背景・目的»
XF3-400や先の主要構成要素の研究で培った技術を基に、将来の超音速航空機などの推進装置として不可欠なアフタ・バーナ付ターボファン・エンジンの国産化を可能とする技術基盤を確立しその技術レベルを実証する。
«詳細»
技術実証のために実証エンジンXF5-1が試作された。1995年から2000年にかけて5回の試作が行われ、計測形態1基を含む4基のエンジン並びに構造強度(部品)及び補機試験用供試体を試作した。
※後の先進技術実証機の製造では、搭載エンジンであるXF5-1も新規に2基製造された。実証エンジンの研究による4基と、先進技術実証機の搭載のため設計変更された2基で、合計6基のXF5-1が製造された。先進技術実証機に搭載された型式のものを、XF5-1(FT)とする文書も存在する。
技術の蓄積によりXF5-1で最大推力に達成するまでの時間と手間は、XF3-1の30%程度で済んだという。
コアエンジンの高温化や軽量化によりXF3-400と比べ全体的な性能の向上が果たされた。
・推力:34kN→49kN(リヒート時)
・重量:501kg→644kg
・推力重量比7→8
・全体圧力比:14→26
・タービン入口温度1400℃→1600℃
設計にあたっては以下の点が考慮された。
① 全体圧力比,燃焼器出口温度およびアフ
タ・バーナ出口温度の向上
②新素材の積極的な導入および薄肉化,一体
化などによる軽量化
③ 機体システムとの交信機能
④ポストストールマニューバ ( PSM ) を考慮
したディストーション耐性の確保および飛
行領域の設定
⑤航空機搭載を考慮した十分な安全性・信
頼性の確保
⑥運動ステルス機への搭載を念頭においた
IFPCへの対応
各構造の特徴を述べる。
ファン3段
・すべての作動領域で安定作動させるための
CFRPの適用で軽量化された可変入口案翼
( FIGV ) の装備
・ディストーション耐性と圧力損失の低減を
図った3次元翼形状
・2段および3段の動翼とディスクを一体にし
たブリスク構造を採用による軽量化
・2段および3段ブリスク一体化によるディス
ク間の締結構造を排除と軽量化
圧縮機6段
・先述と同様の理由によるFIGVの装備
・衝撃波による圧力損失の低減を図る翼形状
・1段-2段ディスクおよび4段-5段の一体部
品化による軽量化
・高温強度特性が良好な耐熱チタンのディス
クや翼への採用と軽量化
燃焼器
・3次元計算流体力学の適用による最適な空力
形状の決定
・2枚の板の間に冷却空気を流すトランスピレ
ーション冷却方式を採用した2重壁構造
・セラミックコーティングを適用した耐熱金
属材料の採用
※燃焼器の周上部にある孔に20個の噴射器が取り付けられる。圧縮機で
圧縮された空気はライナ側面の小さい多数の孔からライナ内部
(燃焼スペース)に取り入れられ空気の渦を作り、燃料が噴射・点火
される。これにより生じた燃焼ガスが高圧タービンを駆動させる。
高圧タービン
・三次元計算流体力学の適用などによって高
負荷化、高効率化を図る
・静翼および動翼は高温での引っ張り強度が
高く冷却空気削減効果も期待できる第2世
代単結晶ニッケル基合金CMSX-4を採用
・静翼および動翼は冷却効率の高めるため複
数の冷却効果を狙った複合翼を採用
※タービン自体は燃焼ガスの温度に耐えられないため、冷却技術を用いて熱からタービンを守る。冷却空気量が多くなると燃費や推力の悪化に繋がるため、冷却効率を上げたりタービン自体の耐熱性を高めるなど様々な工夫がされている。
・タービンディスクは高強度材料であるニ
ッケル基粉末冶金合金AF115を採用
・応力が高くなるディスク本体部への貫通穴
がないボルトレス構造を採用
・高圧タービンの回転で圧縮機を駆動
高速回転時に動翼にある小孔から空気が滲み出し
動翼を覆う事で熱から守る(フィルム冷却)
低圧タービン
・動翼と同じく複合翼を採用
・圧縮機の4段目からの空気で冷却
・低圧タービンの回転でファンを駆動
アフターバーナー
・良好な着火と軽量化を図れる火花点火方式
・圧力損失の低減を図りつつ、安定燃焼性と
燃焼効率が良好なフレームホルダ
