«無人機関連(2)»

02

    1.日本の無人機研究史(3)
 ・滞空型無人機要素技術の研究
 ・将来滞空型無人機システムの研究
 ・無人機用レーダの研究
 ・航空機搭載型小型赤外線センサシステムインテグ
  レーションの研究
 ・将来無人装備に関する研究開発ビジョン
 ・遠隔操作型支援機技術の研究
 2.その他研究




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«日本の無人機研究史(3)»

無人機研究史(2)で述べたように、日本は中・小型無人機の研究を推進したが、一方では新たな無人機の研究も開始した。


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将来無人装備に関する研究開発ビジョンより

本稿では現在までの日本の無人機研究について記述する。具体的には、上画像のような見通し線外で活動する滞空型無人機と戦闘支援用無人機が対象である。



«前史» 

時は1990年代、冷戦の終結で世界規模の戦争の発生は遠のいた。しかし、抑圧されていた地域対立が顕在化するなど国際情勢は新たな局面を迎えていた。


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弾道ミサイルの探知を目的とした将来センサシステム

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滞空型無人機のイメージ

日本周辺-特に北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルの開発を推進し、1997年には弾道ミサイルの発射を強行した。
北朝鮮の脅威は、冷戦後の日本の安全保障に大きな影響を与えている。上画像のような将来センサシステムの研究も1990年代から開始された。

このような安全保障環境の中で、防衛省は1994年から2001年にかけて高高度無人機要素技術の研究を開始した。
この高高度無人機は、高高度を長時間滞空し、継続的かつ機動的に情報収集、監視、偵察等を行う。





[滞空型無人機要素技術の研究]

2003年から2008年にかけて滞空型無人機要素技術の研究が行われた。風洞模型や実験機を用いて飛行制御技術、衝突回避技術等を実証した。

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無人機運用構想
事前評価(2002年)と事後評価(2009年)

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実験機と研究年表

本研究の背景には弾道ミサイルの脅威の増大や戦域の広域化による、常続的な監視範囲の拡大が求められたことが挙げられる。
24億円の総経費で研究試作と試験を行った。

本研究では無人機のシステム構想設計を行うと共に、以下の3点の解明を目指した。

①構造変形や振動を考慮して細長い主翼を制御し飛行する構造連成飛行制御技術

② 細長い主翼を有する機体の自動離着陸技術

③他航空機と航空路を共有する上で必要な状況認知・衝突回避技術


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風洞試験の様子

構造連成飛行制御技術とは、突風などによる主翼の荷重をセンサで感知し、荷重を低減するように舵面を制御する技術である。
研究試作(その1)で風洞模型と試験機器が試作された。

空弾性飛行試験によって構造連成飛行制御技術を解明した。突風荷重を低減し、機体の重量軽減を図ることが可能となった。

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実験機

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レーダシステムを取り付けた実験機

自動離着陸機能はディファレンシャルGPSを用いる。
状況認知・衝突回避技術はミリ波レーダシステムによって実現される。このレーダシステムは実験機の主翼下に取り付けられている。


研究試作(その2)では自動離着陸と自動衝突回避機能について設計と試作を行った。
研究試作(その3)では状況認知機能の設計及び試作を実施した。

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タキシング中の実験機

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自動衝突回避の実証

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他国の滞空型無人機との技術比較

研究試作した装置は既存のモーターグライダーに搭載・試験された。試験時はパイロットが搭乗し、自律飛行時は手放しの状態で飛行した。試験場所は北海道広尾郡大樹町の多目的航空公園である。

飛行試験は計40フライトが行われ、予定していた全てのケースを終了した。

この試験によって低速自動離着陸技術と状況認知・衝突回避技術を解明した。特に後者は相手機のトランスポンダ搭載の可否にかかわらず衝突を回避できる。
なお、衝突回避対象にトランスポンダ非搭載機を追加したことから総経費と研究終了期間が増大した。



