«エンジン関連(2)»

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  1. エンジン排気赤外線低減化技術に関する研究
  2. 小型高出力補機の研究
  3. 次世代エンジン主要構成要素の研究
  4. 戦闘機用エンジン要素の研究
  5. 戦闘機用エンジンシステムに関する研究
  6. 戦闘機用エンジンの適用可能性向上に関する研究new!




[エンジン排気赤外線低減化技術に関する研究]

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2011〜2012年

«概要»
 航空機用エンジン排気の赤外線放射強度の低減技術に関する研究




[小型高出力補機の研究]

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2012〜2013年

«概要»
 将来の戦闘機に求められる小型高出力のエンジン補機の研究



[次世代エンジン主要構成要素の研究]

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2010〜2015年

«概要»
 次世代の航空機用エンジンについて、高推力重量比化に必要な高温、高圧状態で作動する主要構成要素である高温化燃焼器、高温化高圧タービン及び軽量化圧縮機に関する技術について地上実証により獲得する。

«背景・目的»
 将来戦闘機のコンセプトや研究スケジュールをまとめたものとして「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」が発表された。そこでは将来戦闘機が搭載を想定するエンジンのコンセプトとして「次世代ハイパワースリムエンジン」が提唱された。

 将来戦闘機のステルス性・高速性能及び高運動性を実現するため、エンジンのスリム化によるステルス化と、日本の優れた耐熱素材技術による大推力化がコンセプトの骨子である。

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エンジンのスリム化によるステルス性の向上
機体の薄型化やウェポン内装化に
よるステルス性の向上が見込める

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機体側面から
エンジンのスリム化は燃料・ウェポン内装容積の
拡大に資し、内装搭載量や燃料の増加に繋がる

このエンジンの大推力化とスリム化の両立には以下のような技術が必要である。

・ファンや圧縮機の改善による高効率な呼気
※スリム化=少直径化はファンの断面積の減少を招き呼気量の減少というデメリットがあり、それを補完する必要がある
・コアエンジンの耐熱性の向上による燃焼ガ
 スの高温化
・エンジンの軽量化による高推力重量比

 将来戦闘機開発時の選択肢として資するためにも、上記特長を有する戦闘機用エンジン技術を蓄積する必要があった。

 そこで、要素技術の研究からプロトタイプエンジンの試作までを含めた、一連の研究が計画された。

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将来戦闘機に続く一連の研究の流れ

 本研究の「次世代エンジン主要構成要素」では第1段階目として、エンジンコア部である高圧系要素の高温化について研究を行う必要があった。実現難易度が高い高圧系要素技術を確立することで、コアエンジン技術に対するリスク低減を図るものである。

«詳細»
 本研究ではエンジンの大推力化を実現するため、コアエンジンを構成する 圧縮機・燃焼器・高圧タービン をそれぞれ構成要素として研究を行った。総予算は66.4億円であり、IHIを主契約者として2010年から2015年まで構想設計・研究試作(2010〜2014年)と各種試験(2013〜2015年)が行われた。

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試作品全体の概要

 圧縮機に関しては3次元翼設計などによる圧縮効率の向上を行った。また、更なる小型軽量化を図るため全段ブリスク構造を適用し、XF5-1の圧縮機と比較して10%の軸長短縮を図った。

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試作された圧縮機
6段のファンより構成されている。

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圧縮用タービンの正面図

 高温に晒される燃焼器及び高圧タービンは、タービン入口温度(Turbine Inletf Temperature:以下「TIT」)1800℃を研究目標としていた。XF5-1のTiTは1600℃であり、それより200℃高温化されている。

 高圧タービン部はタービンシュラウドや動翼、静翼及びディスク材に構成される。TIT1800℃を達成するため以下のような技術が用いられている。

①動翼及び静翼
・第5世代Ni基単結晶合金
・フィルム冷却用の高性能フィルム孔
・凹凸型の内部構造によるメッシュ冷却
(静翼)
・折返し型の内部構造によるメッシュ冷却
   (動翼)

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動翼及び静翼の外観と冷却構造概念図
内部は冷却空気を通す複雑な空洞構造を持ち、表面の
小孔から滲み出し膜のように覆う(フィルム冷却)

 疲労試験用と冷却性能試験用の2種類が試作され、各種試験を行った。冷却性能試験では燃焼ガス温度、冷却空気温度、翼表面温度などの条件を変えて計測することにより、高圧タービン翼の冷却効率を確認した。