※戦闘機がアフターバーナーを焚くとエンジンの後ろからタービンらしきものが映るが、その正体はフレームホルダある。排気速度をアフターバーナーの点火に適した速度に下げる役割がある。
・冷却性能と軽量性、強度を両立したライナ
・セラミック基複合材料(CMC)とチタンア
ルミナイド合金を適用し,耐熱性向上と軽
量化を図った、面積を可変可能な排気ノズル
※アフターバーナー作動時は加熱により排気体積が膨張(排気密度が低下)する。そのままだとエンジン後部の排気が膨張した分、コアエンジン部の空気が圧縮(=圧力の上昇)され作動に影響を及ぼしかねない。そのため排気面積の拡大で流速の変化や排気密度の低下といった変動を調節する。
制御部
・主な機能は下記画像の通り
・バックアップも含め完全な2重のFADEC
(XF3-400ではバックアップは油圧機械式)
・2回の故障でも飛行を可能とする冗長性
・MIL-STD-1553BでのFLCCとの連結による
IFPC機能(IFPCモード時では制御信号をパ
イロットのスロットル指令からFLCCからの
指令信号に切り替える)
・全飛行領域で適切にエンジンを制御するエ
ンジン制御機能
・故障箇所および故障内容を診断する故障診
断機能
・ 故障内容に応じた適切なエンジン制御レベ
ル( 7 段階 )の選択
主要制御と補機一覧
その他
制御・補機は次の①〜⑦よりなるが
① 電子制御系統
② 潤滑油系統
③ 燃料系統
④ アクチュエータ系統
⑤ 点火系統
⑥ 防氷系統
⑦ 機体表示用系統
これらをエンジンに装着しファン流の流路を形成するバイパスダクト(圧縮機〜低圧タービンまでのカバー部)は、化学的に除肉を行うケミカル・ミーリング加工を適用することによって軽量化を図っている。
バイパスダクト
エンジンの製造後には、エンジンを航空機に搭載するための安全性確認として耐久試験が行われた。アイドルからアフターバーナを使用した最大推力までの作動などを繰り返し行い、60時間相当の飛行時間に対する耐久性を確認した。
耐久試験を行うXF5-1
その他には米軍規格MIL-E-5007Dに準拠した予備飛行定格試験(PFRT:Preliminary Flight Rating Test)の各試験項目を完了し、XF5-1は飛行試験に供しうることが実証された。空力推進研究施設内のエンジン高空性能試験装置(ATF)を用いた高空性能試験も実施された。
前述の通りXF5-1はPSMを考慮したエンジンのため、耐ディストーション性が求められる。関連研究である高運動飛行制御システムの研究では、耐ディストーション耐性について試験を行った。エンジン入口面にディストーションプレートを配置して、エンジン前面での気流の乱れを模擬しエンジンが健全に作動するのを確認した。
耐ディストーション性に関する試験
«まとめ»
XF5-1エンジンは国産として初の本格的アフタ・バーナ付ターボファン・エンジンであり技術基盤の確立および技術レベルの向上・実証への大きな貢献を果たした。
49kN級再熱ファンエンジンとしては世界最軽量級を実現し、XF3-30に比べ耐ディストーション性能が3倍と確実な進歩を示している。
前述の高運動飛行制御システムの研究や先進技術実証機にも密接な関係をもち、試験に用いられるなど高運動ステルス技術の発展にも繋がった。
エンジン・ファミリー化技術によってXF5-1 エンジンの技術がP-1哨戒機に搭載されているF7-10 エンジンに適用されるなど技術波及効果の大きな研究であった。
[先進材料のエンジン適用化技術に関する研究]

2006〜2009年
«概要»
先進材料を航空機用エンジンに関する研究部品に適用するために必要な構造および評価方法に関する研究
[分散型制御方式の研究]
2006〜2011年
«概要»
エンジン制御を分散化して冗長性等を向上させる研究
[エンジン圧縮系要素空力形状の研究]

2008〜2010年
«概要»
将来の航空機用エンジン圧縮系空力要素について数値解析を利用した空力性能向上に関する研究






































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