当研究は実施までにいくつかの変遷を経ているため、ここで述べる。

滞空型無人機の研究は、1998年から全機空力形状最適化、プロペラ構造最適化を検討するための高高度無人機の研究試作が実施された。


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旧計画と新計画

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2002年に構想されていた滞空型無人機(本計画)

2003年からは高高度無人機システムの研究として旧計画線表のような内容の研究を実施する予定であった。
しかし、事前の事業評価(2002年)の段階で、計画は新計画線表のような内容に変更された。この時に事業名も変更され、本件の滞空型無人機要素技術の研究が行われた。

なお、本研究の事前評価の時点で、上画像のような滞空型無人機が構想されていた。


本研究の成果は後の将来滞空型無人機システムの研究並びに無人機用レーダーの研究に反映された。





[将来滞空型無人機システムの研究]

将来滞空型無人機のシステム全体の構想設計を行った。また、以下の3点を性能確認試験で確認した。期間は2006年から2009年である。

① 機体運動に連動したデータリンクによる、機体遮蔽の最小化

② データリンクの多元化

③ 長距離伝送におけるデータリンクの信頼性の向上

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将来滞空型無人機システム(2012年の画像)

上画像のように、滞空型無人機の構想では弾道・巡航ミサイルの探知、脅威艦艇の発見、通信中継が任務として挙げられている。

本研究ではデータリンク技術について重点的に研究が実施され、衛星経由データリンクと直接データリンクとの切替等の飛行試験が行われた。

2006年から2008年にかけて研究試作を、2008年から2009年には性能確認試験を行った。

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改編前の技術研究本部の組織図

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改編後の技術研究本部の組織図

これまでの滞空型無人機の研究は技術研究本部第3研究所が実施した。しかし、2006年の組織改編によって新設された先進技術推進センターが本研究を実施した。
同センターの母体は第1研究所第3部である。

この次の無人機用レーダーの研究も先進技術推進センターが実施した。



[無人機用レーダの研究]
早期警戒滞空型レーダ技術の研究 という研究名称の場合もある

2007年から2010年にかけて、無人機用レーダの研究を実施した。同レーダは無人機への搭載を考慮し、小型軽量・省電力を特徴としている。

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03
運用構想と研究年表

開発目的として、ISR任務を行う滞空型無人機の実現には無人機への搭載を考慮したレーダシステムが必要になったことが挙げられる。

2007年から2009年にかけて研究試作を実施し、2009年から2010年は所内試験を行った。総経費は15億円である。

本研究での技術課題は以下の4点である。

①薄型アクティブアンテナの実現
②艦船、航空機、巡航ミサイルの所要距離での探知
③分散開口合成技術
④クラッタ抑制技術


研究試作ではレーダシステムが試作された。
以下には本件のレーダシステムについて述べる。


❶ハードウェア技術
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 従来のアンテナの冷却

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 本研究の方式

従来の送受信機能をもつアクティブアンテナは液冷装置により冷却され、熱移送装置によって排熱していた。
しかし、アクティブアンテナの空冷化は研究されていなかった。

そのため小型・軽量・低消費電力を特長とする、空冷アクティブアンテナについて研究する必要があった。

以下に試作されたレーダシステムの概要を述べる。


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 試作品の概観

空冷化した既存の送受信モジュールを8枚用いた、1台のアンテナを構成した。これによって128素子の素子アンテナを合成して使用できるアンテナを製作した。


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 外観説明


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 内部構造

・縦複合ユニット(送受信モジュール)
アンテナ1個に8枚実装されており、縦複合モジュール、パルス電源モジュール及び冷却フィンから成る。
縦複合モジュールは16個の送受信モジュール、ドライバアンプ及び16個のアンテナ素子で構成されている。

・制御ユニット
アンテナ1個分(128素子)の移相量の算出、送受信ゲート信号を縦複合ユニットに出力し、アンテナの動作を制御する。
励振受信器からのアンテナ制御コマンドの通信確認、送信ゲートによる送信デューティ確認、縦複合ユニットからの位相データをループバックして位相データの確認等を実施し、動作監視を行う。