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熱疲労試験時の様子

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冷却性能試験時の様子

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赤外線カメラによる試験時の様子
周囲温度に比べタービンは
低温であり、冷却効果が確認できる

②タービンディスク
・溶製鍛造Ni-Co基超合金(TMW-24)
・日本エアロフォージ㈱の5万トンプレス基を
 用いた鍛造
 
 高圧タービン・ディスクは材料に溶融鍛造材を採用する。通常はタービン・ディスクは粉末冶金材を用いるが、国内ではこの製造設備が無く、調達を海外に依存せざるを得ない。しかし、近年において粉末冶金材に劣らない強度を有する溶融鍛造材が開発された。

 また、大型のディスクを製造するために必要な大型鍛造プレス機が経済産業省の補助事業として国内で整備され、世界最大級のディスクが国内で製造可能となった。

 このような背景や、安定した調達とコスト低減の観点から高圧タービン・ディスクとして溶融鍛造材を用いることとなった。
※神戸製鋼が阪神淡路大震災の被災で撤退後、粉末冶金材を用いた大型部品の国内製造が不可能になったとされている。

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TMW-24と各材料との比較(文献値)
最新の粉末冶金材よりは劣るものの、
既存の溶製鍛造材より優れた耐熱性を有する

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日本エアロフォージ㈱の5万トン油圧鍛造プレス

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試作されたタービンディスクの製造過程

 実際にTMW-24を用いたタービンディスクの製造が行われた。また、タービンディスクが文献値通りの性能を持つか確認するため、製造したタービンディスクから試験片を入手し材料試験を行った。

 試験の結果、TMW-24は既存のタービンディスクより優れた性能を有し、TMW-2,24と同等の性能を持つことが確認された。実条件を模擬した損傷を与える試験などの多岐にわたる試験を実施し、良好な結果を得た。
※空力性能、燃焼性能及び部品強度に関してはディスクだけでなく各試作品に実施している。

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材料試験の概要

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得られた結果

③高圧タービンシュラウド
・CMC(炭化ケイ素繊維)の適用
・耐環境性コーティングの適用

 高圧タービンの外枠を覆うタービンシュラウドはCMCを使用している。シュラウドは高温に晒さられるが回転しない部品であるため、割れやすいが高温に強く軽量なCMCの適用に適している。

 所内試験では実機を模した熱負荷及びサイクル負荷を与え、機能損失に至る損傷が無いことを確認した。

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宇部興産製のCMCを用いたタービンシュラウドの試験
表面に耐環境性コーティングが施されている

 空力性能の確認用に、高圧タービン空力要素として高圧タービン全体のスケールモデルも試作されている。タービンシュラウドや動翼、静翼及びにタービンディスクから構成される。

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高圧タービン空力要素
黄色の構造材は静翼や回転部を
エンジン構造の一部として保持する

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高圧タービン空力要素の実物

 燃焼器は二重壁複合冷却構造による新冷却構造を採用し、高圧タービンと共にTIT1800℃の実現を目指した。所内試験では燃焼器ライナの冷却効率、温度分布、燃焼効率などの性能を確認した。

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試作された燃焼器
26個の燃料噴射部が確認できる

«まとめ»
 本研究の実施により、ハイパワースリムエンジンを可能とする、高温・高圧化されたコアエンジン要素に関する技術資料を得た。本成果は次の段階以降にも活かされる事となる。



[戦闘機用エンジン要素の研究]

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2013〜2017年

«概要»
 機体規模が大型化傾向にある将来の戦闘機において、ステルス性及び高高度/高速戦闘能力を確保するために必要となるスリム化と大出力化を両立させた戦闘機用エンジンシステムの要素に関する研究

«背景・目的»
 ハイパワースリムエンジンを実現するために、第一段階の「次世代エンジン主要構成要素」ではコアエンジンの要素研究を実施した。

 本研究では第二段階として、「主要構成要素」の成果を反映させたコアエンジン全体の試作及び、低圧系である高圧力比ファンと高負荷低圧タービンに関する研究を行う必要があった。

«詳細»
 本研究はIHIを主契約者として187.6億円の予算のもと、コアエンジン全体の試作及び高圧力比ファンと高負荷低圧タービンの研究試作を行った。

 高圧力比ファンに関しては従来よりも入口側の通路幅を大きくし、出口との比を大きくとることで遠心圧縮効果を利用し、圧力比を上げつつ吸い込む空気流量を増やす大流量化を図った。また、圧縮機と同様にファンについても全段ブリスク化により軽量化を図っている。