・電源ユニット
励振受信器から送られてくるDC270Vを、各ユニットに必要なDC電圧に変換して各ユニットに供給する。

・アンテナマザーボート
制御ユニットから出力される位相データを各縦複合ユニットに制御ユニットから出力される位相データを各縦複合ユニットに分配する。
また、電源ユニット及び励振受信器のアンテナ電源からのDC電源を各縦複合ユニットに分配する。

・横給電回路
横給電回路では、縦複合ユニット8枚からのRF信号を合成、励振受信器からのRF信号を縦複合ユニット8枚に分配する。


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 空冷化された送受信モジュール

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 空冷方法

空冷による送受信モジュールの冷却が課題とされた。そこで送受信モジュールの放熱面を従来の約5倍とし冷却効率の改善を図った。
また、送受信モジュール2枚を裏面で向かい合わせ、2枚同時に冷却する。流路を確保し、軽量化、圧力損失の抑制を図っている。

冷却は、外気温度に応じた風量を設定できる送風機やファンを直付けして行う。



❷ソフトウェア技術
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 低空を飛行する小型目標の探知

巡航ミサイルのような小型目標はRCSが小さい。そのため探知にはクラッタ抑制が重要になる。固定レーダではクラッタの主周波数にフィルタリングを行い、目標を探知する(MTI)。

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 従来のクラッタ抑制技術と課題

しかし、航空機搭載レーダはレーダ自身が移動することでクラッタのスペクトルが拡大(ドップラー効果)し、MTIによる目標の探知は困難となる。

クラッタの周波数は機体速度に比例し、クラッタ発生源の方位によって異なる。つまり、ドップラ周波数範囲は方位に対応して拡大する。

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 STAPの概念

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 STAPの目的

そこで時間軸に加え、方位毎の受信データにウェイトをかけてクラッタを抑圧するSTAPが考案された。
課題としてはMTIと比較して処理に係る計算量が膨大になる点がある。
概念等は上画像を参照すること。


以下は試験について述べる。

アンテナの性能試験では試作品を用いて冷却性能と冷却時のアンテナ性能についてのデータを取得した。

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冷却時の様子

40℃の空気を0.1175kg/sの流量で送風したときの送受信モジュールの熱解析を行った。結果として最大温度が使用可能温度(既存送受信モジュールの使用可能最大温度:65℃)以下の60.5℃となり、空冷可能な事が確認された。

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得られたアンテナ性能(1台)

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冷却装置のサイズ比較

試験の結果、空冷でも液冷に匹敵するアンテナ性能を確認した。同じアンテナ数で比較した場合、冷却装置の重量、電源容量、容積が液冷と比べて6〜8割に削減可能な事が判明した。

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 想定試験環境

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 電波暗室での試験

屋内試験では電波暗室を用いて、実環境を模擬した試験を行った。方位毎にドップラ成分の異なるクラッタ電波を放射するアンテナを設置し、飛行状態を模擬した。

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 探知結果

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 条件による探知率の差異

屋内試験ではSTAPのリアルタイム処理を実現し、MTIより優れたクラッタ抑圧と探知確率を実証した。MTIとSTAPだけでなく、上画像のように様々な条件で試験を行った。

屋内試験の後に野外試験も行われた。

資料は殆ど無いものの、分散開口合成技術も研究された。

08
目標の達成状況

27
遠距離探知センサシステムの研究

無人機用レーダの研究は上画像の目標を達成し、2010年に試験を終了した。

本件でのSTAPと分散開口合成技術は、遠距離探知センサシステムの研究に反映された。
当該研究はレーダとIRSTのセンサ情報を融合させ、ステルス目標や弾道ミサイルをより遠距離探知する研究である。


本研究もいくつかの変遷を経ており、ここで記述する。

08
将来無人機構成要素技術の研究

無人機用レーダの研究は2007年から開始されたが、2006年の事前の事業評価では将来無人機構成要素の研究という名称であった。

この研究では以下が研究対象として挙げられていた。

・無人機搭載用レーダ
・多段過給器付きのエンジンとプロペラを組み合わせ
 た推進装置
・協調飛行の飛行管理アルゴリズム
・ステルス高機動技術

総経費は40億円であり、上からもわかるように幅広い研究が予定されていた。
特筆するべき点としては滞空型無人機の他に、防空用無人機が研究対象になっていた。防空用途の無人機について明言されたのはこの研究が初めてだと思われる。

結局はこの研究は実施されず、レーダ技術のみを抽出する形で無人機用レーダの研究が行われた。






[航空機搭載型小型赤外線センサシステム
インテグレーションの研究]

2013年から2019年にかけて航空機搭載型小型赤外線センサシステムインテグレーションの研究(以下、IR OPV)が行われた。
赤外線センサや無人飛行用の装置を搭載したOPVを試作し、飛行試験を行った。これまでに研究してきた滞空型無人機技術の統合を図った。

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システム全体の概要

本研究の背景にはBMD用の滞空型無人機システムの実現に向けて、無人機や地上システムを含めた全体システム統合の実施が求められたのが挙げられる。
事前研究による無人機技術の蓄積で、システム統合に着手可能となった。

総経費は54億円であり、本研究の主契約者はSUBARU(旧富士重工)である。

本研究で実証する無人機システムの特徴的な技術課題は以下の通りである。

①継続監視技術
②自律飛行機能
③早期探知技術


以下に試作された無人機システムを述べる。

❶OPV
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 機体各部

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 OPVの諸元

機体の外観及び諸元は上画像の通りである。有人操縦と無人操縦が選択可能なOPV (Optionally Piloted Vehicle)が特徴である。

機体背面には赤外線センサを搭載し、データリンクを通じて探知情報を地上システムに伝送できる。データの伝送はデータリンクポッドで行う。

自動離着陸機能や他の航空機との自動衝突回避機能も備える。

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 継続監視技術

機体の飛行制御の特徴として自律運航が挙げられる。これは気象情報等の情報に基づき最適な飛行経路を自動生成するものである。
生成された飛行経路に基づき、目標の探知を行う。

❷地上システム
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 全体システムの概要

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 構想段階での地上システム

上の画像の通り、データリンクはダイレクトリンクと衛星リンクの2系統を有する。
地上システムはOPV及びOPVのセンサを管制できる。

なお、上画像2枚目には地上システムの構想が記述されているが、後述する滞空型無人機システムの研究の頃のものである。したがって本研究の地上システムが画像2枚目のものと同様であるかは不明である。


以下には研究試作と試験の流れを述べる。

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納入された飛行試験機

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システム設計

2013年〜2015年にかけて研究試作(その1)が実施された。IR  OPVの細部設計を実施した。

2014年〜2017年にかけては研究試作(その2)で、システムインテグレーションの有効性を確認するフィジカルシミュレーション試験が行われた。
この試験では継続監視技術や赤外線センサ(模擬)を用いた早期探知技術を検証した。

2015年〜2018年には研究試作(その3)として維持設計と誘導制御部、赤外線センサ制御部、地上システム、整備機材の試作を行った。

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初飛行を行うOPV

2018年10月には初飛行を行い、SUBARU社内で機能・性能・安全性を確認した。防衛装備庁による審査を経て2019年3月28日に同庁に試作品が納入された。

2019年10月から11月にかけて継続監視技術などの確認のため飛行試験を実施した。試験場所は北海道大樹町の多目的航空公園及び同周辺空域である。


本研究も実施までに変遷を経ているためここで記述する。

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機体構想及び研究年表

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試験構想

本研究は2012年の概算要求時点では滞空型無人機システムの研究という研究名称であった。2013年度予算では長時間の滞空性能が必要と認められず、研究内容の見直しを行った。そこで研究名称も航空機搭載型小型赤外線センサシステムインテグレーションの研究に変更された。