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試作された高圧力比ファン

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国際航空宇宙展2018東京(JA2018)
で展示された試験用エンジンファン

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ファン1段動翼
入口側の通路幅が拡大されている

 コアエンジンは前述の通り、「次世代エンジン主要構成要素の研究」の成果が反映されている。これにより、TIT1800℃を目指した。

 所内試験では2017年6月28日に、IHIから防衛装備庁へと試作されたコアエンジンが納入された。納入と同時に、後述の「戦闘機用エンジンシステムの研究」で試作が進められていたプロトタイプエンジンの型式がXF9-1と発表され、同時に目標性能も公表された。

 納入後は2017年7月より札幌試験場にて性能確認試験を実施し、高圧タービン入口温度 1800℃における作動健全性確認を完了し、定常性能、着火特性等に係る試験データを取得した。コアエンジンがTIT1800℃を達成した事を確認した。主要構成要素のマッチングや部分的な軽量化も確認された。

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納入されたコアエンジン
正面の開口部が圧縮機であり、
後方へと燃焼器-高圧タービンと続く

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ATFのチャンバーに搭載されたコアエンジン

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TIT1800℃確認試験

 高負荷低圧タービンに関しては、2軸のタービンが逆方向に回転する反転タービンの採用により、タービン1段で高効率化と高負荷化を実現した。性能確認試験ではスケールモデル(53%)を用いた。

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試作された高負荷低圧タービン

 この他にも、アフターバーナ、排気ノズル、燃料ポンプなど補機に関する技術的な基礎データを蓄積した。

 特にアフターバーナについてはアフターバーナの入口に火炎を保持するための保炎器の構造を簡略化し、圧力損失の低減を図っている。XF5-1の保炎器のような周方向と径方向の構造材で構成される保炎器では、空気の流れが乱されて圧力損失の原因となる。そこで周方向の構造材を無くし、半径方向のみの構造材で保炎をすることで低圧力損失化を狙ったアフターバーナの実現を目指した。

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保炎器の形状比較
半径方向のみの構造の実現を目指す

«まとめ»
 将来戦闘機に搭載されるハイパワースリムエンジン実現に向けての第2段階として、ファンや低圧タービンなどの低圧系と主要構成要素を反映させたコアエンジンの試作を行った。所内試験で各試作品が所要の性能を満足する事も確認した。



new!
[戦闘機用エンジンシステムに関する研究]

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2015〜2019年

«概要»
将来の戦闘機に搭載可能な、高推力かつ軽量な次世代エンジンシステムを試作し、システムの成立性を地上実証する

«背景・目的»
次世代エンジン主要構成要素・戦闘機用エンジン要素ではエンジンの低圧系と高圧系についての研究を行った。

※戦闘機に搭載可能なプロトタイプエンジンを試作→将来戦闘機用エンジンの開発が可能に という関係性である。本研究によるプロトタイプエンジンが将来戦闘機用エンジンとして搭載される訳では無い。

ハイパワースリムエンジンの実現のために、第3段階として実際の戦闘機に搭載可能な大推力プロトタイプエンジンを試作する。試作によって実機の搭載に要求される

①大推力エンジン要素技術の統合
②エンジンの低観測化技術
③エンジン機体適合・運用性技術 

などを確立する。



代替手段として要求推力性能を満たす可能性のある以下の外国開発のエンジンも同時に調査検討を行った。

・F119(米国・F-22に搭載)
・F135(米国・F-35に搭載)
・EJ200(欧州・タイフーンに搭載)
・M88(仏国・ラファールに搭載)

調査の結果、EJ200とM88は推力性能を満たない。
F119、F135は推力の要求性能に合致するが、技術移転の可否、機体との適合性の良否等を含めた代替可能性を判断できないとされた。

このような背景からも、国内開発のエンジンシステムが、将来戦闘機の搭載エンジンの候補となるために本研究を実施する必要があった。
※あくまで本研究は国内開発エンジンが、搭載エンジンの候補の1つに資する目的である。即ち将来戦闘機の実際の仕様や開発プランによって搭載エンジンの仕様も変動しうる。選定された開発プランで明記されるまでは必ず国内開発エンジンが搭載されると「断言は」できない。