総経費は133億円を予定していた。

本研究との最大の相違点は、既存機を滞空に適した主翼に換装・改修する点である。自律飛行などその他の多くは本研究に準ずる。


[将来無人装備に関する研究開発ビジョン]

2016年8月には日本の無人装備技術の現状をまとめ研究ロードマップを示した、将来無人装備に関する研究開発ビジョンが発表された。

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無人機の分類

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技術獲得までの流れ

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無人機技術獲得に向けたロードマップ

全ては紹介しきれないため、詳細は原文を参照されたい。

要約すると、世界では第3・4分類無人機の研究や実証機の開発が盛んなことを述べ、日本はこれら無人機は要素レベルでの研究に留まっていることが示された。
そこで日本としては第3・4分類無人機の技術実証に重点を置き、そのための研究ロードマップを策定した。

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2017年度予算

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2018年度予算

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2018年 防衛装備庁の取り組み

また当ビジョンの発表に基づき、2017年度予算では遠距離見通し外運用型無人機のデジタルモックアップの作成等が行われた。
2017年6月には防衛装備庁が遠距離見通し外運用型無人機に関する構想検討調査について川崎重工と契約を結んだ。

2018年度予算では運用者の意見を反映させ、運用方法等や各種コストを修正した。詳細な作業については画像を参考にされたい。

画像にもあるように、遠距離見通し外運用型無人機のデジタルモックアップと概算モデルは2019年以降の研究試作事業に活用される。







[遠隔操作型支援機技術の研究]

2019年から2023年にかけては遠隔操作型支援機技術の研究の実施が予定されている。無人機の高運動飛行制御や遠隔操作技術等を実証する。

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本研究の概要と予定年表

02
無人技術の実証の流れ

研究の背景としては将来無人装備に関する研究開発ビジョン(以下はビジョン)に基づき、支援機の構成要素技術の早期確立を目指したことが挙げられる。
ビジョンにおいて、第3分類無人技術実証は支援機(第4分類)の実現での必須基盤と記述している。

本研究の研究試作総経費は30億円である。なお、試験費は別途に形状する。

本研究では以下技術の実証を目指す。

①高運動飛行制御技術
  -無人機特有かつ有人機と同等以上の高機動性
②協調飛行技術
  -編隊飛行等、有人機/支援機の連携が可能な飛行制御
③遠隔操作技術
  -②に最適な、遠隔操作用のヒューマン・マシン・イ
 ンターフェースの実証 有人機からの遠隔操作を適
 切なワークロードで実現

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2020年度予算

本研究は2019年度予算では8億円、2020年度予算では1億円の経費が計上されている。特に2020年度予算では次期戦闘機の関連経費の一部として計上された。





«その他研究»

この項目では情報が極めて少ない、もしくは関連性が不明な研究を紹介する。2001年以降の新規研究開発で10億円以上のものは政策評価の対象となるが、以下の研究は政策評価では公表されず必然的に経費は10億円未満である。