«詳細»
本研究はプロトタイプエンジンの試作を行うために、IHIを主契約者として174.4億円の予算のもと研究試作と所内試験を行っている。

2015〜2017年にプロトタイプエンジンの研究を開始した。
先述の「戦闘機用エンジン要素」でコアエンジンが納入された際にプロトタイプエンジンの型式がXF9-1と発表された。
※戦闘機用エンジン要素で納入されたコアエンジンとXF9-1のコアエンジンは別物である。エンジン要素で試作されたコアエンジンの成果が、XF9-1のコアエンジンに反映されている。



性能設計・全体図の作成からなる基本設計の完了後、詳細設計と製造試作に移行した。2018年6月29日にはIHIから防衛装備庁へXF9-1が納入された。



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XF9-1の内部構造
ファンの下面にはスタータ・ジェネレータが設置

以下にXF9-1の概要や特長を述べる。
なお本研究は、次世代エンジン主要構成要素・戦闘機用エンジン要素で研究された大推力技術を統合する目的もあり、特長はそれらに準ずる。


①エンジン全体


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ハイパワー化とスリム化の両立

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XF9-1と他国開発エンジンとの比較


XF9-1のコンセプトは大推力とスリム化を両立したハイパワースリムエンジンである。

ハイパワー化は、ファン・圧縮機の効率化や世界最高水準であるTIT1800℃の高圧タービン等で達成した。
目標性能であるアフターバーナー(以下AB)非作動時で最大108kN(11t)以上、作動時で147kN(15t)以上を実現している。

スリム化は、F135やF119より全長や直径の短縮を果たした。
F-2に搭載されているF110に対してもじ推力レベルにおいて断面積で約3割のスリム化を実現した。

エンジン下部には、エンジン始動用のスタータと機体に電力を供給する発電機を統合したスタータ・ジェネレータを搭載した。世界最高レベルの180kwの発電能力を持つ。



諸元ーーーーーーーーーーーーーーーーー
形式:アフターバーナ付低バイパス比    ┃
    ターボファンエンジン        ┃
・最大直径:N/A            ┃
・空気取り入れ口直径:約1m                ┃
・全長:約4.8m                 ┃
・重量:N/A                 ┃
・圧縮機:ファン3枚・圧縮機6段             ┃
・燃焼器:アニュラ型            ┃
・タービン:1段低圧・1段高圧タービン       ┃
・推力:11t(108kN)ー15t(147kN)以上  ┃
・タービン入口温度:1800度以上      
・推力重量比:N/Aは          ┃
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



②ファン


・エンジン入口のコーンサイズの縮小(低ボス比化)
・最新の数値流体力学の適用
・全段ブリスク構造(ディスクと動翼を一体化)
・エンジン入口側のファン通路幅の拡大と、それによ
 る遠心圧縮効果
・上記技術による単位面積あたりの空気流量の向上
 (XF5-1比で12%向上)
・ポリトロピック効率の2.6 pt.の上昇






③圧縮機
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・3次元翼設計(前方スイープ翼形状)の適用
・動翼全段へのブリスク構造の適用
・ブリスク構造による、軸長の短縮と軽量化
・軸長の短縮に伴う高圧力化
(XF5-1と比べ軸長比にし、17%の圧力比の向上)
・ポリトロピック効率の2.6 pt.の向上







④燃焼器




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・旋回性の強い広角スワーラと、貫通度に優れる1次
 希釈空気を利用した、広角スワーラ燃焼方式の採用(燃焼安定性、燃焼器出口温度の均一化、出口温度の
 高温化による所要気量の削減 等に優れる)





・先進冷却ライナによる、高温化への対応
ー燃焼器壁面(ライナ部)への複数の冷却機構の適用
ーフィルム冷却、噴流冷却(インピンジメント冷却)、
 二重壁構造

・TiT1800℃の達成




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主燃焼器用燃料噴射弁

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燃料噴射弁への3Dプリンタの適用

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従来構造との比較

・主燃焼器用燃料噴射弁への3Dプリンタの採用による
 内部圧力損失の低減 








⑤高圧タービン
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・冷却空気量増加に伴う、空力損失増大の抑制
ー主流と冷却空気の混合による損失予測モデルを基に
 した、冷却孔位置などの調整
ーイタレーションによる翼部強度と冷却性能の両立