RPVサブシステムの研究
22
1985〜1988年

ジェット推進式滞空型無人機の研究
13
1998〜2002年

滞空型無人機システムの研究
08
2003〜2004年

高高度用エンジンの研究
49
2004〜2005年

将来無人機システムの研究
07
2005〜2007年 


運用環境拡大無人機システムに関する研究
14
2008〜2009年

支援無人機の研究
14
2010〜2011年

無人機システム化技術の研究
05
2012〜(2014)年

群協調飛行制御技術の研究
13
2010〜(2021)年





また、無人機の群制御技術も過去の防衛技術シンポジウムで発表されており、要約して記述する。


防衛技術シンポジウム2009
複数航空機自律協調技術

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試験機

40
飛行試験の結果

29
多数機での机上試験

防衛技術シンポジウム2009では、航空機群協調制御に関する三菱重工の社内研究が発表された。社内研究は2001年から取組まれている。

2機のラジコン飛行機を用いた自動編隊飛行試験や、より多数機でフォーメーションを維持したままの障害物回避飛行等が発表された。

詳細は原資料を確認されたい。





防衛技術シンポジウム2010
航空機の群制御の研究

31
群制御とリーダー機の設定

11
植物ホルモンの概念を利用したフォロワー機の選定

防衛技術シンポジウム2014では、植物ホルモンの概念を応用した編隊形成アルゴリズムの研究が発表された。

速度制限による群形状の形成と、リーダ機の損失に対応したリーダー機の選定が特徴である。

シミュレーション試験を含めた詳細は原資料を参照




防衛技術シンポジウム2011
群制御の手法を応用した無人機の編隊飛行

24
無人機の群制御

25
設定間隔によるUAV間制御

33
群の進路維持

防衛技術シンポジウム2011では複数UAVの群制御を応用した、無人機の編隊飛行について発表された。
無人機間は設定間隔で調整し、オペレーターの与える進路を設定半径に基づき維持する。

この制御則を用いたシミュレーション試験結果も発表された。詳細は原資料を参照



防衛技術シンポジウム2014
無人機の最適経路生成に関する機能拡張

08
研究内容と試験

詳細は画像の通りである。










«コラム:興味深い?中長期技術見積り»
読者の皆様は、防衛装備庁(技術研究本部)が公表している中長期技術見積りはご存知だろうか。

この資料は防衛装備庁の中長期(20年程度)な科学技術の取組の方向性を示す。それにより、技術的優越の確保と装備品開発の推進に資するものである。

初版は2007年に、2016年には後の技術進展を考慮した改訂版が公表されている。

資料には各種防衛技術の進展が見積もられているが、その中には航空機技術の見通しもある。
そこで、本稿のメインテーマである戦闘機と無人航空機の技術見積もりについて初版改訂版を比較し、その変化を見ていこう。

まずは戦闘機技術から比較する。

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戦闘機 2007年版

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戦闘機 2016年版

最初に注目したいのは将来の戦闘機の位置づけである。

初版では第5世代の将来戦闘機
改訂版では数的に優勢な周辺国の第5世代戦闘機及び戦闘型無人機と対峙し航空優勢を確保できる戦闘機

とその表現に違いが存在する。

理由としては初版改訂版の間に将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン(2010)が公表されたのが挙げられる。同ビジョンではF-2後継機について改訂版と同じ見解が示されている。

以下は初版改訂版の技術課題達成見込み時期を()で示す。詳細は上画像を参照されたい。


初版
実機実証(2022年)
推力偏向(2017年)
統合化アビオニクス(2012年)

改訂版
実機実証(2031年)
エンジン統合(2031年)
ウェポン射出(2021年)
軽量機体構造(2021年)
推力偏向(2021年)
レーダLPI技術(2021〜2026年)
データリンク(2021年)
ステルスに資する機体構造/飛行制御(2021〜2026年)


初版の技術動向は現状を鑑みると大きな差異が生じている。ただし、統合化アビオニクスは[将来アビオニクスの研究]が2011年に完了しておりその点では妥当である。

改訂版は次期戦闘機の要素研究の進捗に概ね対応している。要素研究の大半が開始された後に、改訂版が公表されたのも一因であろう。


次は無人航空機技術を見ていこう。

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無人航空機 2007年版

29
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無人機航空機 2016年版

初版は滞空型無人機が2012年頃、第4分類に該当する支援無人機が2017年頃に技術課題を達成見通しとなっている。

改訂版は概ね無人装備ビジョンの動向と対応している。これは改訂版とビジョンの公表が、ほぼ同時期に行われたのに起因するであろう。

総評としては初版改訂版の9年間で、日本の戦闘機及び無人航空機の研究開発状況が大きく変わったと言えるだろう。