・冷却効率の向上による、冷却空気量の増加の抑制

ー翼面への遮熱コーティング
ー折返し型の内部構造によるメッシュ冷却  (動翼)
ー凹凸型の内部構造によるメッシュ冷却(静翼)
ー冷却孔形状の工夫によるフィルム冷却性能の向上
表面形状の工夫による冷却面積の増大と乱流化の
    促進


・第5世代Ni基単結晶合金の採用
ーレニウムやルテニウムの添加量増大による耐熱性
 の向上

・鍛造性と耐熱性を兼ね備えた、Ni-Co基の国産鍛造
 タービンディスクの採用

・タービンシュラウドへのCMCの適用による
 従来比1/3への軽量化及び冷却空気の低減
ーシュラウドへの耐環境性コーティングの適用

・TIT1800℃の実現




⑥低圧タービン
・反転タービンの採用による高負荷・単段化
・単段での高圧力比ファンの回転




⑦アフターバーナ
・保炎器の周方向の構造材排除による構造の
 単純化
・保炎器の半径方向のみの構造材による低圧力損失化



⑧排気ノズル
・CMCの適用による従来比1/3の軽量化



⑨コントロール・補機
・スタータと発電機を統合した、小型軽量で大容量な
 スタータ・ジェネレータの搭載
・180kWの発電能力





2018年7月からIHIの瑞穂工場で所内試験が開始され、7月9日には目標値であるAB非作動の最大推力11tを達成した。8月にはAB作動時で最大推力15tを達成した。

エンジン技術の蓄積により最大推力達成期間は、XF5-1と比べ70%、XF3(型式不明)と比べ90%の時間短縮を果たした。試験にあたっては特に大きなトラブルも無かったという。


今後は2020年3月までに地上性能試験、始動試験、高空性能試験、ステルス性能試験(電波・赤外線)、制御機能試験を予定している。

高空性能試験に関しては札幌試験場のATFを用いる。しかし、建設当時の予算の制約上から計測可能な推力限界が限られており、XF9-1の高空性能を完全には計測できない。
※P-1哨戒機に採用されたF7-10エンジンは札幌試験場のATFで基礎的な高空性能データを取得後、フルパワー時の高空性能試験は米国で行った。試験場所は米国のテネシー州に存在する、米空軍施設であるアーノルド・エンジニアリング・デベロップセンターである。

近年はATFの能力向上にも着手している。
2018年度の概算要求では、大型エンジン試験装置の整備として74億円が要求されたが、予算案では計上が見送られた。

2019年度予算では大型エンジン試験場新設(その1)として約1.4億円が執行された。
続く2020年度概算要求では大型エンジン試験場新設に0.24億円が要求されている。


XF9-1のいう推力目標値に関しては、搭載用エンジンの開発時の仕様に対応できる数値として設定されている。
また、XF9エンジンは将来推力を、AB非作動時13t・AB作動時20tと設定している。


«まとめ»
将来戦闘機の開発に向けて、国内開発エンジンが候補の1つとして資するためプロトタイプエンジンの試作を行った。
目標性能は達成し、2020年3月まで関連試験を行う。

今後の予定はXVN3-1などを用いて推力偏向試験などを行う。その先は将来戦闘機のスケジュールと内容次第である。

開発企業であるIHIは2019年5月時点で将来戦闘機用エンジンの国際共同開発を目指すとしている。この国際共同開発の詳細に関しては現時点で不明である。

余談ではあるが、XF9-1の設計に関わったIHIエンジニアの冨岡義弘は
「XF9-1は納期には間に合ったが、仕様策定や設計が遅れ、製造担当にしわ寄せが行ってしまった反省がある」と述懐している。




new!
【戦闘機用エンジンの適用可能性向上に関する研究】
38
2019〜2023年


«概要»
不明

«背景・目的»
不明

«詳細»

38
次期戦闘機関連事業の一覧

政策評価や行政事業レビューにも全く記載されておらず、研究内容は不明である。

関連性は不明だが、2020年度予算では、次期戦闘機の関連経費として「エンジンの研究」に24億円が充てられている。 2020年時点で40.4億円が計上された。



関連性は不明だが、令和2年度調達予定品目(中央調達分)(航空機調達官)では

・適応性向上に関するエンジン部品
・適応性向上に関する試験用支援器材
・適応性向上に関する構成品

の調達が記載されている。



こちらも関連が不明であるが、



これらを踏まえると、XF9-1を流用したアダプティブサイクルエンジンの研究の可能性がある。
あくまで筆者の推測であり、信頼性は保証しない。